酵素は、生命を持っていません。
生体で起こる化学反応に対して触媒として機能する分子です。
酵素が生きている・活きているといったイメージ先行のキャッチフレーズが蔓延しています。酵素を微生物ではなく、ただの物質なんです。
本記事の内容
酵素は生き物じゃないから、酵素ドリンクが生きているは間違いだよ❗
先日、酵素ドリンクに含まれている酵素が死んでいるから飲んでも効果なし❗って話がバラエティ番組で取り上げられて、それなりに話題になった模様は前回お伝えしました。
Englishをしっかりそもそも酵素は生き物じゃないので、死んでいる酵素、生きている酵素との表現は医学的・科学的に間違いであることは明白。しかーし、バラエティ番組を観てトンデモないことを言い出しているダイエットを指導するピラティスインストラクターさんがいます。そのかたがおっしゃるのは私の愛用酵素ドリンクは生きてる!だそうです(苦笑)。
となると我々が学んできた科学・医学がひっくり返るような大発見ってことになるはずなのですが、このピラティスインストラクターさんのブログを読んでいくと、多分、今まで生化学はもちろんのこと科学・医学を問わず全く知識が無いように感じてしまいざるおえません。
医療関係者だけではなく多くの科学者を仰天させたピラティスインストラクターさんの衝撃的なブログがこれ。
まがまがしいタイトルはどうも前回ブログにした「林先生が驚く初耳学!」の画像だと思われます。
番組の内容はあったりまえじゃん、それ以前に酵素が生きている、死んでいるも、どうでもいいこと、だって酵素は生き物じゃないんだもん。
そんな常識を覆す発言をされているのが、このピラティスインストラクターさんってことになります。さらにこの方が積極的に推奨しているサプリの販売方法がどうもいわゆるマルチっぽいので、ちょっくら俎上に載せてみますね。
アフィリエイトで酵素ドリンクを扱っているにしては、何だか様子が変なブログになっています
普通ステマっぽいとかアフィリエイト目的の記事の場合、商品名をクリックするとその商品の購入サイトに誘導されると思うのですが、この「私の愛用酵素ドリンクはきている!」と科学界・医学界を驚愕させたことをおっしゃるピラティスインストラクターさんのブログのご愛用されている酵素ドリンクをいくらクリックしても、全然どっこにも飛びません。
なんか変だなあ〜と思いつつ画像中にあるドイツの栄養ドリンクに関して調べてみると「PM-International」という会社が取り扱っていることがわかりました。
ねっ、このピラティスインストラクターさんが愛用している生きている酵素ドリンクと同じ商品ですよね。これを販売している会社に関してちょいと検索してみると⋯ウィキにはこんなことが書かれていました。
PMインターナショナルは、マルチ商法により、栄養サプリメント、体重管理サプリメント、アリアンツによる保険、スポーツ用栄養食品、およびパーソナルケア製品を製造・販売する、多国籍企業。
ってことはこの生きている酵素ドリンクはマルチ商法に使われる商材なんですね。
ここできっぱりとお断りをしておきます。私は一介の町医者であり法の専門家でも無いですし、国民生活センター所属医師でもありません(そんな職種は無いだろうけど)ので、生きている酵素ドリンクがマルチという特殊な販売方法で売られていることについて、何らかの意見を述べることは自粛しますし、その資格も無いとご判断ください(汗)。
このピラティスインストラクターさんが愛用している生きている酵素ドリンクを彼女がご自分のブログでアフィリエイトで扱わないのも、この生きている酵素ドリンクの販売サイトにも誘導されない構造になっているのは、その辺りに原因があるようですね(ちょっと棒)。なんせマルチ商法に関しては全然知識が無い私なんで間違っていたらごめんなさい。
この酵素ドリンクが生きていることを証明するデータはどうやっても見つかれません(当たり前だけど)
ベーシックスという名前のドリンクの原料(粉状かな?)の商品説明として32種類の食物性酵素と9種類の植物繊維、そして生きた乳酸菌が含まれているようです、常にベストな状態でね。成分としてラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・ロイテリなどが書かれています、これは微生物であり生き物です。ピラティスインストラクターさんはあくまで私の妄想領域で頭に浮かんだのは、医学も科学はもちろんのこと生化学なんて全くお勉強していなかったために、これらの微生物が含まれた酵素ドリンクを愛用しているために「私の愛用している酵素ドリンクは生きています!」って書いちゃったのでしょう、それじゃあしかたないよね、うんうん(大人の態度が取れるように私は成長しております)。
こんな慌てん坊でお茶目なピラティスインストラクターさんの他のブログを読んでみると
おいおい、そんな風に医学や科学を理解していたのかい?
