「マヌカハニーの強力殺菌パワーで風邪を撃退」記事はかなり怪しげ。

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インフルエンザや風邪が流行する季節になると、怪しげなトンデモ治療方法がネット上に大量にあふれ出ることを風物詩的に鑑賞している今日この頃です。

ネットは怪しげな健康関連記事で溢れかえっています

先日、目にした蜂蜜の一種であるマヌカハニー(manuka honey)を食したことによってインフルエンザを一晩どころでなく、数時間で軽快させたとの体験記がありました。

この衝撃的な話はできれば症例報告として医学雑誌に掲載するべきです。

39度の高熱→ネットでマヌカハニーがインフルエンザに効く記事を見つけた→マヌカハニーを購入→マヌカハニーを食す→高熱が数時間で平熱に→マヌカハニーの殺菌力に感謝

という流れです。

でもねえ、

インフルエンザはウイルスであり殺菌力は関係なしですし、マヌカハニーなどの蜂蜜にインフルエンザや風邪の予防効果があったとしても、治療する力は無いの❗ということを強く主張したいと思います。

医学の素人であるライターさんに医学的なエビデンス提示を求めるような野暮なことはしません。

素人さんが書いたトンデモ医学記事をこれまた素人さんが読んで、その健康法というか治療法を信じてしまう危険性を強く訴えたいと思います。

マヌカハニーで風邪による高熱が数時間で下がった⁉

サプリメントの効果効能で「個人の感想であり、効果には個人差があります」 との表示を見かけます。

サプリメントの効果効能を宣伝することは薬機法違反になるために、苦し紛れにこのような表現が使用され、打ち消し表示と呼ばれています。

素人さんがブログ等でサプリの効果を書くことは、ステマやアフィリエイトじゃない限りあまりうるさく非難されることはないはずです。

しかし、今回の取り上げるトンデモ医学記事はれっきとした女性向けの情報サイトじゃありませんか❗

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andGIRL Official Site(https://www.andgirl.jp/0000015536?page=1

さらにこのトンデモ医学記事は統括プロデューサーさんによる体験記事となっているようです。

この統括プロデューサーさんは風邪で39度の高熱になった時に「インフルエンザにはマヌカハニーが効く」との記事をどっかのサイトで見つけ、高熱でフラフラしながらマヌカハニーを買いに近所にマヌカハニーを出かけたそうです。

↓  ↓  ↓  ↓  ↓

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前掲サイトより ねっ、高熱でフラフラしながらマヌカハニーを買いに行ってるでしょ。

でもねえ、次のような問題も発生してしまうのです。

インフルエンザにはマヌカハニーが効く、との記事は見当たらないんだよなあ⋯

お時間のある方は「マヌカハニー インフルエンザ」で検索してみてください。

マヌカハニーが風邪やインフルエンザの予防効果がある、との記事を見つけることはできても、マヌカハニーがインフルエンザを治すことを伝える記事は見当たりません。

私は

トンデモさんはどうやって医学健康情報を収集しているんだ??

との素朴な疑問を抱いてしまったのです。トンデモウォッチャー界隈の格言で「トンデモはトンデモを呼ぶ」ってのがありますが、トンデモさんの検索能力の恐ろしさを感じた次第です。

このトンデモ記事では夕方に38.8度だったのに、マヌカハニーをお湯に溶かして飲んだところ、なんと夜半には平熱に戻ったと書かれています。

これって偶然であり個人の体験記事なので医学的効果の信頼度n=1の症例報告レベル。

隣のおじいちゃんはヘビースモーカーだけど90歳になってもピンピンしているよ的な話と同レベルであることに注意しましょうね。

マヌカハニーは医学的に効果が無いとは言い切れないけど⋯

ナショジオワイルドだったかで、嵌頓包茎になった動物(犬だったけなあ、お猿さんだったっけなあ)の治療をした時に獣医さんが患部に蜂蜜を塗っている風景をみた記憶があります。

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https://natgeotv.jp/wild/lineup/prgmtop/index/prgm_cd/2063

確かに蜂蜜の殺菌効果は民間療法の範疇を超えて、ひょっとしたら標準治療の仲間入りが期待されていない訳ではありません。

例えば「Therapeutic Manuka Honey: No Longer So Alternative」(PMID: 27148246)などの医学論文でその殺菌効果や作用機序が報告されています。

マヌカハニーに殺菌効果があったとしてもインフルエンザはウイルスが原因であり、風邪であったとしてもその原因のほとんどはウイルスが原因。

ひょっとして

統括プロデューサーさんはウイルスと細菌の区別ができていない疑惑?

が生じてきます。細菌とウイルスの違いがわかっていない、との素人さんにありがちな大間違いを犯している可能性が大なのです。

情報サイトの責任ある立場である方の個人的な体験記事であったとしても、医学関連記事をお書きになるのであれば、せめて細菌とウイルスの違い程度はご理解いただいてからにしてくださいね。

マヌカハニーの医学的な効果は予防であって、治療ではない

CSの動物番組での獣医さんが嵌頓包茎の動物の患部に蜂蜜(マヌカハニーでは無かった)を塗ったのは感染予防であり、治療効果を狙ったワケでは無いはず。

腹膜透析の患者さんが使用するカテーテルから感染しないために蜂蜜を使用して、その殺菌効果というか予防効果を調べた医学論文があります。

「Antibacterial honey for the prevention of peritoneal-dialysis-related infections (HONEYPOT) : a randomised trial.」(PMID: 24119840)によれば、残念ながら蜂蜜を使用したグループの方がカテーテルの感染リスクが1.85倍高く、腹膜炎のリスクが2.25倍高かったとの結果になっています。

詳しくはこれをご覧ください。

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蜂蜜の殺菌作用を期待して医療現場で使用されているけどほんとに効果あるの?

かなり初期のブログなんでメインテナンスが必要、恥ずかしい(笑)。

そうなると

蜂蜜の感染予防効果もかなり怪しげ❗ということになりますね。ちなみにこの医学論文はランセット系の医学専門誌に掲載されていますので、それなりに信頼度は高いと思われます。

マヌカハニーがインフルエンザに効く、としても予防であって治療じゃないよ❗

蜂蜜やマヌカハニーの細菌感染に対する予防効果もちょいと怪しげになってきました。

細菌とウイルスの違いに関しては各自調べていただくこととして、果たしてマヌカハニーがインフルエンザに効くのか???とのそもそもの疑問に関する結論として、蜂蜜のインフルエンザ予防効果はまだまだ研究中なのです。

蜂蜜が健康に良いんだよ、との漠然とした効果(健康食品だから効果効能を明記できないからね)を訴求しているCMで有名というか目立つ山田養蜂場では蜂蜜の研究をしています。

蜂蜜のインフルエンザに対する効果はあくまで予防であり、さらに役立つ可能性があるよ、と伝えています。

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この研究は試験管レベルのものであり、ヒトに対するマヌカハニーのインフルエンザ予防効果を報じたものではありません。

andGIRLの統括プロデューサーさんはどのようなキーワードでマヌカハニーがインフルエンザに効く、との記事を見つけたのか、かなり気になります。

こんなことがトンデモ記事の最後に書かれています。

健康食品や健康法って、ホンットに人それぞれなので、全員に最高なんてものはないとは思うのですが、マヌカの殺菌作用はかなり強力だと思います! オススメ!

健康記事を書いた医学の素人さんが「個人的な体験はn=1であり、信頼できるとは判断されないの」と批判されないように打ち消し表示的な手法を用いているのでしょうけど⋯

最後の最後までこの方はウイルスと細菌の違いをご理解されていないようです<

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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