玄米は体にいい、だけどあまり好きじゃない、美味しくない、白米最高、といったお話はありふれてますが、一部で玄米には毒があるという説がながれているようです。
玄米は農薬が残っているから危険、といった話ではなく、なんと玄米毒なるものがあるというのです。これは見過ごせません。玄米毒について調べてみました。
本記事の内容
玄米食は体に良いそうですが、玄米には毒があるんですという話は本当か?
少なくとも私の見渡す限りでは玄米食ブームが起きています。
きっかけは津川友介医師が書かれた「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」です(私の周囲では確実にコレが発火点)。
難しい英文の医学論文を精査して、現時点で健康に良いと判断できる食事を一般の方でもわかりやすいように解説した名著です。例えばこの本の中で書かれている
茶色い炭水化物はダイエットに有効=白米より玄米という衝撃的な話を聞いて、明日から玄米食にしようと決心したオッサンが多数出現したわけです(その根拠となる論文が「Changes in whole-grain, bran, and cereal fiber consumption in relation to 8-y weight gain among men.」Am J Clin Nutr. 2004 Nov;80 (5) :1237-45.など複数あり、小うるさいオッサンも黙るようなエビデンスが示されてる)。
糖尿病になることを心配して白米から玄米食に変えた人もいます。「White rice consumption and risk of type 2 diabetes: meta-analysis and systematic review」(BMJ 2012;344:e1454)にあったグラフをこのように元論文のグラフよりわかりやすく表示して糖尿病と白米の関係を教えてくれる良書です(Kindle版「第3章 体に悪いという科学的根拠がある食べ物」より)。
これが元論文のグラフ。これじゃあ、わかりにくいのですよね。
私のように疑い深いヤツにも便利な引用論文が全て記載されている点がそこらに出回っている健康本との大きな違いです。もっともらしい話を学会誌に掲載されました的なことが書かれている健康本の元の論文を見つけるのにはかなり時間とテクニックを必要とされることがあります。なかには学会誌というよりは同人誌レベルのものもあります。
今回、私の周囲で広がっている玄米食に対して水を差すようなご意見をいくつかネット上で見かけました。
なんと玄米には毒があるとの説が出回っています❗
毎日毎日せっせと玄米を食べているオッサンは真っ青。本当に玄米には毒があり、その毒とはどんな物質であり人体にどのような作用(当然毒なんだから悪い作用)があるかを調べてみました。
ここで白状しますが私は今まで玄米なんて大嫌いでした。理由として堅いし臭いし、へんにオーガニックを拗らせた自然派さんが好む食材が玄米であることも大きく影響しています。
参考資料:玄米は毒があるどころではなく、放射線被害から救ってくれるとの話もあります。
これは科学的に考えてありえないトンデモであり、玄米を熱狂的にありがたがる一群が存在していることが理由なのかもしれませんね。玄米に毒がある、玄米はめちゃくちゃからだによく放射線被害さえも予防できる、どっちもどっちで非科学的非医学的な両極端なご意見だと判断しています。
玄米に含まれる毒はアブシジン酸とフィチン酸と特定したぞ❗
私のように今まで玄米を嫌っていた人でも、玄米って毒があるから避けていました〜、って人はゴクゴク少数なのでは。「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」ブームに乗っかって「あの本は間違いだらけだよ、玄米って体に悪いの、だって毒があるんだもん」的な花火を派手に打ち上げて、それに伴って他の健康法や食材やサプリメントとかを販売しちゃう手口だと考えていました。
ところがどっこい、以前から一部の方達によって玄米毒なるものが話題となっていたのです 玄米毒という呼び方もその界隈では使われていますので、以後は玄米毒を使用していきます。
科学的根拠の乏しい界隈で玄米毒とされているのはフィチン酸とアブシジン酸です。
どちらも一般の方には聞きなれない言葉だと思います(っていうか私もはじめて知った)。このフィチン酸がどんな悪さをするかというと、金属イオンと強く結びつくことが知られていて、そのために玄米や食事に含まれるミネラルを吸収してしまうのでは無いかと考えられていることが原因です。
まあこの金属イオンを吸着する性質があったとしても、食事に含まれる全てのミネラルを吸収してしまうことも無いでしょう。逆に金属イオンを彼ら彼女らが好んで使うデトックスしてくれるようにも思えます。
フィチン酸より悪者にされているのがアブシジン酸です。多くの玄米毒を流布しているサイトでも玄米に含まれる毒と言ったらアブシジン酸ってことになっている模様。
この玄米毒中の毒であるアブシジン酸が本当に人体に悪影響を及ぼしているのかに言及します。
ちなみに津川先生の著作では白米とがんの関係は明確ではないと書かれています。
玄米毒の主犯であるアブシジン酸、お前は本当に悪者なの?
