なぜ子供への甲状腺エコー検査が批判されるのか?その理由はコレ❗

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先日からこのポスターというかチラシが医療関係者の間で話題になっている、というかタコ殴り状態になっています。これねっ❗

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http://www.u-gakugei.ac.jp/pickup-news/upload/181216_kensa.pdf

東京学芸大学における子供甲状腺エコー検査の問題点

2000円で甲状腺の検査ができるからイイじゃん❗ってのも間違いですし、東京学芸大学って医学部無いから、甲状腺の検査しちゃダメ⁉ってのは間違いです。

医療において必要のない検査や治療をする大問題をこの子供甲状腺エコー検査は抱え込んでいるんです。

子供に対するエコーによる甲状腺検査は過剰診断・過剰治療という問題を発生させます

だからこそ医療関係者の多くがこの「3・11後の健康を考える学生・子ども甲状腺エコー検査@東京学芸大学」を批判しているのです。

甲状腺がん検診って意味が無いの??

がん検診はがんを早期発見して、早期治療することによって皆さんの健康を守る上で重要なものであるのは常識。しかし、どんな臓器であってもがん検診を実施すればがんの早期発見・早期治療に繋がり結果的に生存率が高まる、ってことにはならないのです。

要するにがん検診はメリットとデメリットをよーく考えて実施しないとダメ❗なのです。そもそもがん検診は早くがんを発見して、早く治療をすることによって生存率を高めることが目的。例えば前立腺がんを確定診断するためには前立腺特異抗原と呼ばれる血液検査のPSA検査の異常を知るだけではダメで、前立腺針生検と呼ばれる検査方法を行う必要があります。前立腺に針をさして、怪しげな部分を採取してそれを顕微鏡で覗くことによって、初めて前立腺がんか前立腺がんでは無いかを確定します。それなりの身体への負担のある検査ですから、前立腺がん検診として全員に行うことはメリットよりデメリットが上回ってしまいます。

現時点でがん検診のメリットがデメリットを上回ると判断されているのは胃がん・子宮頸がん・乳がん・肺がん・大腸がんの5つのがんのみです。残念ながら泌尿器科学会が強く訴えている前立腺がんに対するPSA検査は生存率を高めるために有効では無い、って判断されています。

症状の無い子供に甲状腺がん検診としてエコー検査は全く意味がありません❗

意味が無いだけではなく今回のヘンテコな企画は過剰検査・過剰治療の温床となりかねないのです。じゃあ、なんで「3・11後の健康を考える学生・子ども甲状腺エコー検査@東京学芸大学」って無用な検査を東京学芸大学教育実践研究支援センターは主催して、小金井市放射能測定器運営連絡協議会/子どもと未来を守る小金井会議は協力して、小金井市/小金井市教育委員会は後援しているのでしょうか?多分、ワケ知り顔のポンコツ医療関係者か、メディアに溢れかえる被曝を必要以上に恐る団体がいるんじゃあないかなあ⋯。

福島で行われている子供に対するエコー検査も過剰診断・過剰治療の可能性が高いです

以前、神経芽腫という一種のがんに対して赤ちゃんを対象に神経芽細胞腫のマススクリーニング検査という尿検査をしていたことを記憶している方も多いのでは?この小児がんに対する検診は現在では行われていません。

小児がんに対する尿といったリスクがない検査方法が中断されている理由として検診によって死亡率を減少させることが明らかになっていないことと必要のない治療が含まれ、治療することによる合併症のリスクが当然出てくるが判明しているからです(詳細については厚生労働省「神経芽細胞腫マススクリーニング検査のあり方に関する検討会報告書」等をご覧ください)。

でもさあ、福島における子供を対象としたエコー検査で甲状腺がんが多数発見されてるじゃん、とのご意見もあるとは思いますが⋯福島の検査に対しても多くの医療関係者は反対の声をあげているんです。

本当に福島では子供の甲状腺がんが増えているのでしょうか?

以前、こんなブログを書きました。

福島で子供の甲状腺がんが急増している、との記事への素朴な疑問 追記あり

福島で子供の甲状腺がんが急増している、との記事への素朴な疑問 追記あり

メディアに登場することが多く影響力のある医師鎌田實さんの署名記事に対する私の考えを述べています。元々の発症率が明確ではない子供の甲状腺がんに対して、原発事故後にエコーによる検診が行われ、複数の子供が甲状腺がんと診断されているだけで原発事故によって子供の甲状腺がんが急増しているは間違いでは?と問題提起したのです。その後もこの検査は継続されていますが過剰診断・過剰治療が含まれていることは否定できていません

原発事故後の甲状腺検査に対して福島県はこのように中間報告をしています。

これまでに発見された甲状腺がんについては、被ばく線量がチェルノブイリ事故と比べて総じて小さい※2こと、被ばくからがん発見までの期間が概ね1年から4年と短いこと、事故当時 5 歳以からの発見はないこと、地域別の発見率に大きな差がない※3ことから、総合的に判断して、放射線の影響とは考えにくいと評価する。

県民健康調査における中間取りまとめ」

これだけでは過剰診断・過剰治療の不利益が伝わりにくいかもしれません。私はアエラの医療関連記事をdisることが多いのですが、この記事中の日本医科大大学院の杉谷巌教授の

亡くなった人の10人に1人から甲状腺がんが見つかる。甲状腺がんで多い乳頭がんは10年生存率が99%のうえ、高リスクに変わるものでもない

が一番一般の方にとって重要な意見ではないかと強く頷いています。(https://dot.asahi.com/wa/2016101200264.html?page=2より)。

つまりエコーを使った子供に対する甲状腺検査は過剰診断・過剰治療の温床になるのですだから多くのまともな医療関係者は今回の「3・11後の健康を考える学生・子ども甲状腺エコー検査@東京学芸大学」に対して強く反対しているのです。

気になる小金井市放射能測定器運営連絡協議会とか子どもと未来を守る小金井会議ってどんな団体なのかについての詳細は私の守備範囲外なので、みなさまご自身でご確認くださいませ。私はゆったりとした週末を過ごしたいと思っていますので⋯。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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