産婦人科領域の医療関連キーワード、特に出産絡みのキーワードで検索するとなぜか素人記事が目立ちます。
本記事の内容
ネットの医学関連情報は果たして正しいものが必要としている人に届いているか?
話は飛びますが、本日こんな記事を見かけました。
「バランスボールで転倒し子宮破裂」 産婦人科医を提訴
他のメディアのサイトだと「バランスボール使わされ子宮破裂」との見出しがあり
いやいや妊婦さんがバランスボールを使わされたような表現になっています
インナーマッスルを鍛えることが流行ってい流のは知っていますけど、なんで妊婦さんがバランスボールを産婦人科医の指導で使っているか、これってひょっとするとトンデモ医学なのでは、と感じて調べてみました。
バランスボールを使用すると陣痛が和らぐことが医学研究によって明らかになっていたのですね。
「Effect of birth ball on labor pain relief: A systematic review and meta-analysis.」(DOI:10.1111/jog.12802)によればメタアナリシスによって8論文が精査され結論としてバランスボールは陣痛を緩和するとの結論に至っています。
知人友人から「陣痛を和らげるならバランスボールよねえ」的なアドバイスを受けた
妊婦さんが正しい医学論文にたどり着くのは至難の技だと思います
となると陣痛を緩和する方法としてバランスボールの効果や使い方を発信している
産婦人科医の記事がなぜネット検索では上位に表示されないのか?との素朴な疑問
を抱いてしまいました。
産婦人科医は人数が少ないからネット上での医学情報発信が少ない?
私のような開業医だと激務とはいえ自分の時間を確保することは、いくつかの工夫によって可能です。
近年、勤務医の長時間労働問題がクローズアップされていて、激務ゆえに過労死された医師もいます。
m3.com「産婦人科後期研修医の自死、労災認定」
激務ゆえに産婦人科を専門とする医師の数が減っている可能性もあります。
厚生労働省資料より これをざっくりみる限りでは、確かに産婦人科医の数は減少していますが、少子化の影響もあるためか産婦人科医一人当たりの出産数には平成6年から平成18年にかけては大幅な変化は見られません。
2004年、つまり平成16年に医師の間で話題となった事故がありました。
この福島県立大野病院産科医逮捕事件あるいは大野病院事件は産婦人科医たちにとってトラウマというか、自分たちは出来る限りのことをしているのに、なぜ事件として扱われて裁判にまでなってしまったのか、違和感を抱いた医師も多かったと記憶しています。
その後、2009年に医学部の定員が700人増員となり、産婦人科医の数を調べてみると⋯
厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会資料」
産婦人科医を専攻した医師の数は一時期減少していますが、近年になって増加しています
医師側としては理不尽な裁判とも考えられていた大野病院事件ですが、産婦人科医の数には大きな影響は無かったようです。
医師数が増えているから、実質的には減少との解釈も成り立ちますが、これに関しては詳細なデータと統計学を駆使しないと判定できないので省略します。
となると、産婦人科の医師たちはネット上で情報発信をする手間を惜しんでいるのでしょうか?それは間違いなく違います
素人ライターの手によるママサイト、プレママサイトの数が多すぎるのです
つまり、悪化が良貨を駆逐する状態。
産婦人科医は激務、だからブログや医療関連記事を書いている時間が確保できない
前掲の厚生労働省の資料に驚くべきグラフが掲載されています。
産婦人科医の労働時間は他の科目を大幅に上回っているのです。ネット上に産婦人科医による妊娠・出産に関する正しい医療情報が目立たないのは
産婦人科医はあまりにも忙しくてネット上で発信する時間が確保できない❗
可能性が高くなっていることが予想されます。
産婦人科医は情報を発信したくても、記事を書く時間が取れない、という問題によってママサイト・プレママサイトのどうでもいい、誰の役にも立たない酷い医療関連記事風のデタラメ情報が拡散してしまうのかもしれません。
これからのカモはプレママ・妊婦さん・子育て中のママ、と怪しげな界隈が狙っています
試しに「ママサイト」で検索すると先日いい加減な医療情報を提供したことによって
炎上したIt Mamaが育児に役立つママサイト11選、なんてもので上位にランキングされています。まあ、こりゃNEVERのランキングなんで信頼度低いですけど、あまりネットリテラシーが高いとは言えないママは信じちゃうのでしょうねえ。
さらに「ママサイト」で検索すると上位表示されるのが「百花繚乱ママサイト、かってに格付けチェック!」とのタイトルのママピックスのサイト(http://mamapicks.jp/archives/52184126.html)。
ここでも炎上したIt Mamaが上位にランキング(苦笑)
産婦人科領域は守備範囲がである私でさえ「ええっ〜❗こんなインチキ記事掲載していいのかよ」と思ってEvernoteに記録しているサイトが推奨されているのが現状です。
なにが悲しゅうて、医学のど素人が推薦するママ向けサイトが検索結果で上位表示されてしまうのでしょう
Google先生、ぜひこの辺りの検証と改善をお願いいたします。
私が苦手な小児科領域や子育て中の方に推奨している本はこれです。
森戸やすみ先生の著作、家とクリニックに置いていて、時々診療中にカンニングしております(笑)。
後、産婦人科医で積極的に情報発信している宋美玄先生の著作も一般の方にはおすすめです(これはKindleにダウンロードして、診療の合間にカンニング)。
なんどもブログでお伝えしている重要な注意があります。トンデモと呼べるような可愛げがな点が全く無い
ニセ医学・疑似科学系の一派が確実にターゲットを絞っているのはプレママ・妊婦さん・子育て中のママです
ハッシュタグをつけて素朴な疑問をソーシャルに投稿するとこんな医師やその関係者と思われる人がアプローチをかけてきますのでご注意ください。
ああ、怖い、怖い。