人類の歴史は飢餓との戦いの歴史である、と言っても過言では無いでしょう。
しかし、飽食によって現代では多くの国が肥満が国民の健康を脅かしています。さらに美容的見地からのダイエットブームも廃る気配は全くありません。
様々なダイエット方法が登場しては消え去り、時間をおいてリバイバル、って感じです。私が子供の頃に話題になったダイエット方法で寄生虫ダイエットというオエッとなってしまうトンデモ系の減量方法がありました。そのどう見てもトンデモ系の寄生虫ダイエットのメカニズムを群馬大学の研究者グループが解明したことがボチボチ話題になっています。
寄生虫ダイエットの効果の仕組みが解明されたらしい、でも疑問が多数あります
この寄生虫ダイエットの効果が科学的に証明された、はどう見ても木を見て森を見ず的に私には感じられてしまいます。まず
- マウスで効果が証明されても人間にそのまま当てはまるとは言い切れない
- 寄生虫を体内に養うことのリスクが明らかになっていない
- ダイエット目的で寄生虫を体内に入れる行為は倫理的に許されることなのか
- そそっかしい人が早速寄生虫を食してしまう可能性は無いのか
などなどです。研究者が様々な実験を行い、効果・効能を検証することはどのような圧力があっても継続されるべきものです。しかし、メディアは意外性・話題性だけを追い求める風潮にも気をつけなければなりません。
普段脚光を浴びることの少ない地味な研究に勤しんでいる研究はくれぐれもメディアに踊らされて、ヘンテコな医学系バラエティ情報番組などに登場しないことを願うばかりです。
海外では効果なし、と判断されている寄生虫ダイエット
私が寄生虫を体内で養ってダイエットを目指す人がいることを知ったのは、モデルを職業としている女性がなんかの拍子にサナダムシを体外に排出する場面が描かれている筒井康隆氏の「俗物図鑑」だったような記憶があります。
寄生虫ダイエットの効果として当時解説されていたのは、食べた食物の栄養を寄生虫が消化することでした。実際に寄生虫ダイエットを試みたチャレンジャーの海外の記事があります。
このソースの信頼度に関して不問としますね(笑)。この記事によればKhloe Kardashianさんがダイエットのために寄生虫の一種であるサナダムシを体内に入れたいと考えていることをリアリティー番組で述べたそうです。そしてロシアで販売されているサナダムシの卵が紹介されています。
サナダムシのことを英語では見たまんまの 「tapeworm」と呼ぶんですね(日本語も見たまんま)。
ここにも書かれていますが、寄生虫ダイエットの効果効能はハンバーガーやケーキを食べてもサナダムシがカロリーを吸収してくれることと考えられているようです。
寄生虫を体内の養うことによって貧血・痙攣・視力障害などが引き起こされる場合もあります (MSDマニュアル家庭版等)。さらに消化器に寄生虫が生息することによって、当然のごとく吐き気・嘔吐・下痢が生じます。ひょっとして寄生虫ダイエットの効果のメカニズムってこの消化器症状が主なんじゃないの、と普通は解釈します。
前掲の英文の記事でも寄生虫ダイエットに関して下痢によって体重が減少すること、ダイエットのために下痢を誘発することは摂食障害の原因にもなりかねない、ダイエットしたいならサナダムシを体内に入れ込むことよりジョギングをするべきである、などなど真っ当な指摘が記載されています。
世界を見渡すと、計り知れないトンデモ系の親御さんもいるようで、ダイエットの手助けと考えて娘に寄生虫を飲ませた母親がいるようです。
ダイエットのために娘に寄生虫を飲ませた母親
コスモポリタンという女性誌にこんな記事が掲載されています。
コスモポリタンという媒体の信頼度に関しては不問にしますね。
ミスコン出場を目指している娘のダイエットのために母親がサナダムシを食べさせていた、こりゃどうしたものか的な記事になっています。
異常にお腹が張って救急病院に搬送された10代の女性(最初は妊娠と考えられた)が突然トイレに駆け込んで大量のサナダムシを体外に排出したそうです。ミスコンを目指していた女性が気がつかないうちに、母親がサナダムシの卵の錠剤を飲ませていたのが原因でした。
この件に関してSteven Doerr医師は別の媒体でこんなコメントをしています。
The use of tapeworms for weight-loss purposes illustrates this risk.
減量のためにサナダムシを服用することはリスキーです。
https://www.medicinenet.com/eating_tapeworms_for_weight_loss/views.htm
この記事によれば
- 寄生虫ダイエットは20世紀初頭より広告されていた
- 健康上のリスクがあるにも関わらず寄生虫ダイエットは現在でもネット広告によって販売されている
- 寄生虫ダイエットは危険であり、どんな状況であっても利用するべきではない
- 寄生虫ダイエットは米国では違法
寄生虫ダイエットの効果については、消化器症状以外のメカニズムが働いていることを群馬大学の研究者グループは突き止めたようですが、ダイエット方法として選択されるべきもので無い、と現時点では判断して良さそうです。
サナダムシダイエットを中心として様々な寄生虫を利用した減量方法がネット上では散見できます。今回、このブログを書くにあたって興味深い海外の寄生虫ダイエット広告を見てきたのですが⋯うえっ、気持ちが悪くなってしまいました。詳細は各自検索してくださいませ。