ワタナベ薫さんが受けた美容医療「幹細胞で皮膚を若返らせる」は疑問だらけ❗

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幹細胞で美肌治療・エイジングケアって言うけど、幹細胞の定義を知ってるの?と突っ込まずにはいられないくらい安易に使用されている幹細胞。幹細胞を使用したエイジングケア、と聞けばなんとなーく効果ありそう❗って飛びつく方も多いことでしょう。中には幹細胞をたっぷり含んだ美容液なんて化粧品類が出回っていますが、医師からすれば疑問だらけ。幹細胞で若返りにツッコミをいれていきます❗

幹細胞、幹細胞って言っている人は、幹細胞ってどんなものなのか知ってるの???

ネット界隈はいいかげんな知識、知ったかぶりで汚染されています。私は医師なので、幹細胞に関しては、こう大声で叫びたくなるような悲惨な状況です。

幹細胞(stem cell)とは自分と同じ細胞を自己複製させ、どんどん自分と同じ細胞を増殖させる能力をあるものであり、細胞の幹(木の幹と同じ、だから英語でstem)になりうる細胞のことです。

幹細胞の種類としてはES細胞とiPS細胞が知られています。例のSTAP細胞は却下。ES細胞は残念ながら一般の知名度が低いので実際に臨床応用されているiPS細胞を例として、実際に臨床応用されている例を挙げます。

画像

http://www.lifescience.mext.go.jp/files/pdf/n1514_05.pdf

●滲出型加齢黄斑変性の患者に、患者自身のiPS細胞由来の網膜色素上皮(RPE)細胞のシートを移植する手術
国立研究開発法人 科学技術振興機構

加齢性黄斑変性へのiPS細胞の利用は新聞報道等でご存知の方も多いかと思われます。現時点で治療が不可能と思われた病気に対して幹細胞を使用した治療が多数研究されていますが、実際に治療として行われているものはまだまだ限られたものだけなのです。

幹細胞を使って美肌治療なんて、プライオリティを考えたらまだまだ後回し❗

なんですけどねえ⋯幹細胞を使って美肌をキープしているとおっしゃる女性(ブロガー・作家・会社経営者)がいたんです。

ブロゴスでも
「iPS細胞」過剰な期待を煽る報道を“やめるべき”事情 「実用化」の研究は、まだ始まったばかり
と、2018年11月27日付けで文春オンラインの記事を転載しているくらいです。iPS細胞でさえ臨床応用は、まだまだ始まったばかりです。

期待されているパーキンソン病に対してのiPS細胞を使った研究は現時点では治験が始まったばかりです(日経メディカル 再生医療はここまで来た https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/201809/557592.htmlより)。

つまり幹細胞を使った治療はまだまだの段階であると解釈して間違いありません。

えええっ、幹細胞を使って美肌治療⁉

しかし、大いなる期待を抱かせるiPS細胞などの幹細胞を利用した臨床での治療はまだまだ研究途上であるはずなんです。

幹細胞の研究をしている時に、「これはかなり効果が期待できる❗」と判断して、実際に人に対して治療を行うこと、これは厚生労働省が承認していない治療であることの説明を十分に受けてから、治療するのかの判断をするべきです。

それでも難病と言われ、他の治療方法が無い場合に限られるものだと思っていたら、なんと

気軽に美容クリニックで幹細胞治療が受けられるっぽい表現のブログを見つけてしまいました❗

ワタナベ薫さん(美容を生業の一部にしていますので、プロとして判断)のブログをたまたま見かけて、そこで私はこんなツイートをしたわけです。

するとこんなリプをいただいたわけです。

別にリツイートしたわけじゃないのですけどね(笑)。

どう見てもワタナベ薫さんはエイジングケア目的で肌に幹細胞を注入した前提で、厚生労働省に「第二種再生医療等・治療に関する提供計画」を届出た医療機関の一覧表を添付したものと思われます。当院だってしっかり「再生医療等・治療に関する提供計画」を面倒な手続きを厚生労働省に提出しています。

この一覧表で幹細胞を使用した治療を行なっている医療機関は脂肪組織由来間葉系幹細胞を使った脳梗塞・関節・皮下欠損などの治療に関するもので

幹細胞を使用して美肌治療を行なっている医療機関は見当たりません❗

ワタナベ薫さんが「私が通っています」医院は第二種再生医療等・治療に関する提供計画を厚生労働省に提出していますが、幹細胞を使った治療は提出していません(もし幹細胞を使っていたらかなりマズイです)。

ご確認のほどよろしくお願い申し上げます」と言っているのでご確認いたしました(笑)。

ワタナベ薫さんが受けた美肌治療は幹細胞を使ったものでは無い❗

ワタナベ薫さんが幹細胞によって美肌治療を受けている主張するクリニックの第二種再生医療等・治療に関する提供計画の届出は「自家培養真皮線維芽細胞移植術」であり、これは幹細胞とは全く違います。

