立ちくらみは市販の貧血改善薬じゃ治らないよ⁉

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患者さんの症状の伝え方が医師の解釈する病状と違っていることは日常茶飯事です。

例えば

「先生❗先週から腕に蕁麻疹が出まくってかゆい❗」

という患者さんの症状が医学用語的には湿疹であったり、接触性皮膚炎であったりします。

立ちくらみの原因って貧血じゃないこと多いです

蕁麻疹と湿疹の違いに関しては各自調べていただくとして、薬剤師界の論客高橋秀和さんのBuzzFeedの記事がとても役立つものだと考えて、ちょっくら乗っかってみますね。

BuzzFeed Japan Medical「立ちくらみに鉄剤は効果的?」

この記事中の漫画がうまく状況を一般の方に伝えているのですけど、高橋さんがOKであったとしても、BuzzFeedが太っ腹であったとしても、漫画をお描きになった方の著作権(?)を侵害したくはないので、リンク先でご覧くださいませ。

患者さんがたちくらみの症状を貧血と訴えても、それは起立性低血圧であることがほとんど

であることは多くの医師が経験しているはずです。でも市販薬の場合、たちくらみの薬として鉄剤が中心成分となったものが広告されているよね。例えば下手すりゃ私が悪質クレーマーにもなりかねないほど批判を繰り返している小林製薬の貧血に1日1回の服用で効くファイチ

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これは明らかに貧血の症状として「たちくらみがする」とアピールしております

小林製薬のファイチって本当に立ちくらみに効果があるのかな?との素朴な疑問に関して追求および検証してみますね(これって悪質クレーマーかなあ?)。

そもそも貧血の症状はこのようなものが代表的です

医学的に貧血と呼ばれているものは

●鉄欠乏性貧血

●再生不良性貧血

●悪性貧血

●溶血性貧血

の4種類が代表的です。この中でファイチのような鉄剤が効果を示すのは鉄欠乏性貧血であり、その他の貧血の場合はセルフメディケーションで治療するのはかなりリスキーで、医療機関に受診するべきです。

ファイチで改善できる可能性のある鉄欠乏性貧血であっても

貧血において、過去に血液検査を実施しているかどうか、婦人科での相談ができているかは重要なポイントです。鉄剤による吐き気・食欲不振の可能性もあり、この時期の立ちくらみに鉄剤を推奨するかどうかは、薬剤師・登録販売者によって意見が分かれるだろうと思います。

と高橋秀和さんの記事には書かれています。

立ちくらみの原因が貧血、貧血の治療には鉄剤

と自己判断、自己治療をすることはやっぱりリスキーなんじゃないでしょうか?鉄剤飲んでも立ちくらみは多分改善しないでしょうし、必要以上にヘモグロビンが上昇してしまうようなリスクもありえます。

貧血改善薬「ファイチ」は手軽にネット通販で購入できますけど⋯

処方箋を必要としない薬、いわゆる市販薬の中でも薬剤師さんが在籍していないと販売できないものがあります。処方箋を必要としない市販薬(OTC) がネット通販で気軽に購入できるという利便性はそれなりに評価できます。

一方で副作用の心配もあるのでOTC全部が全部ネット通販で購入できるのは問題あり、と考える方もいます。市販薬は第1類医薬品、第2類医薬品、第3類医薬品に分類されていてhttps://www.daiichisankyo-hc.co.jp/health/knowledge/otc/type.htmlによればネット通販が許されているのは第一類医薬品に限られています。

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でもさあ

小林製薬の貧血改善薬ファイチはネット通販で売られているのはなぜ?

医薬品のネット通販に関しては医師の間でも賛否両論、薬剤師さんの間でも賛否両論です。

先程の第一三共のサイトでは第一類医薬品のみネット通販が「可」となっていました。でも、このサイトでは

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まあ一番信頼性が高いと考えられる厚生労働省によれば

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https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201405/1.htmlより 平成26年6月12日から医薬品のネット販売のルールが変わったのですね。そうなるとなんで第一三共のサイトはいまだに古い情報を掲載しているのかという素朴な疑問もでてきます。検索エンジンって公的な病院が上位に表示され、その次は製薬会社のサイトと今では考えられているのですけど、権威はあっても情報が正しいとは限らないという問題も発生しているわけですね。追記:私の表の見方が間違っていたようです。第一三共の表は一般医薬品はネット通販可ってことでした、横線が薄くて老眼の私としては見誤りました、ゴメンナサイ第一三共様。

立ちくらみがした、薬局に薬を買いに行った。そんな時はできるだけ薬剤師さんに相談したほうが的確な薬を選んでくれるし、ひょっとしたら立ちくらみは貧血によるものだから鉄剤の薬を飲めば治っちゃう、との考えが間違っていることを教えてもらえるのですからね。

つまり、BuzzFeedの記事中にある「薬剤師さんを積極的に活用しよう」ってことになると思います。薬剤師さんは

医薬品に関する専門家として、皆さんの健康管理や治療を行ううえで、きっと力になってくれるはずです。

そんな環境を作るためにも、BuzzFeed上で高橋さんは

生活圏で信頼に足る薬剤師を見つけたら、親しくお付き合い頂ければと願っています。

と述べています。

日本の医療制度を賢く使う一つの手段はこれ❗

やっぱり市販薬のネット通販はこんな感じで規制されています。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sinseido.pdf気軽に手に入れることが可能であっても、万が一健康被害なんてことが起きないように規制されているのでしょうけど⋯海外では市販薬はもちろんのこと日本では処方薬とされていて医師が処方箋を書かないと手に入れることができない薬も簡単にネット上で購入することができます。

医療制度や医療に期待するものは国々によって違いがありますので、どれが正解でどれが間違いと簡単に判断することはできません。医師の長時間労働問題や病院の待ち時間問題などなど日本の医療制度はまだまだ改善改良できる点がたくさんあります。医師の中には「風邪くらいで医療機関を受診しないでほしいなあ」って意見も出ています。

今ある日本の医療制度を賢く利用する一つとして「調子悪い時は信頼できる薬剤師さんに相談する」というのもいいことなんじゃないかなあ、間違いなく素人が運営している健康関連サイトなんかに相談するよりはね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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