都営バスの運転手さん全員にMRI検査⁉それで何が予防できるの??お金の無駄遣いでは??

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私の生活圏ではあまり見かけない都営バス、いわゆる都バス関連で衝撃的な内容が報道されました。

都バスの運転手全員に脳のMRI検査を行うとの報道は本当⁉

都営バスの運転手さんの事故予防対策のひとつである健康管理でなぜか全員にMRI検査とのこと。

MRIで睡眠時無呼吸症候群の診断はできません

NHK 「都営バスの全運転手に脳のMRI検査義務づけ 東京都」

多くの乗客を乗せた都営バスで万が一事故が起きたら大惨事、それゆえに事故を未然に防ぐための全員MRI検査実施、らしいのですが⋯

MRIをつかった検査だからといって運転中に意識を失う事態を防げることが可能なのか?、甚だ疑問が残ります。なかには若気の至りで入れちまったタトゥーが原因でMRI検査が受けられなくて、気まずいことが発生する可能性もあります。

タトゥー(刺青)が入っているとMRI検査を受けられない、という話は本当かな?

タトゥー(刺青)が入っているとMRI検査を受けられない、という話は本当かな?

病気の診断方法や診断機器の進化は目を見張るモノがあります。しかし、いまでもどんながんでも採血で診断できるわけじゃないし、CTやMRIだからといって体の異常が全て見つけられるワケでもありません。都に対してこのヘンテコなアドバイスを誰が指摘したのか、この都営バス運転手さん全員MRI検査のどこがヘンなのかを解説していきますね。

MRIで睡眠時無呼吸症候群が診断できるわけじゃないしねえ⋯

NHKの報道によると今回都営バスが運転手さん全員にMRI検査をするのはこんな理由があるからだそうです。

バスの運転手が病気や体調不良などで運転中に意識を失うケースが全国各地で相次ぐ中、東京都は都営バスのすべての運転手を対象にMRIを使った脳の検査を義務づけることになりました。

となるとこの都の考えが正しいことである前提として意識を失う症状や病気はMRI検査によって診断できることが医学的に証明されている必要があります。私達医師が脳のMRI検査を使用するのは脳出血や脳梗塞や脳腫瘍を発見目的がほとんどでです。

都営バスの考え方としてはこの脳出血・脳梗塞・脳腫瘍が運転中に意識を失い原因で大きな割合を占めることが証明されていれば画期的な事故予防策になるのですけど⋯一般の方が病気の事を知る上で信頼度が高いメルクマニュアル家庭版によれば失神の原因としては

画像

があげられていて、MRIが決定的な役割を果たすことはあまり期待できません。

メルクマニュアルは失神の原因として多いわけじゃないけど、起きたらそれはそれは重篤な病気として

失神が症状として現れる病気として心臓弁の病気や肺塞栓症や心臓発作を挙げています

こりゃまた、MRI検査はあまり重要じゃないようです。

実は一般の方が運転手さんが仕事中に意識を失って大きな事故になったことで初めて知った病気として睡眠時無呼吸症候群(SAS)があるんじゃないでしょうか?私の記憶に残っている一番古い睡眠時無呼吸症候群による事故は2002年8月3日に山陽本線で運転士が居眠りして約500メートル逆走した事故です。新しいところでは

朝日新聞 東北新幹線運転士が居眠り 車掌が非常ブレーキ

これらの居眠りの全てが全て睡眠時無呼吸症候群が原因となっているかの詳細は不明なものがありますので断言は控えたいのですが⋯。

こんな論文もあります⋯「鉄道機関における睡眠時無呼吸症候群対策 (http://www.iatss.or.jp/common/pdf/publication/iatss-review/35-1-04.pdf) 」、交通機関の運転手に求められている健康検査はまずは無呼吸症候群なんじゃないかなあ⋯。

睡眠時無呼吸症候群はやっぱり事故の原因となっているっぽいぞ

身近にもまず間違いなく睡眠時無呼吸症候群で悩んでいる人がいると思います。私の専門である泌尿器科を夜間頻尿を主訴として来院する方の何割かは泌尿器科的な疾患以前に睡眠時無呼吸症候群になっている方がいます。

千葉大学病院呼吸器内科の「睡眠時無呼吸症候群」のページによると睡眠時無呼吸症候群の主な症状は以下のとおりです。

日中の眠気のため、思うように日常生活が送れなくなり、何かに集中することができなくなります。また仕事中に居眠りをしたり

続きまして、もろズバリのことが書かれています。

特に危険なのは自動車の運転などの場合です。睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、運転中に高率に眠くなり、交通事故を起こす危険性が著しく高くなります。

都営バスは就業中の気を失う状態を事前に把握するために脳のMRIを運転手さん全員に行う予定らしいですが運転中の意識を失う事故を防ぐには睡眠時無呼吸症候群のチェックが優先されるべきと多くの医療関係者は考えているのではないでしょうか?

運転手さんのMRI検査、だれが都バスに提案したのか?

都営バスの経営母体は東京都交通局、東京都交通局の経営母体は東京都ですよねえ⋯ってことは小池都知事の管轄ということになります。私個人的な感想としては、都民の一人として小池都知事になったから暮らしにくくなったわけでも暮らしやすくなったワケでもない。都バスも生活圏で利用することはまずないけど、気になることが一つあります。都バスの運転手さんって運転が荒いんだよなあ❗(※あくまで個人の感想です)。

突然の幅寄せ、いきなり前方への割り込み⋯これって運転中に意識を失うケースによって起こってしまったの無いよねえ、多分。こちらの対策もイチ都民としてお願い申し上げます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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