週刊新潮が興味深い記事を掲載しています。2019年1月31日号週刊新潮「食べてはいけない『超加工食品』実名リスト」 。
クオリティの高い医学専門誌「THE BMJ」に昨年2018年2月に掲載された「Consumption of ultra-processed foods and cancer risk: results from NutriNet-Santé prospective cohort」(PMC5811844)を元にした記事構成となっています。
フランスの研究者が書いた論文で手法として前向きの大規模コホート研究であるために、一見信頼度はかなり高いものであるはずなのです。
でもねえ、この医学研究っていくつかの点で結論を出すには早すぎる❗と元の論文を読んだ人は感じるはず。
英文であり、さらに医学用語が使われているため、一次ソースを確認するのは面倒❗という方のために、誰に頼まれたワケではありませんが、不肖五本木クリニック院長の私が元論文を解説します。
BMJの論文はなんでこんな結果になり、週刊新潮の衝撃的な記事は大切なことを記載していない点もあることを指摘させていただきます。
本記事の内容
超加工食品とは
聞きなれない超加工食品の定義を明確にしておきますね。超加工食品(ultra-processed foods)の定義は週刊新潮の記事によれば
- すぐに食べたり飲んだり、温めたりできる
- 非常に口当たりが良い
- 洗練された魅力的な包装がされている
- 健康的であることを謳っている
- 全世代に向けられたマーケティングが多方面に強く行われている
- 利益率が高い
- 国際的な企業によりブランド戦略が組まれて販売されている
となっています(2019年1月31日号週刊新潮「食べてはいけない『超加工食品』実名リスト
これじゃあ、どう見てもコンビニで手軽にゲットできる食品をロックオンした定義なんじゃないの、との素朴な疑問を抱いてしまいます。
単純にコンビニで手軽にゲットできる超加工食品はがんのリスクを高める❗との定義から導かれた結果を発表すればいいじゃん、なんて感じてしまいました。
発がんリスクが12パーセント上昇するとセンセーショナルに取り上げられている超加工食品ですが、そもそもその定義というか分類方法はNOVA分類という食品を分ける手法(昨年、この論文がちょっと話題になった時に初めて知りました)は4つのグループに分けています。
しかし、週刊新潮は前掲のように超加工食品は7つの分類方法を採用、この点に対してかなり疑問が出てきます。
NOVA分類は非常にシンプルなんだけどなあ⋯。
超加工食品を分別する基準となっているNOVA分類とは
NOVA分類を調べようと検索したら、国内留学で有名なNOVAばっかり表示されることはおいといて、こんなウェブサイトを参考にして見ました。
- Unprocessed or minimally processed foods 未加工食品あるいは最小限の加工を施された食品
- Processed culinary ingredients 加工食材
- Processed foods 加工食品
- Ultra-processed foods 超加工食品
やっと4番目に超加工食品が出てきます。
超加工食品に分類される食品はソフトドリンク・ポテトチップス・チョコレート・アイスクリーム・シリアル・チキンナゲット⋯ 超加工食品って、やっぱりコンビニで手軽にゲットできるものばっかりじゃんってことになるようです。
週刊新潮の記事でも「食べてはいけない『超加工パン」とかがワースト41として掲載されいますが、どう見てもコンビニのラインナップ❗
週刊新潮はコンビニ業界と何か揉め事でも抱えているのかねえ?
研究対象が大規模で信頼度の高いもだとしても、対象者が限定されいると結果はポンコツ⁉
なぜか週刊新潮は今回の元ネタとした論文の男女比を掲載していません。いくらフランスで前向きに2009年から2017年に10万人以上を対象とした調査であっても男女比は女性が78.3パーセント、男性が21.7パーセントとかなり偏っています男性の対象者が少ない影響なのか、この研究で超加工食品と前立腺がん、大腸がんは関連性が認められていません。
さらに対象となった10万人のデータはネットのアンケート調査によるものですし、一般のフランス人より教育レベルが高く、健康に関心が高いことが元の論文から知ることができます。
サンプルとして協力してくれたフランス人、特に女性の母集団はもともと偏ったライフスタイルを送っていることにより、誰でも当てはまる結果と判断するのはあわてん坊さんだよ。
さらにこのデータをそのままそっくり日本人に当てはめて良いのか、との疑問も出てきます。
さらにアンケート調査はこんな問題点も抱えています。二年の間に食べた食品のリストを平均にしてたった5.4回分提出する調査方法ってデータとして信頼度はどうなのよ❗さらにさらに超加工食品を食べていた人の傾向は若年者であり、喫煙者が多く、学歴が低く、運動をあまりしない人だったのです。
そうなると学歴が低い運動嫌いな喫煙者は超加工食品を食べている割合が多いとの結論も導くことができ学歴が低い運動嫌いな喫煙者はがんリスクが高い❗ってことになってしまうような気がしたのは私だけでしょうか?
超加工食品、既に大量に食べちゃった人はどうすりゃいいのよ❗
フランスのコンビニ事情を明確に示したデータを探しきれなかったのですけど、今回の論文で超加工食品と命名された食品類って誰がどう見ても砂糖が多く、高脂肪であり、高カロリーの食品になっていると思います。
週刊新潮は加工して、食品添加物が含まれるコンビニで手軽にゲットできる食品ががんのリスクを12パーセント高め、乳がんリスクが10パーセント増加すると記載しています。
私はこの元となった論文を読んで食品添加物によってがんのリスクが高まるは間違いであり正しい解釈は高カロリー食は、がんのリスクを高めるということであると解釈しました。
「がん」になってしまう因子は多岐にわたることが、医学的見地では常識です。ある特定の食材が発がんリスクがあることも常識です。
でも超加工食品を食べることによって「がん」のリスクが高まる❗これはまだまだ調査を続ける案件であり、「食べてはいけない『超加工食品』」を実名リストにするには、まだまだ時期尚早なんじゃないでしょうか?
毎週木曜日に発売される週刊新潮と週刊文春、部数的には週刊文春に遅れをとった週刊新潮の焦りは理解できますけど、50歳以上の読者が大半をしめる週刊新潮のインパクトのある記事は読者層を見誤っているんじゃないのかな。
だって今回の論文で対象となった人の平均年齢は42.8歳であって読者のほとんどは既にかなりの量の超加工食品を体内に入れてしまっている可能性が大。つまり週刊新潮の読者はこの論文の結論の対象にはならない可能性が大きいとも判断できます。
体内に取り入れてしまった超加工食品をコンビニの前を通るたびに恨めしく思っても後の祭りなんだと週刊新潮のファンであるジイさんに着々と近づいている中年後期の私は思わずにいられませんでした。
週刊新潮って好きな雑誌なんで、愛のムチ的に編集部にこんな指摘があるよって、届け〜❗