医療情報はネット記事のタイトルや広告に惑わされがちなので注意が必要です❗

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医療系の記事を読むときに注意が必要なのが、とにかく全文読むこと。

タイトル、見出しって呼ぶのかな、あれに目をさらっと通しただけで内容を理解したような気になってしまうのは将来的に問題が発生します。

ノーベル賞を「免疫療法が獲得❗」は大きな誤解を招いています

しつこいようですが、2018年にノーベル生理学・医学賞(ノーベル医学・生理学賞との表記もあり。正式には生理学が前)を日本人の医学研究者本庶佑教授が受賞したことをあたかもがん免疫療法が受賞の理由とも読み取れる報道に対してこんなブログを書きました。

がん免疫療法がノーベル賞を獲得❗この表現は誤解を招き、怪しげなクリニックを歓喜させる可能性が!

がん免疫療法がノーベル賞を獲得❗この表現は誤解を招き、怪しげなクリニックを歓喜させる可能性が!

私が懸念していた事態が早々に起きてしまい、追記をさせていただきました。このがんの免疫がらみに関する医療機関のサイトに対して、医学に携わるものとしては書きたくても書けなかったパワーワードを使用したこのような記事があります。

コラム その検索は「死の商人」を召喚する

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このような辛辣な評価もネット検索の問題点として、医療関係者のモラルが問われているのです。

あのBuzzFeedが報じたノーベル生理学・医学賞でさえ、こんなに歪められてしまいます

媒体の好き嫌いはあるでしょうが、少なくとも医学関連記事に関しては綿密な取材の上で記事にしているバズフィード特にバズフィードメディカル(正式にはBuzzFeed Japan Medical)は医療関係者の中では高く評価されています。私は常々一次ソースを確認することの重要性を伝えているつもりで、新聞記事の斜め読みを危険視しています。これはバズフィードメディカルではなく、バズフィードの一般記事専門の記者さんが報じたもの↓

「ネイチャー誌、サイエンス誌の9割は嘘」 ノーベル賞の本庶佑氏は説く、常識を疑う大切さを。

この記事を転載したYahoo! JAPANニュースではこんなタイトルのトップになっちゃいます↓

科学誌9割はうそ 本庶氏説く

まあYahoo!の記事を読めばバズフィードが伝えたかったことは十分理解できるはず(だって、記事の内容は同じだから)。しかし、このYahoo!ニュースをツイッターで拡散するとこんな感じに↓

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これだけ読んだ人はノーベル生理学・医学賞受賞の本庶佑教授は科学誌はウソを9割も掲載している、って解釈してしまう可能性が出てきます。

タイトルや見出し、小見出しだけを読むことはそれこそ死の商人を召喚することにも繋がってしまうのです。

検索が「死の商人」を召喚するとは、どんなことなんでしょうか?

多分、ショッキングな「その検索は『死の商人』を召喚する」はノーベル賞絡み、免疫療法絡みのキーワードで検索しても検索結果に現れないと思います。この記事には重要なことが書かれていますので、お時間のある方、家族ががんと診断された方、ご自身ががん闘病中の方はぜひタイトルだけではなくしっかりと本文をお読みいただければと思います。

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免疫療法で検索すると画面トップに広告が表示される→表示される広告の中には詐欺的な文言が並んでいる→必死で生きたいと手段を検索している人に悪影響→人の命を金のためにもて遊ぶ輩がいる→それが「死の商人」である

ということです。

なぜこのような問題が発生するか?

ここからは理屈っぽい話になりますので、飛ばしていただいて問題ありません。

死の商人、というショッキングなパワーワードを目にしてしまった私はかなり動揺しています。多くの医療関係者が「インチキ治療」「ニセ医学」と酷評していても、医学的根拠のない治療方法が蔓延っているのはなぜでしょうか?それはネット広告だけの問題なのでしょうか?なぜどんながんでも治ってしまうような表現にヒトは引き寄せられてしまうのでしょうか?

医師は医師である上で大きな力とともに多大なる責任を負わされています。それは医師の裁量権です。この医師の裁量権を拡大解釈すると、自分は医師免許を保持している故に自分勝手な治療を推奨してそれを患者さんの提供しても構わない、ということになってしまいます。逆になんでもかんでもEBM(Evidence-based Medicine 根拠に基づいた医療)の指針であるガイドラインにそって治療してしまうことが果たして正しい医療なのか、との疑問も出てきます。

疫学データが蓄積されることは重要なことです。最終的に一番信頼度が高い研究はランダム化比較試験のメタアナリシスですが、これを医学知識の無い方に伝えることは、ただひたすらデータの提示にしかならない場合も出てきます。

医師にとって大切なことは裁量権を振りかざすためには「良心」がもっとも重要なのではないでしょうか?医師の裁量権を重要視するならば、その前に医師は常に正しい医療情報を患者さんに提供することが義務だと考えます。

話は戻りますが、本庶佑教授が伝えたいことは

自分の頭で考えて、納得できるまでやるということです

であり

研究者になるにあたって大事なのは「知りたい」と思うこと、「不思議だな」と思う心を大切にすること、教科書に書いてあることを信じないこと、常に疑いを持って「本当はどうなっているのだろう」と

だと解釈しました。believer(信者)ではなく、常にskepticism(懐疑主義)を大切にしよう❗ということです。

私はskepticism(debunker デバンカーという言葉が個人的には好き) を忘れずに微力ながら正しい医療情報を発信し続けます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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