「このγ-GTPレベルだと、即入院って言わざる得ないですよ」と患者さんに宣告してしまうレベルに到達していた医者の不養生を絵に描いたような私ですが、半年以上の禁酒生活によって肝機能が正常値であることを先日受診した人間ドックで確認して、ニンマリしております。
人間ドックを受診してちょっと気になったのは、認知症のリスクって予想できるの?です。
本記事の内容
出世すると認知症になりやすい、医師の常識なんでしょうか?
こんな記事を見つけました。
医者が罹りやすい病気関連キーワードで検索したはずなのですが笑。そこにはなんと出世した会社員が危ないという小見出しが❗何が危ないと書かれているかというと、出世した会社役員は定年後に認知症になってしまうリスクが高い、らしいのです。
偉くなった人ほど認知症になりやすいとの風説は本当?
今の若い人は知らないとは思います。今から数十年前いわゆるバブルと言われている時代にそれはそれは元気一杯にバブルに油を注いだメガバンクがありました。そこの頭取がバブル崩壊後に認知症になり、惨めな老後を送り静かに人生に幕を引いたとの話を某週刊誌が取り上げていた記憶があります。
向こう傷を恐るなと行員を叱咤激励し最終的にはスキャンダルにまみれ引退した頭取が認知症になったのは「ザマァ見ろ」「バチがあたった」的な記事構成であり、出世しなかったオッサン達の共感を得ようという魂胆だったのかもしれません。そんなこんな記憶があったので、恥ずかしながら私も出世したサラリーマンほど、定年後は認知症になりやすいが記憶の片隅にありました。
週刊現代の取材に応じた医師は次のように述べています。
経営者、とくにオーナー経営者が認知症になるケースは少ないですが、サラリーマンで出世して役員になった人はなりやすいと感じています。
本当にサラリーマンで出世した人は認知症になりやすいのでしょうか?
認知症になりやすい職業がある程度わかっていますが、リスク群の人ってどう見ても出世したサラリーマンじゃないんですけど❗
教育レベルは認知症に影響しない
教育レベルがいくら高くても教養が無い人は珍しくありませんし、たたき上げの経営者の中には低学歴の人も多数いらっしゃいます。新しい医学見地としては 教育レベルは認知症と関係なしなのです。
高いレベルの教育歴を有する人は認知症に拮抗する能力「認知予備能」が高いため認知症になりにくいと考えられていたが、この従来の定説を覆す結果が示された。
あれあれっ?前述のメガバンクの頭取は確か京都大学出身なので高い教育歴を有していると判定して良いですよね、ってことは今までの医学常識は教育レベルが高い人ほど認知症になりにくい、と考えられていたことになります。
ということは、週刊現代のタイトルにある「医者の間では常識だった」のはちょっと前までは高学歴だと認知症になりにくい、週刊現代の取材に応じた医師の常識はサラリーマンで出世した人(多分高学歴)は認知症になりやすい、という解釈も成り立ちます(ちょっと強引かも笑)。
現時点で認知症になりやすい職業としてわかっているのは肉体労働に携わっている人です。詳細は「Occupation and Risk of Cognitive Impairment and Dementia in People in over 55 Years: A Systematic Review, Spain」(PMID:27325121)をご覧ください。
この論文と認知症は教育レベルと関係ないよ論文を組み合わせて考えると、教育レベルと職業の関係性の強さまで調べないと正しい判断は出来兼ねませんので、その辺りの統計学的な処理は認知症の研究者の方々にお任せしましょうね。
病気に関する医師の見解のエビデンスレベルにご注意ください
医学に関する情報の正しさはは、
隣のおばさんの話<かかりつけ医の話<医学論文の話<まともな学会の作成したガイドライン、
の順にザックリなります。
しかし、実際は学会の作成したガイドラインよりテレビや週刊誌、あるいはネットに撒き散らされたトンデモ医学情報が影響力が大きく、擬似エビデンスレベルとしては最上位になってしまう傾向が間違いなくあると考えています。
今回の週刊現代の取材に応じた医師の方々も見解を述べる前に「あくまで個人的な印象なのですが」とか「エビデンスが明らかになっているわけでは無いのですが」と取材者に告げていると思いたいです。しかし、取材者や編集者の思惑によって文章がこっちが伝えたい内容とは変わってしまうことも経験上は少なくありません。
ちなみに出世したサラリーマン役員=高学歴である、として話を進めてまいりましたが、これは全くエビデンスがない私の思いつき&仮定であることにご注意くださいませ。