と優しい言葉を掛けずにはいられないようなブログ記事が多数ありました。ここまでオッサン医師の手を煩わすとは、なんて可愛げのあるピラティスインストラクターさんではないですか、じゃあ、オッサンがあなたのブログのトンデモなところを無料で添削してあげますね(スッゲー大人の対応、自分の成長ぶりに目を細めちまったぜ❗)。
酵素でポカポカ、酵素で血中酸素濃度を上げる???間違いを優しく指摘しておきます
ごくごく稀に学生さんや若手医師に講義とか講演とかで接すると、「あれっ、こんなことも知らないの?」なんて態度はまず取らないと言われている(n=1) 私です。
ピラティスインストラクターさん、どこが間違っているかを教えてあげますね
まずは
酵素は微生物じゃないの、タンパク質からなる生命を持たない物質なんだよ
その酵素の効果なくなることを失活と呼ぶし、効果がある場合は活性がある、って表現をします。
だからまるで生き物が生きている・死んでいるとごっちゃになっちゃうのね、高校の生物の教科書を読み直した方があなたの今後のピラティスインストラクターとしての仕事の範囲も広がるんじゃないかなあ、ぜひチャート式生物でも図説生物でもAmazonで購入することをアドバイスさせてもらいますね。痛みをとり姿勢を整えるコース一回分でそれらの参考書は買えるから心配はいらないよ。
もう一つ気になっているのが
酵素を飲むと体がポカポカしていくるってこと。
これはよく悪い奴が素人さんに怪しげなサプリを飲ませた時に使う常套文句なんだよ。
ピラティスインストラクターさんはみんなでセドナに行こう❗って企画がブログに書かれていたけど、セドナに行くとスピッたガイドさんが親切にパワースポットに案内してくれて、両手を広げさせ、そのてを近づかせる時に「手のひらにパワーを秘めたボールが感じられますよね、そのうち体中がポカポカしてきます」って毎日数回神秘体験を求める観光客に毎日毎日繰り返して使っているフレーズなんだよ。
さらに
酵素を飲んで血中の酸素濃度を上げよう❗ってことも語っているようだけど、血中酸素濃度の意味を高校の教科書でしっかり学んだかなあ。
そうだよねえ、高校生にいきなり「血中酸素濃度」なんて難しい言葉を理解しろ、って方が無理、今後文科省にそんな難しい内容を教科書に入れ込むな❗ってオッサン医師が文科省のお友達に伝えておくね。でも、ピラティスインストラクターさんももう少し不思議だなあ、と感じたことはなるべく自分で調べた方が絶対に今のお仕事にプラスになると思うんだよ。
血中酸素を7-10分で上げてくれるような酵素って果たしてなんだろう?って考えることが大切。
その酵素の酵素番号を述べよ、なんてことを言うおっかないオッサンも世の中にはいるらしいからくれぐれも気をつけてね、世間には悪い人がいっぱいいるからね。
さらにこの方のブログには非科学的なニセ医学が山ほど含まれています。優しく間違いを指摘するのはこの辺りでやめておきますね。
なんでドイツ、ドイツと強調するかと言うと、マルチやってるのドイツの会社じゃん❗
今から数十年前は医療分野でもドイツ製品やドイツの製薬会社が開発した薬をありがたがっていた時代があります。このピラティスインストラクターさんのブログでは「ドイツの細胞活性サプリ&化粧品」がやたらとテーマになっています。
なんでかな〜と思ってこの「ドイツの細胞活性サプリ&化粧品」「ドイツ酵素」がテーマとなっているブログを見ると、先ほどちょっとユニークというか、日本では間違いなくほとんどの人が危なっかしい販売方法と考える、私が言ったわけじゃなくて、ウィキに書かれている、栄養サプリメント、体重管理サプリメントをマルチ商法で販売している前述のドイツの会社の商品の記事になっています。
本場ニューヨークでピラティスを学び、日本の地方都市でキラキラ企業女子を目指したこの方が「私の愛用酵素ドリンクは生きてる!」なんて科学を根底から覆すようなことを言わないでご商売が繁盛することを願ってやみません。
あと付け加えておくと、私が調べた範囲ではピラティスってJoseph Pilatesというドイツ人が唱えた健康法で腰痛を治すことを目的としているようです。
さらにオーストラリアでは政府が民間療法を調べた時にピラティスに関してはなんの利益もないと判断しています(「Review of the Australian Government Rebate on Natural Therapies for Private Health Insurance」Science-Based Medicine. 19 November 2015などによる)。
効果のない体操を教え、効果があり得るはずのない生きている酵素ドリンクを愛用しているいピラティスインストラクター兼スタジオオーナーのこの方のブログを読んでいたら、だんだんと悲しい気持ちになってきてしまいました。
マルチ商法って一般的にはこのように解釈されています。
ご注意くださいませ。