トキソプラズマという感染症があります。有名な感染源は猫ですが、全ての哺乳類や鳥類に感染する可能性があり、いわゆるジビエはさらに感染している可能性が高いと考えらえています。
先日、某有名女優さんが妊娠中にローストビーフを召し上がっている件がネット上で話題になったのも、このトキソプラズマ感染のリスクが否定できないからでしたね。
本記事の内容
トキソプラズマに感染すると起業家になると言う医学論文があるんだけど⋯
「トキソプラズマは生肉の表面なのでローストビーフは大丈夫」「私も妊婦ですけど気にせず生物食べてます」→全て不適切なので、両論併記かのようなスタンスで記事を書かないでください。
佐々木希、ローストビーフディナー公開で「妊婦は生肉ダメ」「我慢して!」と指摘殺到 https://t.co/eYDK1gs17k— 宋美玄?子宮体がん検診は実は不要です (@mihyonsong) April 18, 2018
ここでリスキーと語られている
トキソプラズマに感染していると、起業家精神が旺盛である
と解釈できる医学論文が登場しました。
元となった論文を読んでみると⋯なんでトキソプラズマなんだ?
多くのメディアに掲載された
トキソプラズマに感染すると起業家精神が旺盛である
説を述べた医学論文はこれです→「Risky business: linking Toxoplasma gondii infection and entrepreneurship behaviours across individuals and countrie」(THE ROYAL SOCIETY)
トキソプラズマに感染していると起業する傾向があるとのことらしいです。ここでそもそも的な素朴な疑問が噴出してきました。
なんでトキソプラズマと人間の行動を結びつけた研究をしようとこの人たちは考えたのか?
です。これ、私の勉強不足なんでしょうけど、ここ最近トキソプラズマと感染症以外の病気との関係についての論文が盛り上がっていました。
統合失調とトキソプラズマ感染症との深い関係?
精神科系の疾患に関しての研究の一つとして、トキソプラズマ感染と統合失調症の研究が行われてます。
この「Latent toxoplasma infection in real-world schizophrenia: Results from the national FACE-SZ cohort」(Schizophr Res. 2018 May 27)によると
トキソプラズマ感染が脳の様々なシステムに影響を与えていて統合失調症の発症と関連している
といった内容のことが述べられています。さらに
トキソプラズマと交通事故の関係を調査した研究さえあります
交通事故とトキソプラズマってあまりにも唐突なように感じられますが「The potential risk of toxoplasmosis for traffic accidents: A systematic review and meta-analysis」(Exp Parasitol. 2018 Jun 12;191:19-24.)によればトキソプラズマに感染するとその宿主である人間の行動に影響を与えている可能性があるので交通事故を起こしてしまうかも的に調査をしたようです。これって考えてみるとかなり怖くて「寄生虫が人間に取り憑くと、その人の行動に影響を与える⋯
まさに寄生虫に本体を操られている可能性が出てきちゃうのです
寄生虫が人サマの行動を操るような内容の映画ってたくさんありましたね。なぜか前掲の論文は本年2018年に投稿されていますが、トキソプラズマと人間の行動の研究は以前からささやかれていたようなです。
トキソプラズマが人間を操る⁉
トキソプラズマを寄生虫と考えるとまさにパラサイトが人様を操ってしまうというホラー映画顔負けの状況となりますね。こんな記事を見つけました。
ナショナルジオグラフィック「トキソプラズマが人の脳を操る仕組み」より
ナショジオには
チェコの進化生物学者ヤロスラフ・フレグル(Jaroslav Flegr)氏は、大胆な主張によってここ1年ほどメディアの注目を集めている。トキソプラズマというありふれた寄生虫が、われわれの脳をコントロールしているというのだ。 トキソプラズマは通常はネコに寄生する。巧みな戦略をとることで知られ、ネコからネコへ感染するのにネズミを媒介とし、寄生したネズミの行動を変化させてネコに食べられやすくすることで新たな宿主に乗り移る。
とスッゲー怖いことをさらっと書かれています。この記事が書かれたのは2013年1月23日ですから
かなり以前からトキソプラズマが人間の行動を左右する可能性が知られていたというか、その可能性を探る研究が行われていたのですね。さらに
トキソプラズマがネズミの恐怖感を低下させ、ネコに食べられやすくすることを知っていた同氏は、自身もまた少し前から恐怖心が鈍くなったことに気づいていた。「道を渡っていて、車にクラクションを鳴らされたのに飛びのかなかった」のだ。そこでフレグル氏は考えた。これはトキソプラズマが原因ではないだろうか?
とも書かれています。これは前掲のトキソプラズマに感染していると交通事故を起こしやすくなるという医学研究の発端とも考えられます。
トキソプラズマに感染していると無茶をやる、って解釈も成り立つわけで⋯
トキソプラズマに乗っ取られた人の行動はひょっとして恐怖心が弱くなってしまうと考えてみると、トキソプラズマに感染した人は起業家になりやすい、との説もなんとなーく理解できてしまいます。以前、男性の指の長さによって稼ぎが違ってくるという話がありました。薬指が人差し指より長い男性(ちなみに私もそうです)はトレーダーとして大儲けをする率が高いというものです。胎児期にテストステロンを十分に浴びた人は人差し指より薬指が長くなり、大人になってトレーダーとして活躍すると他の人と比較して大もうけをすることが多い、これはしっかりと医学論文となっています→「Second-to-fourth digit ratio predicts success among high-frequency financial traders」(PMC2626753)。
でも大もうけをする人って大失敗をする可能性も高くなることもあるんじゃないの?については世の中ではあまり話題になっていないようです。
関連ブログ
今回のトキソプラズマに感染していると、起業家を選択する人が増える→大もうけ、あるいはお金持ちになる可能性が高くなる、とも考えられます。でも将来起業家になりたい、あるいはお金持ちになりたい人がトキソプラズマにわざと感染したから夢が実現するとは限らないかもしれません。なぜならトキソプラズマに感染していう人って世界中の人口の3分の1と言われていますから(国立感染症研究所「トキソプラズマ症とは」による)⋯。色々な切り口がある人間の行動様式、それも世界中で多くの人が感染している可能性のあるトキソプラズマですから、色々なデータをつまみ食いすれば、かなり面白いというか多くの人の興味を引く研究論文も書けるんじゃないかな、なんて印象が若干ないわけではない私でした。