「なんで私にジェネリック出すのよ❗(怒)」のパチもんバーキンおばさん登場。

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ジェネリックは三流品でも粗悪品でもないことのご理解をお願いします。大手製薬メーカーの開発した薬の特許が切れると、開発研究費の負担が少なく薬を製造できるために「ジェネリック」と呼ばれる薬がゾロゾロと発売されます。大手製薬メーカーの薬じゃない、耳慣れない製薬会社の薬であることによってジェネリックを処方されることに抵抗感をお持ちの方もいます。

なんで私に一流ブランドじゃない薬を出すのよぉー❗キーッ❗

以前、一見お上品に見えるオバさまから「なんで私に一流ブランドじゃない薬を出すのよぉー❗」とブチ切れられたことがあります。

そのオバさまの腕にしっかり抱かれていた、取っ手にスカーフをくるくると巻いた、パチもんバーキンが目に焼き付いてしまいました。膀胱炎でいらしたパチもんバーキンオバさまは膀胱炎を繰り返すとの主訴でいらした記憶があります。

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原因菌を調べるために培養検査を行うことを伝えると「病気の原因がわかるのですもんね、検査して当然ですわ」とおっしゃっていただけました。まあ、正確には原因菌が判明するだけで、原因がわかるわけじゃないのですけど。

さらに「処方した薬が本当にその原因菌に効果があるのか、薬剤感受性検査も提出しておきますね」とお伝えすると「そうねえ、飲んだ薬が効果ないバイ菌もあるんですね」と非常にここまでは順調に診療は進んできました。

さらにさらに「薬剤感受性を調べていれば、万が一私の処方した抗菌剤が効果なかったとしても、次にどんな抗菌剤を処方すれば良いかがわかるので、今まで繰り返していたとおっしゃる膀胱炎もこれでスッキリしますよ」とお伝えしました。

膀胱炎なら抗生物質で簡単に治ってしまうと考える患者さんも多いですし、専門以外の医師が適当にフロモックス等を処方してしまうケースが多く「膀胱炎って癖になっちゃうのよねえ」という都市伝説を払拭したい私は可能な限り培養検査・薬剤感受性検査を行なっています。

そんな検査も必要性を伝えないとあそこの泌尿器科、専門ぶって検査代ぼったくられたのよ❗などの風説を垂れ流す方も中にはいるそうです。

幸いにして、当院は都内でもまあまあ高級と言われている駅から離れた住宅地にあるという土地柄、常識的な患者さんに恵まれた当院の場合、検査の必要性をしっかりと伝えると「検査漬けでボッタクられた」的なご意見をいただいたことはありません。

ジェネリックを処方すると伝えると豹変したオバさま

ここまでは本当に順調なごくごく当たり前の平和ないつもの診察風景だったのですが⋯「クラビットという膀胱炎の特効薬的に言われている薬があります」と話すと「ああっ、クラビットって以前風邪ひいたときに飲んだわ」とオバさまは仰りました。

「ええっ、風邪でクラビットですかあ?」と風邪の原因はウイルスなんで、抗菌剤の処方は意味ないと思ったのですが、口には出しませんでした(大人の対応を心がけております)。

しかし、多分そこで私の顔に出ちゃったんでしょうねえ「風邪にクラビットなんて意味ないよ」オーラが。それを敏感に察知したパチもんバーキンオバさまは「私って喉が弱いじゃぁない(知らねーよ)、だから主治医の先生がいつもクラビット処方してくれるの」とのこと。

そこでこの患者さんはクラビット服用歴が多数なので、膀胱炎の菌もひょっとするとクラビット耐性菌の可能性もあるので「クラビットじゃない、他の膀胱炎に効果のある薬を処方しますね」とお伝えしました。

ここまではちょっと怪訝な顔をされはしましたが、まずまず順調な日常の診療風景。

「この薬も先発品があるのですが、ジェネリックも出ていて効果に差は無いのでジェネリックを処方しておいきます」

とお伝えし、ここで余計な一言を私はいっちまいました。

「薬代も安いですし」

すると、パチもんバーキンオバさんは突如ブチ切れ❗

なんで私にメーカー品じゃない、ジェネリック出すのよお〜❗(怒)

