定説化した「一日コーヒー3杯は健康に良い」から考える一般書籍・ネット情報の危うさはこれだよ❗

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コーヒーを飲むことが色々な病気になるリスクを下げて、結果的に寿命を延ばすとか死亡率を下げる可能性がいつの間にか定説になりつつあります。

コーヒーは寿命を延ばす、が定説というか常識になっているけど⋯

そんなコーヒーって健康に良いのよねえ〜を定説にしたのが私が知る限りでは世界で最も権威ある総合医学雑誌との評判があるBritish Medical Journal(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル、略してbmj) に掲載された「Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes」(BMJ 2017;359:j5024)だと思います。

多くの医師もこの論文を読んでコーヒーは健康に良い飲み物である、との感想を持ったはずです

しかし、このコーヒー健康に良いことを証明(?)した論文に関する世界中の医師の中には懐疑的な感想をもつものも少なくないですし、コーヒーを愛飲するべきではない人もいることに気が付いていない医療関係者も見受けられます。このコーヒー3杯飲むと病気の予防になるとの定説がBMJに掲載される前にこんなブログを書いてしまった私はちょっぴり反省しています。

日本人はコーヒー1日3〜4杯で死亡リスクが24パーセントも低下する❗

日本人はコーヒー1日3〜4杯で死亡リスクが24パーセントも低下する❗

コーヒーを毎日3杯飲むことが多くの病気の予防になることは統計学・疫学では相関関係が明確になっていることに対しての反論はかなり難しくなっている現状を把握しつつ、こんな人は

コーヒーを愛飲することはひょっとして不利益になる可能性もあることをお伝えします

巷に溢れる健康法の多くが医学論文の良いとこどりによって構成されている可能性もありますのでご注意ください。

反論が難しいアンブレラ・レビューで証明されたコーヒーは健康に良い飲み物説

週刊誌や誰が書いたか不明のネットの健康関連記事の多くで1日3杯のコーヒーを飲むことは健康に良い、との情報が溢れかえっています。

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これはロイターの2017年11月24日の記事。海外の大手通信社ロイターが掲載した記事は世界中に配信され、これをネタにして多くのメディアが後追い記事を書くことが多いです(中にはロイターの記事をまんま掲載するメディアもあるけどね)。

ここにも「コーヒーを1日3─4杯飲む人は飲まない人に比べて早死や心臓病のリスクが少ないとするリサーチ結果を、英大学の研究者が22日発表した」とかかれています。この英大学の研究者というのが前掲の論文を書いたRobin Poole氏たちのことです。この論文はアンブレラ・レビューというあまり馴染みのない検証方法によってコーヒーが健康に良い、との結果を導いています。

彼らの使ったアンブレラ・レビューは世界中の研究論文を集めて解析したメタアナリシスやシステマティック・レビューをさらに分析したもの(らしい⋯これ自信ないなあ)で信頼度はメチャクチャ高いものと考えられています。コーヒーが病気の予防になって、多くのがん発症のリスクを軽減することをこの英国の研究者は論文にして、この結果が

世界中の医師に「コーヒーって病気の予防にやっぱりなるんだ」との考えを植えつけました

この論文でわかったことは

●コーヒーを一日3杯飲むと、全死亡率を17パーセント低下させる

●コーヒーを一日3杯飲むと、心血管系の死亡リスクを19パーセント低下させる

●コーヒーを飲むと前立腺がん・子宮体がん・肝臓がんになりにくくなる

などなど、とにかくコーヒーはがんを含めて病気の予防にもなるし、死亡率が低下するんだから結局のところ長生きの秘訣になりうると医師だけではなく、一般の方の知ることになったわけです。

でもこの一文を見逃していませんか?

Women at increased risk of fracture should possibly be excluded.

骨折のリスクがある女性はコーヒーを飲むことは推奨されていないのです。

さらに低体重児を出産する確率が増え、早産や流産もリスクも上昇するのです。健康情報関連記事ってやっぱり深く読み込む必要があるんじゃないでしょうか?といっても、こんな難しい英語の医学論文を素人さんが全部読んで理解するのは時間もないし、めんど臭いと思います。

だからこそ、医学健康情報を発信する側は慎重にならなければいけないの❗

コーヒー3杯は健康に良い、に対する疑問

世界中の研究論文を分析して「コーヒーを一日3杯飲むのは病気の予防にもなるし、死亡率も下がる」との話を読んで素朴な疑問を抱きませんでしたか?今回の論文に使用された各医学論文で対象となった人々が飲んでいたコーヒーって同じ種類のものだったのでしょうか?

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UCC コーヒー用語辞典

これだけコーヒーは豆の種類もあり、抽出の方法も多数です。

採用された研究論文の対象となった世界中の人が同一のコーヒー豆を同じ抽出方法で飲んでいたなんてことは、まず間違いなくありえないと思うんです。

そう言えばこんな記事がありました。

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ここにはこんなことが書かれています。

An editorial by Eliseo Guallar from the Johns Hopkins Bloomberg School of Public Health in Baltimore, Md., says there is no way to know if coffee prevents chronic disease and reduces mortality because there are too many factors to weigh like why people start drinking coffee and what kind of coffee drinks they’re drinking.

さらにJohns Hopkins Bloomberg School of Public HealthのEliseo Guallar医師は述べています。

医師は病気を予防するためにコーヒーを患者さんに推奨するべきではない❗

原文はGuallar says doctors should not recommend drinking coffee to prevent disease and people should not start drinking coffee to improve health.

長生きしたけりゃ○○しなさい❗健康になりたければ○○しなさい❗的な健康関連一般書籍が驚くほど大量に書店に並んでいます

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つい最近の丸善日本橋店の健康関連本コーナーにあった一般書籍の数々。この中でまともというか信頼度が高いと思われるのたたった数冊。健康情報をテレビや一般書籍、そしてネットの誰が書いたか不明な記事に頼るのはそれなりのリスクがあることを知ってくださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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