ジェネリック医薬品は効果が無く、安かろう悪かろうです⋯これは本当なの?

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最近よく聞く薬の名前で「ジェネリック」があります。このジェネリックは薬の名前では無く、正確な意味は大手薬メーカーが独自に開発した時にもらえる特許が切れてしまった後に製造される医薬品です。ジェネリックを厚生労働省は使え!使え!といいます。保険証にもジェネリック医薬品に同意するかしないかといったシールが添付されていますよね。

ドラッグストアでも、例えばバファリンください、と言ったら、同等品で安いこちらのジェネリックはいかがですか?とレジで言われたことありませんか?

見た目が同じなら、本物のブランド品じゃなくても安いコピーを買う、これは価値観の問題ですが、コピーブランド品は違法です、ジェネリックは厚生省が推奨しています。さて、ジェネリックは安くて効果あり、それとも、安かろう悪かろう、どちらなのでしょうか?

ジェネリックは先発品と言われる大手薬メーカーが作った薬を真似て作られる薬のことをさします

ジェネリックは先発品に対して後発医薬品と呼ばれることもあり、以前は先発品の特許が切れた後

に中小の弱小製薬メーカーが真似て多くのメーカーが製造し、ゾロゾロと発売されることから「ゾロ」「ゾロ薬」と呼ばれて、先発品と比較して安く、さらに値引率も高く、二流品・三流品扱いされていました。

ある意味でコピー商品であっても

ジェネリックの良い点は価格が安い、つまり薬剤費を低く抑えることが可能なのです

医療費の増大を抑える目的として

厚生労働省は処方薬をジェネリックに変えることを多方面から進めています

ジェネリックが多く処方されることは、医療費を抑えることが必要であるとの世の中の流れに対してこんな反論が出ています。

安かろう悪かろうが恐ろしい「ジェネリック医薬品」の真実!

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https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181031-10000018-shinchos-life

本当にジェネリックは安かろう悪かろうの安売りコピー商品であり、万が一医療機関でジェネリックを処方されたら「病気のことなんで安い薬なんか処方するな❗」って拒否するような薬なんでしょうか?

ジェネリックってどんな薬が知っていますか?

二流品・三流品・コピー商品的薬と考えている人も多いジェネリック。そんなジェネリックを厚生労働省も使え使えというし、健康保険組合もジェネリックを処方してもらいましょうと啓蒙活動しているし、医師の多くも処方薬の一般名を書いてジェネリックを処方しています。

そのような行政や健保組合の要請や医療制度が破綻寸前の危機的状況打破のために、ジェネリックは処方されているのに

デイリー新潮はジェネリックを安かろう悪かろうと批判しています

このデイリー新潮の記事の詳細を見ていくうえでまずはジェネリックとはどんな薬なのか定義をしっかりおさらいしましょうね。

厚生労働省によれば

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、先発医薬品と同一の有効成分を同一 量含み、同一経路から投与する製剤で、効能・効果、用法・用量が原則的に同一で あり、先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品をいいます

と定義されています。

ここから得られる重要なポイントは

ジェネリックは先発品と比較して同等の効果効能が得られる薬

なのですから、デイリー新潮が伝えるような悪い薬だとは考えにくいです。ジェネリック医薬品が先発品より安い薬である理由は同じ厚生労働省の「ジェネリック医薬品への疑問に答えます」によれば

研究開発に要する費用が低く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が安くなっています。

との非常に説得力のある説明になっています。

となるとなんでデイリー新潮はジェネリックは安かろう悪かろう、なんて言いがかりをつけているのでしょうか?

どんな根拠を持ってジェネリックを批判しているのか、デイリー新潮を引用しながら考えていきます。

ジェネリックは安かろう悪かろうと因縁をつけているデイリー新潮の主張

デイリー新潮によればジェネリックは安全性に問題があるので、それを財務省や厚生労働省が音頭をとって推進するのは如何なものか的な批判だと読み取りました。

ジェネリックと特許切れの新薬とは完全に同じ薬ではありません。例えば、解熱鎮痛薬で成分の根幹を占めるロキソプロフェンという化学物質の特許が切れたとしても、薬を溶けやすくする添加物や、特殊コーティング技術などの製剤特許は失効していない場合がある。その結果、先発薬に比べて全く効かなかったり、反対に効き過ぎたりする事態が生じるのです

との薬剤師さんの話が書かれています。

ジェネリックは薬効のある主成分に変わりはありません

薬剤師さんは、添加されている成分やコーティング技術に違いがあるために本来の薬の効果が出ないことがあったり、薬の効果がありすぎたりするから、ジェネリックは避けるべきと読み取れますよね。

これって一部が本当で一部が大きな間違いです。なぜならジェネリック医薬品が開発され健康保険が適用される処方薬と認められるためには厚生労働省はジェネリックは先発医薬品と同等の臨床効果・作用が得られる医薬品であると定義しています。ジェネリック医薬品製造販売している大手の沢井薬品のロキソニンのジェネリックであるロキソプロフェンNa錠60mg「サワイ」を検証してみます。

ロキソニンの添加物

低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、三二酸化鉄、乳糖水和物、ステアリン酸マグネシウム

ロキソプロフェンNa錠60mg「サワイ」の添加物

軽質無水ケイ酸、三二酸化鉄、ステアリン酸Mg、乳糖、ヒドロキシプロピルセルロース

ジェネリックの方が軽質無水ケイ酸が先発品より多いだけです。製剤における添加物は数十種類に分類されていて、軽質無水ケイ酸は流動化剤として主に使用されます。薬に流動化剤を加える目的は薬を製造する過程で有効成分が均一に混ざるようにすることです。

この流動化剤を加えたことによって、薬本来の効果が発揮しなかったり、逆に効果が出すぎることがあるのでしょうか?

