病気になっても受診したくない科目のベスト3に入ることが確実な(※n=5)である泌尿器科をなぜか専門としてしまった私が、泌尿器科受診を躊躇している人々に泌尿器科の風評被害的な誤解を解いてみます。
オシッコのことで悩んでいる人、泌尿器科を受診するのは怖くないし、痛くないよ❗ってことをお伝えしてまいります。
本記事の内容
泌尿器科は受診したくない、とお考えの人が多いのですが⋯
病院嫌いの人も多いようですが、特に受診したくない科目として泌尿器科があります。
泌尿器科のことを「秘」尿器科って書いちゃう人がいるくらい、泌尿器科を受診するのは恥ずかしい と考えている人が多いのですね。
次に
泌尿器科を受診すると痛い検査をされる、と思い込んでいる人もいます
「先輩が泌尿器科で検査したらめっちゃくちゃ痛かった、って言っていました」なんて感じの患者さん、特に男性に多いと感じています。さらになぜか、泌尿器科を受診するとお尻に指を入れられる、と思い込んでいる人もさらに多いのです。
泌尿器科を受診すると恥ずかしい姿で診察を受ける
これは、大きな誤解です。
このように思い込んでいる人も多数のようです。
泌尿器科=下半身を晒す、なんてことはありません。
今のご時世、そんなことを必須事項として診察していたら患者さんは来なくなってしまいます。
泌尿器科を受診すると恥ずかしい?
昔々、泌尿器科イコール性病、と受け止められていた時代がありました。性病のことを風流に花柳病なんて呼んでいた時代もありました。そのためか泌尿器科を受診する年配の方の中には「恥ずかしい話なんですが⋯」と切り出す人も以前はいました。
泌尿器科ってオシッコの病気を治す科目であると考え「びろうなことなんですけど⋯」とおっしゃるお年寄りも最近は見かけませんが、以前はいました(「尾籠 びろう」の意味は各自調べてね)。
とにかく泌尿器科を受診することは、色々な意味で恥ずかしいことである、との誤解があります。
泌尿器科の守備範囲は腎臓から尿道までなので、確かにオシッコにまつわる病気を診る科目であることに間違いはありません。しかし、腎臓って血圧とも強い関連性がありますし、男性の場合は睾丸はテストステロンを介して男性の更年期障害とも関連がありますし、前立腺肥大の薬の中には動脈硬化の治療になるのではないか、と期待されているものもあります。
さらにさらに糖尿病の合併症として知られている腎不全、これも腎臓の病気であり、泌尿器科で人工透析を行なっている病院・クリニックもあります。
高血圧・糖尿病・脂質異常症は生活習慣病と呼ばれています。
生活習慣病は泌尿器科と強いつながりがあるとも考えられます
泌尿器科を受診することによって、これらの病気の全部が泌尿器科を受診することによって、治療できるわけでは無いのですが、泌尿器科と強い関連性があると、強く思っちゃうんですよねえ、私は。
そういえば、同期で泌尿器科に入局した某医師は親に泣かれたっけ。「お前を苦労して医師にしたのに、泌尿器の医者になるなんて⋯」と言われたんだってさ、でも泌尿器科に入局してよかったじゃん、今では立派に教授になっているんだから(泣いた親御さんの発言は正しくは秘尿器科だと思います(笑)。
泌尿器科を受診すると痛い検査をされる、これは大きな誤解です
泌尿器科で検査を受けるとメッチャ痛いことされる、と思い込んでいる人も少なくありません。「先輩がメッチャ痛い検査をされたって言っていましたが⋯」的に後悔先に立たず的なよからぬ行為をしてしまって泌尿器科を受診する男子が今でも結構います。
私が医師になった当時は尿道炎の疑いがあると、針金でできた検査機器を尿道から挿入して、バイキンを調べていました。これは検査する側の医師でさえ、こりゃ絶対痛いぜ、と感じながら、「ちょっと痛いかもしれませんけど、すぐに終わりますから」なんてことを言いながらゴッツイ針金様の検査機器を尿道奥深くまで挿入していました。
その後、流石に針金は痛いだろうと思った検査機器開発会社によって、綿棒を挿入する検査に改良されましたけど、これだって十分に痛いです。今としては尿道炎の検査は非人道的な検査であったことは間違いありません。
うえっ❗検索したらこんなのがあった。
いまだにこの検査やっているところあるのかなあ??
