私が定点観測している自然派拗らせた方向けの情報サイト「IN YOU」中で新年早々にトンデモ医学というか、間違った医学情報を堂々とご披露されている薬剤師さんを発見してしまいました。
本記事の内容
薬を使わない薬剤師さん、子供の免疫力をあげる記事のここがかなりヘン❗
どんな業界であっても一定数のバグが存在してしまうのは仕方の無いこと。しかし医学的に明らかに間違っている情報を垂れ流すウェブサイトがネット上に散見されます。子育て中のママ向けのいわゆる「ママサイト」方面で激しくトンデモ医学情報を垂れ流すサイトや記事を書いた人の目的もかなり気になってしまいます。
今回取り上げるトンデモさんは「薬を使わない薬剤師」をウリにした方がマクロビ信奉者が運営している「IN YOU」に掲載されている「子どもにワクチンを受けさせたくないと決めたなら。子どもの免疫力をあげるために今すぐできること5つ」のどこがどのようにトンデモであり、ある意味では危険なニセ医学情報であるかをご説明してまいります。
そういえば、薬を飲まない薬剤師さんというヘンな人もいましたっけ。
医師でもトンデモはいますが、今薬剤師さん方面がかなりキテいいるようです⋯。
インフルエンザワクチンの効果が定かでない、そして身体に有害であることの根拠は???
薬を使わないと称する薬剤師さんはこのように述べています。
ウイルスが空気中に存在していても、症状を発する人と発しない人がいます。この違いは「免疫力」にあることに気がついたためです。そして、その免疫力は自分でつけることができます。薬局では6年間、毎年冬には毎日数人のインフルエンザの患者に指導をしていましたが、インフルエンザにかかったのは多忙で疲れていた1年だけ。
ゆえにワクチンを打つ必要性が無い、との主張です。私は医学情報に関して、「エビデンス、エビデンス❗」って言うのも少々大人気ない対応と近年考えることもありますが、これは流石に問題発言満載です。喫煙問題に関して「うちのジイちゃんはヘビースモーカーだけど、90才すぎてもピンピンしている」と同じレベルの主張です。
さらにこの薬を使わない薬剤師さんはウイルスによる感染経路に関しても、もう少しお勉強が必要なのではないかな?ウイルスが空気中に存在していても感染は成立しませんぜ、さらにインフルエンザの多くは飛沫感染であり近年若干空気感染もするのではとの研究も出ていますが、主たる感染経路は飛沫感染です。
さらにマクロビの理論なのか、ヘンテコな自己啓発本の影響なのか、ヤバイ方面のスピチュアル系セミナーの影響なのか薬を使わない薬剤師さんはトンデモ系の主張をしています。
ワクチンを打たなくとも、免疫力を上げることを意識すると、ウイルスに触れても症状を発症することはありません。自分の子供にも1本もワクチンは打たせていませんし、今後も打つ予定はありません。先日1歳の誕生日を迎えましたが、あちこち連れ回していても発熱することも一度もなく、今のところ元気に育っています。
インフルエンザに対抗する免疫力って意識することによって上がるんでしょうか?
免疫力ってどんな風に意識すると、どのような免疫力のパラメータが上昇するのか気になります。
ひとさまの子育て方針に口を挟むのは厄介なトラブルの誘因になることは、自分自身で体験している私としては、自分の子育て方針はこうである、だからお宅の子育てもこのようにするべきだ❗と堂々と提唱する薬を使わない薬剤師さんの勇気には感動さえおぼえます。
いくら自分がインフルエンザに罹らなくても、ご自分のお子さんが罹らなくても、たった1症例にすぎません
医学における信頼度、あまり使いたく無いのですけどエビデンスレベルと言うものがあり、この薬を使わない薬剤師さんの主張はうちのバアちゃんは漬物に醤油をたっぷりかけまわしているけど、低血圧だよ❗レベルのエビデンスレベルとしてはかなり信頼度の低いものになっています。
何を根拠にインフルエンザワクチンの効果に疑問を持ったのか?
