迷惑開業医問題は医療費高騰が原因?

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医師の間で「迷惑開業医」という言葉が今出現しています。

自分独自の解釈に基づいてどう見ても必要と思われない検査を複数回定期的に行う開業医です。さらに検査をしてもしっぱなしで、検査内容の説明をしない(できないのではないか?との声もあり)周囲の開業医が非常に困った状況に追い込まれているのです。

知識がないのに検査漬けの開業医

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帝京大学臨床病理学 宮澤先生の資料

医療費に占める検査の割合は近年は年々減少しています。

なんで周囲の開業医が困るかというと、検査の説明をしなければなりませんし、明らかに診断名が間違っていたり、中には診断名も付けずに治療を続けていることもあります。

医師間の討論でも話題に

医師だけが参加できるサイトでも問題になっています。そこで話題になっているのは整形の開業医なのですが、初診時にレントゲンを二十枚も撮影するそうです。詳しい状況はわからないのですが、100パーセントビジネス、つまり売り上げを上げることに執心している様子です。医師間では他の医師の治療に悪口を言わないという不文律があります。果たしてそれが良いことなのか、悪いことなのかは別として明らかに患者さんに不利益な診療が行われている場合は、なにがしかのアドバイスを患者さんにほのめかさなければいけないと私は考えています。

また、自分の診断に自身の無い医師程、過剰な検査をする傾向があります。自分の診断を裏付けるためのデータ収集といった意味合いもあるでしょうし、診断がつかないから検査をしまくる、ということでもあります。通常のビジネスであればユーザーの口コミによって「あそこの医院は余計な検査をする」「他のクリニックより料金が高い」などのが広まり自然淘汰されると思われます。しかし、医療の場合こんな意見もあります

  • うちの親も通っているので、文句を言えずしかたなく通院している
  • 入院施設が整っているので万が一入院の場合、そこの病院が近くて便利
  • 一生懸命検査をしてくれて安心である
  • ほかに通院するところが無いので仕方がない
  • 前からかかっているので、いまさら他の医院に行って最初から説明するのは面倒

実は上記の患者さんの意見は当院に通院する患者さんの意見です。

東京都のホームページによるとかかりつけ医はこんな基準で選ばれています。

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https://www.metro.tokyo.lg.jp/index.html

文句を言っている開業医も他からみたら迷惑開業医

じゃぁ、間違った診断や余計な検査をしない為には専門医制度をもっと充実させて専門分野のみ診療すればいいではないか、という意見がでても当然と思われます。もちろん専門分野を得意として大病院に行かなくてもそれ同等または準じる医療ができればそれに越したことはありません。でも、もしあなたが消化器専門の先生に罹った時に風邪をひいていたら当然「風邪も見てもらえますか?」と尋ねたくなりますよね。開業医に患者さんはジェネラルな分野を診てもらいたいと思っているはずです。

大病院との違いとして

  • 待ち時間が短い
  • 自分のパーソナリティを理解してくれる
  • 生活背景を把握してくれる
  • 気さくに対応してくれる
  • 威張っていない
  • 大病院は担当医がころころ転勤になるが開業医は人事異動が無い

このような点で開業医を患者さんは選択してくれていると私は考えて当院を運営しています。

当院の場合ですと、前立腺肥大の治療のついでに腰痛の湿布を希望される、なんてことは日常茶飯事です。でも必ず「時間のあるときに整形の先生に見立てをしてもらってください」の一言を添えることは忘れてはいません。でも、実は湿布が無効の整形の疾患の場合もあります。そこで必要となってくることはレントゲンを撮るなどの無駄な検査はしない、専門性が高い薬は処方しないといった簡単な注意で専門医からの苦情は出ないと判断しています。いらん検査・処方・診断をしたらそれこそ当方が迷惑開業医になってしまいます。

専門医は開業医として必要か?

そこで問題になるのは「専門医バカ」です。当院は採血や注射は医師が直接行うようにしています。

大学病院から派遣されてきた医師に手伝ってもらった時になんとその医師は採血の注射ができなかったのです。「採血は看護婦の仕事であって、〇〇の専門医である私がやる必要はない」とのご意見でした。私はその場でお帰りいただきました。また、こんな医師もいました。血圧の測り方を知らなかったのです。医師になってすぐに医局に入って、自分の専門の分野の患者さんしか診察したことがなく、血圧を測る機会がなかったとのことでした。私は彼に言いました「先生、患者さんは先生は医師と認識して当院に来院します。医師は体のことは何でも知っていると思っています。わからない分野については得意とする施設を紹介しましょう。でも、今ここで痛がっている患者さんがいたら、そのまま放置することは医師として許されますか?血圧くらい測れなければ医師と患者さんは認めてくれませんよ。」と伝えると若い医師であったので素直に血圧の測り方を覚えてくれました。

当院の方針

私は専門性の無い分野の疾患の治療でも応急処置的な治療は行っていきます。また、自分で対応できない分野は協力してくれる医師が当院に勤務してもらうことで広い分野をカバーできる状態に現在のクリニックを持ってきています。先日患者さんにいわれてちょっと返事に困ったことがありました。

「先生の所って総合病院って考えればいいの?」

嬉しい反面、ちょっと違うんだけどなぁと思いつつも

「でも得意じゃない分野もあるよ」

と答えました。

開業医向けのこんなローンがあるくらいで、経営環境が厳しいのはわかりますが。

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これから開業を考えている先生、開業したての先生は患者さん集めに必死だと思います。なれない勤務医時代には考えもしなかった採算性の問題も抱えるでしょう。

でも、

  1. 先生が行っている検査は器械的に定期的に行う必要がありますか?
  2. その検査は患者さんの不利益になっていませんか?
  3. その様な状態になるまで先生が抱え込んでだいじょうぶですか?

この3つを投げかけたいと思います。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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