診察室は阿鼻叫喚の修羅場と化してしまいました。

メーカー品って言葉も今では死語になったような気もしますが、ジェネリックはあまり有名じゃない製薬メーカーが製造しているのでジェネリックは二流品、ブランド品じゃないと考えている人が多いのです

ブチ切れパチもんバーキンオバさまの追撃は続きました。普段食品類は本当か嘘かは調べようもありませんけど、地域に密着したオオゼキや東急ストアはご利用にならなくて、常にちょっと離れた成城石井でご購入とのこと。そういえばパチもんバーキンと共に成城石井の紙袋もご持参していました(レジでコンビニ袋でなく紙袋ご指定した模様)。

病気だから、との理由で一流メーカーの先発品をご希望される方もいます

普段病気になると受診する主治医はそこの大先生時代から通院していたけど、今日たまたま休診だったので、あんたのところを受診したのよ、だそうです。などなど自分がいわゆるセレブ系であることを主張しつつ私はセレブ、薬は一流メーカーのモノを飲むべき立場である、さらに病気という大事なことにたかが薬代でお金をケチる人間に見えたのかあ❗的なお考えをお持ちだったようです。

日本の医療財政は危機的状況であり、効果効能であれば薬はジェネリックを処方することが推奨されていて、患者さんの多くもそのような状況にご理解を得ていただいております。

当院に強く不満を持つというか、ブチ切れる傾向のある患者さんは多くは、なぜかいつもの主治医がたまたま休診だったから、とちょっと遠方からいらしたケースです。

当院はめちゃくちゃ地元密着型で隣接する町の60パーセント以上のご家庭が当院を受診したことがデータ上わかっています。患者さんのご自宅あるいは勤務先は半径1・5キロメートルで当院の患者さんの70パーセント程度が占められていることも以前調べた時にわかっています。

人の身なりでジェネリックにするか先発品にするか判断するわけないじゃん❗

今回、ブチ切れたパチもんバーキンオバさんの場合は私が診療圏と考えている地域以外からいらしており、駐車場に止めた車がラインからはみ出している状況も受付スタッフから事前に聞いていました(車の名前は個人が特定される可能性があるので書きませんけど、国産ではありませんでした)。見た目だけはデカデカとブランドのマークが見える一流ブランドの服を着て、パチもんバーキンと成城石井の紙バックをお持ちになった姿は本当にセレブ。セレブであろうとセレブぶった方であろうと

その方の身なりで薬を先発品にするかジェネリックにするかなんて判断するわけないじゃん❗

医業はサービス業ではないけど、サービス業の良い点はどんどん導入するべきと私は考えます。

医師には応召義務という来た患者を正当な理由なくして、診療を拒むことは禁じられています。そんな中にパチもんバーキンをお持ちになって颯爽と受診された方は

自分がお金持ちじゃ無いと見なされた、だから安い薬を処方されたと感じてしまったのでしょうねえ

私も21年、この地で開業医を営んで来ていて、気が緩んでしまったのかもしれません。

いちいち患者さんの病状の様子以外で顔色を伺いながら診察するようなスタイルは取っていませんので、患者さんをよいしょするような発言も一切しません。

私がもう少し大人の対応をして「わっ、素敵なバッグですね。エルメスのバーキンお高いんでしょうねえ。そんな方にはジェネリックなど処方できないので、一流メーカーのブランド薬を処方しましょうね」とサービス業的なベタベタ、コテコテの対応をすれば良かったのですね(本当はそんな気持ち一切無いよ❗)。

しかし、そんなヨイショ診察していたら精神的なプレッシャーによって絶対に言ってしまいます!「そのバーキン、コピーですよね」って。なんでこんなどうでもいいよもやま話をするかというと、先日こんなブログを書きました。

ジェネリック医薬品は効果が無く、安かろう悪かろうです⋯これは本当なの?

ジェネリック医薬品は効果が無く、安かろう悪かろうです⋯これは本当なの?

これ前もってプリントアウトして、パチもんバーキンオバさまに渡しておけば良かったかも、と思って古い古い話をブログにしました(時系列的に無理な話だけどね)。なお、個人情報に触れる可能性のある部分においては若干の創作を加えておりますが、パチもんバーキンは真実。

なんでオッサンの私がそれを見分けられたかというと、おじさんはねえ、昔結構ヤンチャでねえ⋯誰もそんな話聞きたくねーよ、やめておきます(笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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