国内で処方されている医薬品の副作用等を管理している医薬品医療機器総合機構(Pmda)という独立行政法人があります。

このサイトでロキソプロフェンNaの副作用情報の中で重大な副作用として追加して挙げられているのは例えば

小腸・大腸の狭窄・閉塞:小腸・大腸の潰瘍に伴い、狭窄・閉塞があらわれることがあるので、観察を十分に行い、悪心・嘔吐、腹痛、腹部膨満等の症状が認められた場合には直ちに投与を中止し、適切な処置を行うこと。

です。

この重大な副作用は先発品であるロキソニンに対しても警告されていますhttps://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00057032)。

別に添加物の違いが原因となって、薬の効果が出なかったり、副作用が強く出過ぎるとの主張には疑問を持たずにはいられません。

ジェネリックは安全性試験が行われていない

ジェネリックは安全性試験が行われていないから危険、との考え方が一般の方だけじゃなくて、医師の間でもそんなことを言っている人がいないわけじゃありません。

確かにジェネリックは安全性試験を行なっていませんが、安全です❗

理由を説明します。

医薬品の効果効能は薬の有効成分の濃度に左右されます。

そのための条件は次のとおりです。

  • 薬の有効成分が同じ
  • 有害作用があるような成分や不純物が含まれていない
  • 作用を及ぼす臓器等における有効成分の濃度が同じ

これらの条件を満たしていれば

ジェネリックであっても有効性や安全性は同じである、と考えるのが合理的な判断です。そのためにわざわざジェネリックを人間に対する有効性や安全性を臨床試験によって確認する必要性はない、と判断されているのです。ジェネリックは世界的に見るとかなりの割合になっています。

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https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000114903.pdf厚生労働省サイトより

安かろう悪かろう、効果もなければ安全性にも問題があるジェネリックとの考え方が正しいのであれば、世界中の医療機関や医療系行政組織が騙されていることになります

ジェネリックを作っている製薬会社は品質管理が劣っているのか?

デイリー新潮ではある医師がこのように語っています。

先発薬を製造するメーカーの工場では、品質管理が厳格に行われています。一方でジェネリックメーカーの中には、コストをカットするため、薬の原料である『原薬』をインドや中国、韓国などのメーカーに頼っている企業もある。ところが、そうした国々の原薬には、しばしば虫の死骸や鉄くずが入っていたりする場合があると言われています

これから

ジェネリックを製造している製薬会社は中小企業であり、コストカットに執心して安全性の管理に手を抜いている?かのようにも読み取れます。

ジェネリックを作っている製薬会社のビッグ3は日医工・沢井製薬・東和薬品です。

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https://answers.ten-navi.com/pharmanews/14235/

2018年度トップと予想されている沢井製薬の売上高は1680億円。2016年の日本の製薬会社の売上高はこのようになっています。

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https://answers.ten-navi.com/pharmanews/9919/

みなさんがご存知の薬会社と比較しても売上高から判断する限りは、ジェネリックを作っている薬会社は大手の先発品製薬会社並みの規模の大会社と判断できますよね。

ここで非常に気になる一文があります。

ジェネリックの原料には虫の死骸や鉄くずが混じり込んでいる⁉

これって本当かよ⁉

万が一これらの異物が混じり込んでいたとしても、それがそのまんま薬の成分に混入することは、製造過程から考えてありえないのではないでしょうか?

例えば脳梗塞の治療薬として多くの人の病気に貢献しているウロキナーゼ、これの原料は人間のオシッコです

https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med_product?id=00048937-001

副作用が無くて安心なのよねー的に使用される漢方薬、保険適用として処方される漢方薬。漢方薬の原料の80パーセントは中国から輸入されています。原料に万が一虫の死骸が混じっていたとしても、製造過程で除去されますし、大手であっても原料の調達先は同じであることがほとんどです。

となると、なぜこの薬剤師さんと医師はジェネリックは安かろう悪かろうと判断しているのでしょうか?薬を服用した患者さんのことをお考えになってこのような警鐘を鳴らしているとは思えません。

なぜならこんな変なことを言っているからです。

基本的には安価なりのリスクが存在します。万が一、薬害が発生した場合など、中小メーカーでは到底補償などカバーできないでしょう。

この発言は誤認だと断定しても構わないと思います。処方薬において副作用が起きた場合には製薬会社が補償するのでは無く医薬品副作用救済制度という仕組みがあります。

この薬剤師さんは万が一の副作用に対する医薬品副作用救済制度をご存知ないの?

適正に使用した医薬品で副作用が現れた場合は公的な制度が救済してくれます。薬剤師さんだって医師だって、この制度を知らないなんてありえません。

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https://www.pmda.go.jp/kenkouhigai_camp/general04.html

確かにジェネリックは先発品と全ての成分が同じでないことは事実です。しかし、財政破綻寸前の国民皆保険を維持するための一つの方法であるジェネリックをなぜデイリー新潮はこんなに批判するのでしょうか?

この記事に対してジェネリック業界は抗議をしても良いレベルのヘンテコリンかつ何がしら一定方向へ読者を誘導する全く人の役に立たない記事だと思わざるえませんでした。

そういえば週刊新潮の医療批判記事ってなんだかヘンテコなものが増えてきたようなイメージがあります。例えばこれ

賛否両論の糖質制限ダイエット論争に幕はちょっと早すぎるような⋯。

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今まで何回か取材協力をしてきた媒体なので、今後の精進に期待します。この言い方が上から目線と口コミサイトに書かれる原因かあな、まあ気にしない、気にしない⋯本当はめちゃ気にしているけど(涙)。

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「なんで私にジェネリック出すのよ❗(怒)」のパチもんバーキンおばさん登場。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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