幹細胞や再生医療に対するこの程度の理解度で「美人になる方法」というブログを綴っていることに、驚きを隠すことができません。

ブログを読んでいくと、ほとんどが啓発セミナー的な内容であり、さらにご自身がプロデュースした商品の宣伝と思われるような記述で満載です。自己啓発しようが、グッズを売ろうがそれは経済活動の一環であり、私がとやかくいう筋合いはありません。

ワタナベ薫さんは多数のファンをゲットしているようなんで、医療に関する記述は出来るだけ正確にお書きいただきたいと存じます。

で、終わろうと思ったらワタナベ薫さん、例の水素水だか、水素水生成器だか、水素ガス生成器だかも推奨するとともに、ご自身で販売しているじゃないですか❗

素人さんが勉強もしないで医療関係のブログを書くとかなり怪しいことになります

ワタナベ薫さんの「美人になる方法」というタイトルのブログ(https://ameblo.jp/wjproducts1/)のプロフィールによると、ブログは月500万PVもあるそうなんで、プロブロガーさんとして扱わせていただきまね。

このブログの中でこんなものがありました。

奇跡の水の作り方 Protoの水素水で波動水を作ろうの巻」これ先日のヘンテコな水素水騒動の後に綺麗に削除され今では404エラーになってしまっています。かなり面白い内容だったの魚拓してあるんで、その内容をご紹介します。

美人になる方法「奇跡の水の作り方 Protoの水素水で波動水を作ろうの巻」の魚拓

もろ先日の水素水騒動で取り上げた水素水・水素ガス生成機を販売していた方が経営していた会社名がバッチリ記載されています。

先日の水素水がらみのブログはこれです。

水素水にまつわる不思議な話、「論文提示して❗」「業務休止しました」なんじゃこりゃ⁉追記あり

水素水にまつわる不思議な話、「論文提示して❗」「業務休止しました」なんじゃこりゃ⁉追記あり

さらにワタナベ薫さんはブログで水素水についてこんなことを書いています。

波動水の前に、言わずと知れた水素水についてまずは簡単に説明いたしますね。水素水は、認知症予防や、活性酸素除去(つまりエイジングケアや美容全般)抗アレルギー、ダイエットなど色々と言われています。芸能人の方も美と健康のためにかなり飲まれていますね。

さすが自称月間500万PVの有名ブロガー(私の周囲の人間はだーれも知らなかったけど)ですね。しっかりと、「と言われています」との表現をとっています。

さらにさらに「水素は分子量が小さいので、脳まで届きます。ですので、アルツハイマーや認知症の症状を緩和することが知られているのです」に続いて「たくさんの研究結果がありますので、水素水、と検索してみたら驚くほどの研究結果を知る事ができます」と語られています。

そこでワタナベ薫さんにプロトの社長と同じように私は

水素水がアルツハイマーや認知症の症状を緩和するとの論文をご提示ください❗と言いたくなってしまいます。

アルツハイマーや認知症、と書かれていますがアルツハイマーは認知症の分類の一つなんだけどなあ、なんて大人気ないことは言いませんから。

さらにワタナベ薫さんのトンデモ系の疑似科学の能書きが続きます。

波動とは何かと言いますと、振動のことです。私たちの体もすべての物質もミクロの世界では振動しています。波動水とは、ある情報を水に転写したお水の事。ですので情報水、みたいなものです。それは、健康になる、という情報だったり、免疫力UPというものだったり、自分の想念を何でも転写することができます。

この辺りで科学系に携わる方は以下の文章を読むことを止めるか、怒りながら読み進めるのか、だははあっ、と爆笑しながら読み進めるでしょう。

さらにさらにワタナベ薫さんがご自分でもこの水素生成器を販売していることブログに書かれていました

憧れのブログだけ書く生活~夢が叶うパワフルメソッド

これ下の方に水素生成器をご自分で販売していることが書かれていましたが、なぜか今は下の方の危なっかしい部分が綺麗に削除されています。

削除される前の全文はブログの魚拓をご覧ください。https://archive.is/axmlK#selection-825.0-827.26です。

今は削除されちゃってるけど、下の方にこんなのがあるんだよなあ⋯。

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「当社でも扱わせていただいている」ってことはワタナベ薫さんが水素整水器を販売していたのです

ねっ、例の水素水整水器(なんかいろんな名称があるなあ)の販売のお手伝いをしているでしょ、これってアフィリエイトで、ついついこんな疑似科学・ニセ医学満載のブログを書いてしまったんでしょうねえ、と思ったらなんと水素水をしっかり直販してんじゃん❗<ワタナベ薫さん、自己啓発セミナーを頭から否定はしません。しかし、医療系に関する話題はお控えになった方がよろしいかと存じます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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