インフルエンザの流行にともなって民間療法でインフルエンザを予防しよう、インフルエンザを治そう、って人が出てくるのは、情報過多の現状では仕方のないことだと思います。
紅茶うがいするとインフルエンザになりにくい、との話がどんどん拡大解釈されて、いつの間にか紅茶を飲むとインフルエンザ感染予防になる、紅茶を飲めば飲むほどインフルエンザの発病が減る⁉というトンデモ臭プンプンの話が拡散しています。こんな記事を見つけてしまいました。
本記事の内容
驚愕報告!インフルエンザウイルスを15秒で無力化する「紅茶」の力
こっちの方が驚愕してしまいます。
著者の鈴木壯幸さんは三井農林株式会社R&Dグループグループリーダーとのこと。三井農林だとよくわからないけど、日東紅茶といえば誰でもご存知だと思います。
ほらね、日東紅茶は三井農林が取り扱っているんです(https://www.mitsui-norin.co.jp/products/nittoh-tea.htmlより)。
愛社精神および紅茶を愛する気持ちおよび紅茶がインフルエンザを予防する、あるいはご自分のインフルエンザの発症を抑える効果の研究を人に伝えたいのはよくわかりますが⋯。
紅茶がインフルエンザの予防や発症を抑制するとのお話、いっぱい疑問があります。
インフルエンザを即座に無力化したとしても、ヒトに対する実験じゃないし
紅茶のインフルエンザウイルスに対する効果がイラスト入りで説明されています。イラストの下の方に「効果は試験管での実験で確認」とあります。
いくら試験管レベルで効果があったも、人体に効果があるとは限らない❗
ある物質が病気に効果がありそうだな、と考えられても薬になるにはこんな手順が必要です。
紅茶がインフルエンザウイルスをやっつけたとしても、試験管レベルであると「前臨床試験」であり、これが新薬として発売されるとしたら⋯気の遠くなるような年月が必要ですし、多くの場合は脱落します。
紅茶がヒトのインフルエンザ感染を抑える、との研究もかなり怪しげ
さて本題に入ります。紅茶の飲用頻度が高いほど、インフルエンザの発病率が低い、と鈴木壯幸さんは驚愕している様子。でも
これって紅茶会社の社員のデータじゃん❗
三井農林の社員さんのインフルエンザ予防接種率の方が驚愕だけどね(苦笑)
これをベースにして、ワクチンを接種していない人のうち、紅茶の飲用頻度とインフルエンザの発症の関係を調べたのがこのグラフです。
このデータから、毎日紅茶を飲んでいるとインフルエンザを発症しない、との結論に至っているようです。
紅茶販売会社に勤務していながら、紅茶をあまり飲まない人が多い方が驚愕❗してしまいました(笑)
しかし、この場合、インフルエンザに感染して発病したのと確定診断はなされているのでしょうか?
紅茶がインフルエンザの予防になる、はさらに疑問点が出てきました
この記事の最後の方に謎の文章があります。
そうすれば紅茶ポリフェノールが常に口内に存在することになり、インフルエンザに対する備えとなることでしょう。
紅茶に含まれるポリフェノールがインフルエンザの予防や発症抑制に効果があったとしても、口の中を常にポリフェノールでいっぱいにさせることなんて可能なの???
紅茶ポリフェノールが常に口内に存在って何だ???
もしも紅茶が本当にインフルエンザの感染を予防するとしても、その前に紅茶に含まれるポリフェノールが果たして口腔内にどれだけの時間滞在するのかを明確にする必要があります。
さらに口腔内に存在するポリフェノールの濃度がどれくらいであり、その濃度でインフルエンザウイルスを撃退することまでを証明しない限り、紅茶がインフルエンザウイルスを無力化すると驚愕はできません。
今回お題にした記事、もっともっとツッコミができますし、ガッチガチに反論することも可能ですけど、最近とみにブログの文章が長い❗との苦情が増えているのでこのあたりでやめておきます。
米国国立衛生研究所(National Institutes of Healt 略してNIH)のウイルスを専門とする病理の先生のブログはガッチガチに追求しております。ぜひお読みくださいませ。
紅茶でインフルエンザの感染や感染拡大を防げるとのプロモーションについて
病理の先生って無条件に尊敬してしまう町医者の私。ほんちゃんの研究者を敵に回すと怖い、怖い。
先日、こんなブログを書きました。
ちなみにこの番組の内容も最終的には紅茶でインフルエンザ対策でした(苦笑)。紅茶業界の猛烈なメディア戦略恐るべしです。
追記:40万のフォロアーを持つ声優さんがこんなツイートしています。
先日、教えてもらいました!
紅茶すごい!
みんな紅茶飲んで予防しよう~https://twitter.com/Emiryun/status/1088715254668845056
影響力のある方なんで、今後の紅茶インフルエンザ予防説の拡散が心配です。