酵素を摂取するのはなんとなくカラダに良いことだと思っていませんか??スムージーのブームや酵素ダイエットで「酵素」がおかしな意味で広まってしまいましたので、ここできちんと整理しておきましょう。例えば酵素ドリンク。ドリンク中の酵素が死んでいたら意味がないのではなく、生きていても意味がないのです。えっ?と思われ方はぜひご覧ください。
サプリの酵素が生きていても、死んでいても、どっちも効果ないんですけど⋯
11月18日に放送された「林先生が驚く初耳学!」で市販の酵素ドリンクに含まれている酵素が実は死んでいた❗ってことが話題になっているっぽいですが・・
酵素ドリンクの酵素が生きていたとしても、みなさんが期待する効果は無い❗
ってことをお伝えいたします。
私はこの番組は観ていなかったので、上記のWWDの記事を頼りにして見ると市販されている酵素ドリンクに含まれていると言われている酵素は食品衛生法で65度以上に加熱することが義務つけられているために、酵素の性質上その熱を加えられると死んでしまう(活性化していない失活状態ってことだと解釈)ので、酵素に期待された効果が発揮できない状態である❗ってことを単純な実験で確認したようです。
酵素ドリンク(酵素を含んだサプリメント全体も同じはず)に含まれている酵素が死んじゃっているなら効果が無いじゃん❗→酵素ドリンクは効果なし、意味なし❗ってことで物議をかもしているらしいのですが、でもさあ❗酵素ドリンクや酵素サプリの酵素が生きていたとしても無意味なんだよ❗ってことをここでしっかりとお伝えしておきますね。
私が初めてブログが原因で抗議の電話等で診察もままならない状態に追い込まれたのが、かれこれ4年以上前の酵素ジュースだか、酵素ダイエットだか、酵素スムージーだかについて全く効果ないよ、ってのを書いた時でした。それ以来、酵素関連はビビりながらブログでちょこちょこネタにしてはいました。
他にもなぜ多くの人が「酵素栄養学」に惑わされるのか、やっと理解できました❗ニセ医学に騙される純真な方へ。とか酵素ダイエットで瘦せる!ワケが無いことがどうしても理解できない方へ❗とか酵素療法って医学的には否定されていますが、信者が多いのは医療サイドの問題かもです、ニセ医学だけど。etc
ご興味のある方は院長ブログの酵素の記事一覧をご覧ください。
注意:今回のブログで酵素の活性について「生きている」「死んでいる」という表現を使用しています。酵素は生き物ではないので、この表現は科学的・医学的に正しくありません。しかし、世に出回っている酵素関連グッズは「生きている」「活きている」等の表現を使用しているものが多く目につきますのでこのような表現を使用しております。
酵素栄養学が酵素サプリや酵素ドリンクの元ネタ
多くの人は「酵素って体にいいのよねっ〜❗」って考えていると思います。確かに高峰譲吉氏が明治時代に発見した「タカジアスターゼ」は酵素であり、胃腸の消化を助ける働きがあります(高峰博士は第一三共製薬の基となった三共の創業者)。このタカジアスターゼという酵素の発見は画期的なものであったのは間違いのないものでノーベル賞を獲得してもおかしくない大発見だとの評価もあります。残念ながら当時の日本の評価が低かったためか、残念ながらノーベル賞受賞には至りませんでした。
この酵素大国、酵素先進国である日本の現状を見たら、高峰博士はさぞや悲しむだろうと思われます。この酵素の体内における働きは「触媒」なんです。触媒の定義は「それ自体は変化しないで、他の様々な物質が変化する速度に影響する」が一般的な解釈です。つまり、酵素の使用前使用後において、酵素自体は全く変化しないのが酵素が触媒であるがゆえんです。
酵素自体はタンパク質で作られているので、加熱したら酵素は死んで当たり前❗
今回、「林先生が驚く初耳学!」では市販されている酵素ドリンクは加熱処理されているので、死んでいる、だから酵素に期待される効果は無いので、いくら飲んでも無意味❗との結論になったようです。
酵素ドリンクも酵素サプリも加熱処理されているので、効果が期待できないということは間違いではありませんけど、一部間違いです(?)。だって、酵素を体外から食品として摂り入れても、体内の酵素のまんま入るわけないじゃん❗だからなんです。
これと同じ間違いを多くの人がコラーゲンサプリとかコラーゲンドリンクとかでおかしています。飲んだり食べたりした物質がそのまま必要としている臓器に入り込むとしたら、かなりヤバイ状況に人体は追い込まれてしまいます。
この酵素神話の理論的背景になっているのが「酵素栄養学」という非科学的なニセ医学です。
酵素栄養学はなぜニセ医学なのか?