ワクチン接種をするか、しないかに関してお悩みの方の多くが、薬を使わない薬剤師さんが、ご自分、あるいはお子さんがワクチンを打たないでもインフルエンザに罹らなかった、との話の医学的な信頼度の低さはご理解いただけたと思います。この薬剤師さんはインフルエンザワクチンの効果に関して大きな間違いをしています。ある意味でインフルエンザワクチンの効果を知らずに薬剤師業務を遂行していたとしたらそれはそれで怖い話なんですけど。
まずインフルエンザワクチンの効果は感染を防ぐことは主な目的ではありません。
インフルエンザワクチンの効果は発症を防ぐこと
インフルエンザに感染して怖いのは高熱が出ること、全身倦怠感が強く心身ともにクタクタになることもあるのですがインフルエンザ感染によって肺炎を合併して、死に至る場合もある点なのです。
薬を使わない薬剤師さんの元ネタというか参考文献は一般書籍が多いようですが、医学論文としてこのようなものがあります。日本の研究者による「The effectiveness of trivalent inactivated influenza vaccine in children over six consecutive influenza seasons」(Vaccine. 2011 Feb 17;29 (9) :1844-9)によればインフルエンザワクチンを接種していた子供と接種していない子供を比較した場合、入院リスクと呼吸器系の病気のリスクに大きな違いがありました⋯当然、ワクチン接種を受けた子供の方が入院リスク、呼吸器系の病気のリスクが減少していました。
成人の場合のインフルエンザワクチンの有効性を示す医学論文として2018年、つまり昨年に発表された信頼度の高いものがあります。「Prevention of influenza hospitalization among adults in the US, 2015-16: Results from the US Hospitalized Adult Influenza Vaccine Effectiveness Network (HAIVEN) 」(J Infect Dis. 2018 Dec 14.)。
これによるとインフルエンザワクチンを接種していると入院リスクが半分近く減ることがわかっています。真っ当な医学研究によってインフルエンザワクチンの有効性は古くから明らかになっていますが、近年のさらなる研究によってもワクチンの有効性が揺らぐことはありません。
薬を使わない薬剤師のような方がワクチン否定をする方面の主張として、ワクチンの有害性があります。明らかに有害なワクチンが世界中の国民の健康を司る行政あるいは医療業界が果たして推奨することってあり得るのでしょうか???ワクチン有害説の根拠ってどこにあるのでしょうか???
ワクチンに含まれる水銀が原因で自閉症やアルツハイマーになる???
根拠のない、時には害にもなってしまう医学情報を垂れ流してきた医学健康関連サイトが数年前に社会問題化しました。それ以降、医学情報を記載するウェブサイトの多くが引用先、参考文献を表示するように注意する傾向が見受けられます。
医師であろうと薬剤師であろうと専門家が記載したとされる医学健康関連サイトは、一般人が個人的にブログやソーシャルで発信する情報よりも信頼度が高いと普通は受け止めます。「IN YOU」もその辺りを考慮して「薬を使わない薬剤師」さんの記事を掲載していると思われます(まあ、医師監修をウリにしてた医学健康情報サイトの酷さも近年話題になりましたっけ)。
薬剤師さんもプロ、私も一応プロなんで、プロっぽい指摘をさせていただきますね
こんなことが書かれています。
ワクチンの中にはこのアジュバントとして水酸化アルミニウム懸濁液といったアルミニウムが含まれているものが多く、アルミニウムは子供の自閉症やアルツハイマーとの因果関係が報告されています。
アルツハイマー発祥の根拠として「The solubilization of model Alzheimer tangles: reversing the beta-sheet conformation induced by aluminum with silicates」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/7972040?dopt=Abstract)を引用元としていますが、この論文は1994年に発表されたものであり、あくまで研究レベルのアルツハイマー発症の可能性の話であり、疫学的な根拠の高い報告は追加報告はされていません。
さらにワクチン中のアルミニウムが自閉症の原因であるとの与太話は「Ileal-lymphoid-nodular hyperplasia, non-specific colitis, and pervasive developmental disorder in children」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9500320)は多分この論文をどっかのウェブサイトか一般書籍かで拾い読みしたものなんじゃないのかな?この論文って学問の世界では非常に恥ずかしい「RETRACTED ARTICLE」つまり「撤回」処置になっていることをご存知なんでしょうかねえ⋯。
この論文を発表したウェイクフィール医師はその後医師免許を剥奪されています。さらにこのヘンテコなある一定方向の考えに取り憑かれた医師の論文が主張するところのワクチンと自閉症の関連性は「Vaccines are not associated with autism: an evidence-based meta-analysis of case-control and cohort studies.」(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24814559)によって綺麗さっぱり否定されています。
常識的な医学情報としては、ワクチンと自閉症の関連性は否定されています❗
このトンデモというか、なにがしかの方向性を持った薬を使わない薬剤師さんの医学情報はブラッシュアップされていないか、論文を読んでいないか、ワクチンに否定的な一般書籍何でしょうねえ、多分。
結局のところは自然派への誘導じゃん
ワクチンは効果がない、ワクチンは有害だ❗だからワクチンを受けさせない、と述べている薬を使わない薬剤師さんが理想とする免疫力を高める方法が噴飯ものであり、さらにある一定方向への強力な誘導となっています。
- 布おむつで免疫力が高まる
- 母乳育児で免疫力が高まる
- エアコンを使用しないことで免疫力が高まる
- 除菌をしすぎないことのよって免疫力が高まる
- 薬に頼らないことによって免疫力が高まる
など、など様々な方向からツッコミどころ満載のことをおっしゃっているようです。「親が正しい知識をつけることが何より大切」と締めの言葉を述べていますが、それそっくりそのまま薬を使わない薬剤師さんにお返ししますね。