ウェブ上には健康や医療に関する情報が溢れかえっています。本当に健康に役立つ記事があったも、その内を十分に理解していないちゃっかりやのライターさんが寄せ集めた情報によって医学関連記事を仕上げてしまうと、酷い内容の健康関連記事になってしまうことが少なくありません。
いくら英語に堪能であっても、医学の知識に乏しいとこんなヘンテコな健康関連記事になってしまう悲惨な例を見つけてしまいました。
本記事の内容
役に立つ健康医学情報も医療を知らない人が記事を書くと⋯
MYLOHAS
医師が教える、食中毒と「おなかの風邪」の症状と見分け方は?
この健康関連記事の一次ソースは「Prevention」という雑誌で、プリヴェンションの意味は「予防」ですから日常生活のちょっとした注意によって病気を防ぐことができるよ、という内容の記事で埋められた、米国の元祖素人による病気対策雑誌とも言えるものです。医学の素人が編集した予防医学の雑誌であるから、全てが全て役に立たない医学的に間違ったトンデモ医学で埋め尽くされているワケではありません。
今回MY LOHASの記事とその元となったPreventionを読み比べてみると、
食中毒もおなかの風邪もノロウイルスが主な原因だったら症状は同じじゃん❗
との結果になってしまいます。
ある程度の信頼度のある英語で書かれた健康関連雑誌内の記事を、いくら英語に堪能であるライターが翻訳しても、医学知識に乏しいと奇妙な情報になってしまうのです。
食中毒とお腹の風邪を症状から見分けることは可能
食中毒とお腹の症状を中心とした風邪を果たして一般の方が日常の生活を送る上で知ることが重要なのか?という素朴な疑問はひとまずおいておきます。
MYLOHASの記事によれば食中毒の症状は
・胃の不快感・胃けいれん・吐き気・嘔吐・下痢・発熱
であり、お腹の風邪の症状は
・下痢・胃の痛みとけいれん・吐き気・嘔吐・ときには発熱・疲労感・極度の喉の渇き(脱水状態の場合)・頭のフラつき・頭痛または身体の痛み
と書かれています。
この文章というか情報を縦に読み流すと、「なるほどなあ」と一瞬は感じるかもしれません。しかし、よくよく読み直してみると食中毒とお腹の風邪の症状ってほとんど同じじゃないでしょうか?これではタイトルが伝えている症状から食中毒とお腹の風邪を見分けることは不可能ということになります。
元の記事の「食中毒とお腹の風邪を症状から見分ける方」はこう書かれています
一般向け健康雑誌「Prevention」の元の記事はタイトルからして、日本のMYLOHASとは大きな違いがあります。
Prevention
「Do You Have Food Poisoning or the Stomach Flu? Here’s How to Tell」
「あなたは食中毒または胃のインフルエンザ?それを教えます」というタイトルです。
ここに書かれている「Flu」はインフルエンザのこと。日本ではインフルエンザと普通に使われていますが、米国ではインフルエンザとは通常は使いません。
そもそも風邪とインフルエンザは厳密には違った病気でありますし、「お腹のかぜ」とmylohas中で書かれている病気は原文ではしっかりと「Stomach flu definition」との見出しを作って定義を明確にしています。
Stomach flu, medically known as viral gastroenteritis, “is a short-lived stomach disorder of an infectious cause attributed to a virus—most commonly noroviruses and rotavirus,” says Dr. Lee.
一次ソースには
胃のインフルエンザはウイルスが原因の胃の病気で、一般的にはノロウイルスとロタウイルスが一般的
と書かれています。定義をはっきりしないで健康や病気に関する話題を進めていくことは、トンデモ健康記事によく見受けられる手法です。
おなかの風邪、と呼ばれることが多い感染性胃腸炎の原因の日本でもほとんどはノロウイルスです。
原文の食中毒の症状は Upset stomach・Stomach cramps・ Nausea・ Vomiting・Diarrhea・Fever、胃のフル(ノロウイルスやロタウイルス)の症状は Diarrhea・ Stomach pain and cramping・Nausea・Vomiting・Sometimes fever・Fatigue・Extreme thirst (if dehydrated) ・Lightheadedness・ Headache or body achesとなっています。
両者の病気で大きく違う症状は⋯ほとんど同じじゃん❗
との結果にここまで読んだ時点ではなってしまいます。しかーし、MYLOHASのライターさんは意図的はうっかりミスか、あるいは英語があまり得意ではないかによって重要な点を書き漏らしています。
医学の専門家が本当に伝えたかった点はこれ
MY LOHASの記事には書かれていませんが「Prevention」にはこのようなことが書かれています。
Influenza is a virus that attacks your respiratory system and getting a flu shot will not prevent stomach flu. The name “stomach flu” is also misleading, because the virus infects and attacks your intestines, not your actual stomach.
- インフルエンザは呼吸器の病気
- インフルエンザの予防接種を受けていても胃のインフルエンザは防げない(ノロウイルスのワクチンはありませんから)
- 胃のウイルスは胃ではなく腸に感染している
- 胃のインフルエンザとの言葉は誤解を招く
これがこの健康関連記事のインタビューを受けて、医師が本当に伝えたかったことだと私は判断します。
そもそも風邪との医学用語は存在しません。風邪をちょっと医学用語っぽく述べるときは「感冒」という名称になるのですが、その感冒の定義は「鼻、副鼻腔、のどの粘膜に起こるウイルス感染症」とメルクマニュアルには書かれています。
風邪は呼吸器系のウイルス感染症
ってことですね。
一方でMY LOHASの元ネタに書かれいる「the Stomach Flu」をノロウイルスやロタウイルスであると解釈しても変なことになってしまいます。食中毒の原因はウイルスと細菌です。
厚生労働省の食中毒統計を基に福岡県保健環境研究所が作成
今回の最重要ポイントは「おなかの風邪」という表現は日米ともに医学的には誤解を招くこと
です。
いくら医学の専門家が懇切丁寧に病気について語っても、それを取材した人の医学知識が貧弱であり、英文で書かれた一般向け健康関連記事を英語に堪能である、あるいはGoogle翻訳を使って日本語の健康関連記事に仕上げてしまうと、結果的にトンデモ医学記事になる傾向がある、ことが多いことを知っていただけたら幸いに存じます(笑)。