先日「本当はスゴイ!血液型 統計から新事実が見えてきた」(ビジネス社 武田知弘)という本を読みました。
以前から、血液型占いを懐疑的というか疑似科学であると考えていた私としては、是非とも揃えておきたい本です(今回は敵に塩を送る太っ腹 Amazonで新刊本正規購入)。
本記事の内容
スポーツ選手はある血液型が多い説、これかなり危うい話です
この本の第3章タイトルは「サッカー日本代表にB型がいない不思議」です。
ナイスタイミング的に日本サッカー協会が2018年5月31日にワールドカップ(W杯)ロシア大会の代表選手23人を発表されました。ところがどっこいB型がいない不思議説、見事破れました❗B型の選手が3人しっかりと入っています。
上記円グラフは2018年ワールドカップに日本代表に選ばれたサッカー選手の血液型の割合です。代表選手名は時事通信の「W杯2018 日本代表メンバー発表」等を参考にしました。血液型に関してはネットで検索しました(ひょっとしたら私が見つけたネット情報が間違っている可能性がゼロではないことをご承知ください)。
サッカー日本代表にB型がいない不思議の方が不思議です
前もってお伝えしておくことがあります。私はスポーツ観戦の趣味はゼロ、サッカーに関してはルールも知りませんし、ポジションも全然理解しておりません。さて、今回選ばれたサッカー日本代表として選ばれた方の血液型は以下の通りです。
GK
川島永嗣 O
東口順昭 O
中村航輔 B
DF
長友佑都 O
槙野智章 O
吉田麻也 O
酒井宏樹 A
酒井高徳 A
昌子源 AB
遠藤航 O
植田直通 A
MF
長谷部誠 O
本田圭佑 AB
乾貴士 A
香川真司 A
山口蛍 A
原口元気 O
宇佐美貴史B
柴崎岳 B
大島僚太 AB
FM
岡崎慎司 O
大迫勇也 O
武藤嘉紀 A
これをグラフにしたのが前掲の円グラフです。
統計学というより割り算でパーセンテージを表すと
A型 30.4パーセント
B型 13.0パーセント
O型 43.5パーセント
AB型 13.0パーセント
という結果になっています。少なくとも
サッカー日本代表にB型がいないとの主張は今回は当てはまりません❗
と言うか、ハズレたということになりますね。
これが今回の参考図書です。しっかりと帯にも「サッカー日本代表にB型はいない!」と書かれています。帯は外すことできるけど、本書の目次にも書かれているからなあ⋯。
都合のいいデータをピックアップすれば自分に都合の良い結果を導くことが可能です
医学論文でも時々見受けられるのがチェリーピックと言われる手法です。これは自分の考えを支持するデータや論文を見つけ出し、自分の都合に良い結果を出そうという方法です。このチェリーピッキングは一見もっともらしい研究結果に見えますが、引用された論文を精査すると「ああ、この研究者は自分の説に都合の良い文献ばっかり引用しているな」と見破られることもあります。
「本当はスゴイ!血液型 統計から新事実が見えてきた」のサッカーの日本代表にB型がいない、との例として挙げられているのが、サッカー日本代表出場数ランキング20位です。
このランキング基準に従えば2017年3月までの血液型データでは確かにB型の選手はいません
しかし
なんで日本代表を出場回数でランキング化してB型はいない、としたのか不思議です
タイトルはサッカー日本代表にB型はいないですよね、出場回数が少ない選手の中にB型の人も混じっていたのではないでしょうか?さらにこのデータはある年の日本代表選手ではなく、歴代の日本代表選手をチョイスしています。サッカーのような記録の切り口がたくさんあるスポーツだと、何らか切り刻んでいけばどこかしら自分の主張に有利なデータが得られることが多いはずです。
もともと日本人はA型O型と比較するとB型は少ないという事実
日本人の血液型の分布は諸説あるようですがA>O>B>ABの順番は不動。ちなみにA型37.8%、B型21.9%、O型29.8%、AB型9.9%とみなさんが気軽に利用できるウィキではなっています。
これを23人のサッカー日本代表選手に当てはめると
A型8.7人、B型5人、O型6.9人、AB型2.3人になるはずです
しかし
実際にはA型予想8.7人→7人、B型予想5人→3人、O型予想6.9人→10人、AB型予想2.3人→3人です
予想したというか日本人の血液型分布と比較して差があるように見えるのはB型とO型という結果になっています。
このデータは統計とはよべないもので、単に代表選手の血液型を日本人の血液型分布を使用して割合を算出しただけで、私たちが普段使う統計学とはかけ離れています。
今回取り上げた本は統計学というより、単に割合を算出したものですから、今回は私が計算したデータと大きな違いはありません。血液型の分布と比較して
サッカー日本代表はB型が若干少なく感じられてO型がちょっと多いかなレベルのことしか言えません
⋯大げさに統計から真実が見えた、って言うほどのことではないようです。あえて簡単にざっくり説明すると
代表選手は23人しかいないので、2人変わるだけでも数字は10%近くズレる
一見大きく違うように見えるけど、たまたまズレただけなのか、あるいはもともとの血液型の割合が違ってたからなのかは、ちゃんと計算してみないとわからないのです。ちなみに期待されていながら選出されなかった浅野拓磨選手はA型、三竿健斗選手はB型、井手口陽介選手はO型です。
選出されたA型の選手の代わりに三竿健斗選手が選ばれていていたら、単純計算だとB型の選手が占める割合は日本人の血液型分布の割合に近くなります。そうなると逆にサッカー日本代表選手のA型が少ないという結果になってしまいます。
この計算から導かれる結論として
統計学上、サッカー日本代表として選ばれた選手の血液型はどれも有意な差を認めなかった
となるんです。つまり、日本人全体の血液型の分布と比べて、サッカー日本代表の血液型の分布は、統計的に有意に異なっているとはいえない、ということになります。
なお、この専門的な統計処理は統計学の専門家である東京大学大学院薬学系研究科の五十嵐中特任准教授にご協力いただきました、ありがとうございます。
追記 この計算はサンプルサイズが小さいのでこれだけで判断することはできません。私は多くの記録があるものは、つまみ食い的に小分けにすればなんとなく納得できるような結果が得られるということを言いたかったのです。言葉足らずでご迷惑をおかけしました。2018/6/6 16:50
血液型ごときに惑わされる必要は無い
血液型が人の身体的・頭脳的能力および性格に影響を与えていることは多くの研究で否定されています。
医学論文検索サイト「メディカルオンライン」より 血液型性格のキーワードで検索すると論文から一般書籍まで60件が該当しました。
世界中の医学論文を検索することができるPubMedでも検索してみました。血液型と性格を研究した論文として代表的なものとしてこれが検索結果に現れました↓
「No relationship between blood type and personality: evidence from large-scale surveys in Japan and the US」(Shinrigaku Kenkyu. 2014 Jun;85 (2) :148-56)、ザックリ日本語に訳せば
日本と米国における大規模調査を根拠とすると血液型と性格は何の関係も無い
です。この研究は日本人によるものですが、海外の人は自分の血液型を知っている人は少なく、血液型と性格に何らかの関係があるなんて考えてもいない人が多いのです。もし、海外でも血液型によって性格に違いが出るなんて感じのネット記事があったとしても、の本の血液型占いや血液型性格分析が元ネタである可能性が高いです。
今回のサッカー日本代表にB型はいない説を唱えた「本当はスゴイ!血液型 統計から新事実が見えてきた」は本年のワールドカップに関してはハズしたようですね。
多分、この血液型関連ブログは続編があります。だってAmazonでこの本を定価で買っちゃたんだもん。