「歯は中枢だった」という衝撃的なタイトルのトンデモ本というか奇書に触れて以来、世の中に出回る歯科領域の病気と私たち医師が関わっている病気の関連性が書かれている一般書籍(医学書籍じゃないよ)には可能な限り目を通しているつもりです。
一般書籍の宣伝なのか、一般書籍をネタとしたものなのか、虫歯や歯周病と全身性の病気と、特に認知症の原因が歯科の病気にあり、歯科の病気(多くは歯周病)の治療をすれば認知症が治ってしまう、といったネット記事が目につくようになりました。
歯磨きと死亡リスクの関係
今回、たまたま目にした歯科医が警鐘! 確実に「死」に近づく食べ物、「死」を防止する歯磨きとは?(上)では
デンタルフロスを使わない人は使う人より死亡率が高くなる❗
と衝撃的にことが書かれています。これを読んだ瞬間に「デンタルフロスは自分で使用したのか?」「万が一認知症の方が含まれていたらデンタルフロスは無理じゃん」「デンタルフロスを毎日使うくらい健康に気を使う人だから、死亡率も低くなるのでは」などなどの知的疑問(笑)が湧き出てきました。
寝る前に歯磨きしないと死亡リスクが高くなる⁉
昔、お父さんお母さんに観ちゃダメと言われていた番組「8時だョ!全員集合 」ではエンディングで加藤茶さんが良い子のみんなに向かって「風呂入れよ!」「宿題しろよ!」などの続いて「歯を磨けよ!」と教育的指導を行ってくれていました。今だったら
長生きしたかったら歯を磨けよ!
ってことになるんでしょうかね。
就寝前に歯磨きをする人に比べ、全くしない人は死亡リスクが上昇した結果が残されています。
大人んサー
さらに
デンタルフロスを毎日使う人と比べて、全く使わない人は30%も死亡率が高くなったことが明らかにされています
とも書かれていますので、
歯磨きだけじゃなくて、デンタルフロスも使えよ!
と加藤茶さんに呼びかけてもらうことも必要になってきます。大人んサーの記事で引用した医学論文は「Dental Health Behaviors, Dentition, and Mortality in the Elderly: The Leisure World Cohort Study」(PMID: 21748004)です。
口腔内の衛生環境が健康全般や死亡率にどのような影響を及ぼしているかを調査するために5611人の高齢者を対象として、歯の健康状態と歯並びと死亡率の関係を調査したものです。
寝る前に歯磨きをしているか、デンタルフロスを毎日使っているか、歯科を受診しているか、などの調査項目と死亡リスクの関係を調べています。
寝る前に歯磨きをすると死亡リスクが20から35パーセント減少し、デンタルフロスを毎日使用していると死亡リスクが30パーセント減少し、さらに歯科医を2回以上受診していると死亡リスクが30パーセント減少した、との結果になっています。
つまり、寝る前にはしっかりと歯磨きをして、毎日デンタルフロスを使って、歯科医受診していれば死亡リスクを大きく減らすことが可能である、と解釈できる内容になっています。
さらに歯が大量に抜けてしまっている人は20本以上歯が残存している人と比較してこれも死亡リスクが30パーセント高くなっています。
加藤茶さんが常々口を酸っぱくして子供たちを諭していた
「歯を磨けよ!」は命に関わる大切なアドバイスだったのです
「8時だョ!全員集合 」を当時のPTAは問題視して抗議続出だったと記憶しております、PTAのオバサンたちどうしてくれるんだあ❗
口腔内の衛生環境は寿命と強く関連していると判断できそう、かな?
今回の調査は1992年時点で健在であった事前登録者へ対して郵送で追跡調査を行っています。返信は73パーセントからあり、その後連絡が取れなくなったり死亡したりした人を除く5611人が対象になっています。
そもそも口腔内の衛生に関心が高く、ご自分でデンタルケアができる高齢者はそれなりに健康である、との捉え方もできるのではないでしょうか?なんて感じの疑問がないわけじゃない医学論文ではありますけど。
その他の報告を見る限り口腔内のケアをしっかり行うことは長生きするコツの1つであることには間違いが無さそうです。