アブシジン酸にとって辛いのはアブシジンさんは発芽を抑制する原因として知られているからです。この植物が発芽することを抑える、発芽抑制因子のアブシジン酸が必ずしも人体にとって毒であるとは限らないと思い、色々な情報を集めてみました。その結果⋯
アブシジン酸は毒であるは冤罪の可能性があるんです。そもそも玄米におけるアブシジン酸の役目はある条件を満たさないと発芽しないようにコントロールすることです。そのために発芽抑制因子と呼ばれているのですね。玄米を生で食する人はいないとは思いますので、普通に玄米を食用とするときは必ず火を通すことを前提として話を進めます。
玄米の毒と言われているアブシジン酸の弱点は熱です。
つまり玄米食として食べるときはすでにアブシジン酸は綺麗さっぱりいなくなっているのです。こんなサイトを見つけました。
植物ホルモンであるアブシジン酸 (ABA) は一般に、植物が水ストレスにさらされ、植物の水分含量が低くなると、これが信号となって根などで合成されます。ABAは葉に移動すると、水を余り失わないように気孔を閉じる作用をもっていますが、ABAが気孔を閉じるのに直接、作用するのではなく、ABAが活性酸素を生成するように作用し、活性酸素がシグナルとなって気孔を閉じる作用を促進することが示されています。
一般社団法人日本植物生理学学会「植物体内における過酸化水素濃度」
これはちょっと難しくて、これを噛み砕いてなぜアブシジン酸が毒とされるのかを理屈っぽく予想してみると
植物がストレスを受ける→アブシジン酸が合成される→活性酸素が作られる→人体に毒 こういう理論なんじゃないでしょうか??
多分。これは大きな誤解をしたか、あるいは自説である玄米には毒があるを強調する目的の理論として編み出された可能性が出てきます。
万が一、アブシジン酸による活性酸素が人体に悪影響を及ぼしたとしても、そもそも玄米食として摂取するときは当然加熱しているので、問題児であるアブシジン酸は消え去っていますもんね。
結論「玄米毒とされているアブシジン酸は玄米を食べることによって毒性は発揮しない」 こう考えて問題ないはずです。
なぜ玄米には毒がある、との説が流布しているのでしょうか?
玄米毒を消すための方法がいくつかのサイトに書かれています。例えばアブシジン酸の問題を解決する方法としてこのようなことが書かれているものがありました。
①通常通り玄米を軽く洗います。②日の当たらない場所で、水に12時間~17時間浸水させます。③玄米が発芽します。(発芽玄米になり栄養価もUP)④浸水した水は、捨てて一度玄米を洗い直します。⑤通常通り玄米を炊飯します。発芽玄米となれば、アブシシン酸を無毒化することが出来るのです。
https://oco-mail.jp/news/171020.html
お米を販売することを目的としているサイトだと思います。このサイトは世の中に流布している玄米毒デマを収拾させる目的でこのようなことを述べているのだと好意的に解釈します。でもやっぱり情報は正しいことを伝えた方が良いと考え玄米毒とされているアブシジン酸は気にする必要ないです、と締めようと思ったら発芽玄米を積極的に売るサイトを多数見つけてしまいました。
ファンケルさん、すいません「発芽玄米」って検索したらこれが目立ったので(http://www.fancl.co.jp/genmai/index.html)。玄米毒対策として水につける方法等が一般的に知られているために、その手間を省く商品として「発芽玄米」なるカテゴリーができたものと考えられます。その発展系が発芽玄米になり栄養価もUP?
一般的に玄米には毒があり、その対策として水に浸けて発芽させることは、津川先生の著作の影響で玄米食派となったオッサンの知らぬ間に半ば常識化していたようです。
このツイートは明らかに素人さんなのでアカウント等はモザイク処理しました。ここで
さらに問題が発生❗謎のフレーズ「発芽しない玄米では意味がない」
ううーっ、このお題でブログが一本書けると思われますので、時間があるときに「意味がないです」の意味を解明してみますね。