唐突ですがPCRという検査方法をご存知でしょうか?PCRは正式にはPolymerase chain reactionと書きます。これの意味するところは遺伝子を増幅させる技術であり、キャリー・マリスさんが開発した医療だけでなく科学の進展を促した素晴らしい方法であり、もちろんノーベル賞を1993年に受賞しています。このキャリー・マリス博士は奇人としても知られていて、ご興味のある方は「マリス博士の奇想天外な人生」(ハヤカワ文庫)をお読みください、とにかく破天荒なオジサンです。
尿道炎の原因として大半をしめるのは淋菌とクラミジアです。現在はこれらの微生物に感染した場合PCR検査なら尿検査するだけで診断が可能、要するに尿道にヘンテコな器具を入れられないで、尿をほんの少し提出するだけで、淋菌やクラミジアの感染の有無を調べることが可能になっているのです。
他の微生物もPCR法を使うと判定は可能ですが、残念ながら泌尿器分野では保険適応とはなっていません。
メッチャ痛い検査をされると誤解されている泌尿器科ですが、科学の進歩によって現在では回避されています。
さらに膀胱の中を内視鏡を使って検査することがあります。今は軟性鏡という胃カメラと同じ様な性状のモノを使用していますが、私が開業した20数年前は硬性鏡、金属製のぶっとい管を挿入している泌尿器科がほとんどでした。
膀胱内を調べるのに使用する軟性鏡、胃カメラの細いバージョンと考えてくださいませ。
この硬性鏡、いくら庇おうと思っても、どう見ても痛い検査です。この硬性鏡があまりにも痛いので、必要以上の恐怖を与えたとして米国で訴訟沙汰になった、なんて話も聞いたことがあります。
以前はこんな感じのモノを尿道から挿入していました(http://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-24200.html)。
医学は進歩しています、患者さんが恐怖を感じたり、必要以上の苦痛を伴う検査はどんどん改良されています。
泌尿器科を受診すると下半身裸になり、お尻から指を入れられる?
えーっと、これ実は多くの方が誤解されている様です。まず、泌尿器科を受診すると下半身を必ず診察時に見せないといけない、これは大きな間違いです。膀胱炎を主症状(専門用語で主訴)で来院した女性に「じゃあ、パンツを脱いでください」なんてことを言ったら、今のご時世、間違いなくアウト、エロ医者認定となります
また、泌尿器科=直腸診、と思い込んでいる男性も多いです。確かに前立腺肥大や前立腺がんの診察にはお尻から指を入れる直腸診を行うことは教科書的にはマスト事項になっているとは思いますけど⋯私の様な町医者風情では行わないことも多いです。
これが直腸診です。
膀胱炎、特に単純性細菌性膀胱炎が強く疑われる場合はほとんど尿の検査のみで完結します。女性の下半身方面に対して精査が必要な場合は、私の場合は連携している婦人科を受診してもらっています。
前立腺をチェックしたい時、前立腺がんはこれまた医学の進歩によってPSAと呼ばれる前立腺特異抗原と呼ばれる血液検査が他のどんな検査よりも感度が高く泌尿器科の進歩に大いなる貢献をしてくれています。
PSAは内科などの泌尿器専門ではない先生でも他の検査のついでに行われて、前立腺がんの早期発見にも役立っています。もちろん場合によっては直腸診を行うこともありますが、泌尿器科を受診した男性患者さん全員に行われる検査ではありません。
そういえば、私が医師になった時の先輩で、直腸診の名人と呼ばれる人がいて「あのねえ、手袋して直腸診したら、微妙な感触がわかんないでしょ」と言って素手で行なっていました。その後、お子さんが生まれたら「あのねえ、素手で直腸診なんてしたらバッチいじゃん」としっかり手袋をする様になったとさ(笑)。その時と比べたら手袋も現在ではかなり進化しております。