私も含め、医師はどちらかというと栄養学に関して詳しい知見を持ち合わせていない人が大多数だと思われます。栄養学方面に疎い医師向けの酵素系の勉強会というかセミナーもあるのですが、それらを主催している医師や管理栄養士さんのほとんどはかなり怪しげな人々。そして科学的じゃない限りなくニセ医学に近い酵素がらみの栄養学をひとまとめにしたのが酵素栄養学だと思われます。
私が酵素栄養学の怪しさを確信したのが「長生きの決め手は「酵素」にあった」という本です(一般書籍であり、医師向けの専門著書ではありません)。これをお書きになったのが鶴見隆史医師であり、多分酵素栄養学方面ではビッグショット的存在だと思われます。
さらに一般書籍としては「酵素健康法」(森田義雄・伊藤修 21世紀ブックス)や「酵素を摂れば、元気な身体がよみがえる」(ノーマン・ウォーカー著 船瀬俊介・酒井美保子監修)などなど多数あります(それこそ私は山ほど酵素関連の一般向けの本を持っていますが、先日本棚の足の足の部分の床が抜けたため、本の整理を家人に厳命されています)。
これらの本では人体の備わっている酵素はもともと一定量であり、加齢とともにその酵素が減少するから酵素ドリンクや酵素サプリや酵素を多く含む食材を積極的に食べて、健康を維持するだけじゃなくて病気も治しちゃおう❗って話を導き出しています。酵素栄養学方面では酵素を消化酵素・代謝酵素・食物酵素という独自の分類をしています。このうちで一番怪しげであり、「林先生が驚く初耳学!」で取り上げた酵素ドリンクも食物酵素に含まれていると判断して間違いなさそうです。
酵素の分類は果たして科学的なものなのか?
酵素栄養学で酵素を3つの種類に分けています。「酵素の分類と命名法」(http://www.jasnet.or.jp/4-shuppanbutu/pickup/17.10.pdf)という論文ではこんな分類はぜーんぜん出てこないんだけどなあ⋯。手元にある「理解しやすい生物1・Ⅱ」という高校生向けの参考書にも一切記載なし。
実は酵素って世界的にナンバーが振り分けられています。Enzyme Commission number(酵素番号)は略してECとかEC番号とか呼ばれています。これらの分類方法は酸化還元酵素・転移酵素・加水分解酵素・除去付加酵素・異性化酵素・合成酵素など命名されていて、国際生化学分子生物学連合(International Union of Biochemistry and Molecular Biology)という世界的な組織が決めているんです。酵素栄養学を信奉している方々、あなた方が加齢とともに不足するので食品から積極的に取り入れるべきとしている酵素のそれぞれの酵素番号をぜひ著作物に書き加えてくださいませ。
万が一、酵素栄養学方面の方の主張のように体内に備わっている酵素は有限であり、加齢とともに減ってしまうので積極的に食品やサプリやドリンクで取り入れるべき、との主張が正しいとしても⋯酵素ってタンパク質であり、体内に入るとアミノ酸になっちゃう、つまり食品として経口摂取したら、たっぷり酵素を含んだドリンクでもサプリでも食材でもその酵素ってバラバラになってしまい意味ないじゃん❗
インスタ界隈がニセ医学の草刈り場と化しているとの噂なんで、時間があったらインスタで酵素がどうなっているのか余計なおせわでしょうけど調査してみる予定です。
追記:インスタを見るまでもなく、トンデモないことが書かれたピラティスインストラクターさんのブログを発見しました。
インスタ界隈はもっとスッゲーことになっている可能性があり、見にいくのちょっと躊躇しています。