さようならクロワッサン、発酵食信仰をこじらせたようですね。

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女性誌ってトンデモ系というかニセ医学というか擬似科学の宝庫です。しかし、常日頃から女性ファンが少ない私は女性向けメディアを俎上に載せると「女性心理がわかっていない❗」とスタッフに怒られ、結局のところ少ない女性ファンがさらに減ってしまう可能性があります。

素手で握るおにぎりは日本が誇る発酵食??

今回「おにぎりは発酵食?素手でにぎることを勧める雑誌記事に驚いた」との記事をBuzzFeedで見つけ、堀成美さんが批判しているのを見つけました。

医療従事者である堀さん(もちろん女性)が女性誌を批判しているのだから、ひょっとしたら「おにぎり発酵食説」を私が危険なトンデモ案件としてブログに書いてもファンが減るどころか、逆に増えるんじゃないかとの不埒な気持ちになっております。

画像Kindleで購入した「クロワッサン 2018年 5月25日号 No.973 腸に効く、発酵食とオイルのもっと賢い摂り方」のP28「手塩にかけたおにぎりはおいしい発酵食?」より

堀成美さんとは違った切り口でクロワッサンのおにぎりは美味しい発酵食話をイジってみます。

発酵と腐敗は背中合わせ、科学的には同じものだよ❗

以前、酵素って健康にいいのよ的な話に対してこんなブログを書きました。

「酵素と酵母の違い」誰でもわかるように解説しちゃうよ❗

「酵素と酵母の違い」誰でもわかるように解説しちゃうよ❗

酵素と酵母、字が似ているけど全く別物(こんな書き方をするから女性ファンが減るんです)。

発酵食品ってなんとなーく体に良さそうなイメージがあります。でも発酵と腐敗は同じことであることは意外と知られていません。

そう言えば消費者庁が以前こんなことをやらかしています。

やっちまった消費者庁、酵素ジュースの腐敗に気づかないとは⋯ニセ医学推進しちゃダメだよ❗

やっちまった消費者庁、酵素ジュースの腐敗に気づかないとは⋯ニセ医学推進しちゃダメだよ❗

酵素ジュース(?)を発酵させる=腐敗させる、ってことに消費者庁の担当者は気がつかなかった模様です。

発酵と腐敗は同じ現象であり、

人に健康上トラブルを起こさない食品が発酵食であり、健康被害があるのが腐敗食品(?)なのです

簡単に言えば人にとって有用な発酵食品、食中毒を起こすものが腐敗食ってことになります。

この記事でおにぎりは素手で握ることを推奨している藤田紘一郎医師はある時期からなぜかトンデモ方面に向かわれたことが一部の好事家に広く知れ渡っています。その藤田紘一郎氏はクロワッサンの「おにぎり発酵食説」に対しておにぎりは素手で握らないと効果がないと医師として考えられないような発言をしています。常在菌ウヨウヨの素手で握ったおにぎりこそ発酵食品であり、ラップで握られたおにぎりに発酵食品の価値はない、とまで断言しています。

画像

今まで様々なリスキーな発酵食をお腹に入れてきた藤田紘一郎医師の腸内細菌が腐敗と呼ばれるような状態のおにぎりを食べてもそれは食中毒は起こさないかもしれません。最近流行りの科学的根拠でいうと症例報告n=1の7段階中の下から二番目のエビデンスレベルVということになります。

そういえば発酵食信奉者かつ波動系に毒されたこんな方もいましたね。

医師諸君、今後は怒りながら抗生物質を処方しよう❗菌は怒っている人の前じゃ発酵しないらしいから(爆)

医師諸君、今後は怒りながら抗生物質を処方しよう❗菌は怒っている人の前じゃ発酵しないらしいから(爆)

これに科学的医学的根拠を見つけることは当然不可能です。

エビデンスの低い※個人の感想です、を医師が述べると信頼度がアップしてしまいます

怪しげな健康食品にお約束の「※個人の感想です」は打ち消し表示と呼ばれ、この健康食品の効果はあくまで個人の感想であり、万が一効果がなくてもそれはあなたの体質に合わなかったから的な逃げ道を残しています。

しかし

健康に関する話で医師が個人の体験談を語ると、一般の方の体験談より信頼度が増してしまうのではないでしょうか?

僕は水だけで手洗いしていますよ

と個人的な体験を藤田紘一郎医師は述べています。

万が一素手でおにぎりを握って発酵じゃなくて腐敗した時の逃げ道として藤田紘一郎氏あるいはクロワッサン編集部はこの記述をあえて記載した可能性が疑われます。タイトルからして「おいしい発酵食?」と「?」を使っていますので、なんとなく逃げ道を残した記事と勘ぐってしまう私でした。

年次別の食中毒発生はこんな感じです。

画像厚生労働省「平成26年食中毒発生状況

家庭でおにぎりが原因で食中毒を発症しても、医療機関としてはわざわざ保健所に届けることないですから、実際はすでに素手おにぎり発酵食と信じた方によって握られたおにぎりで食中毒を起こしている人がいるかもしれません。

手についている常在菌で黄色ブドウ球菌というものがあります。この黄色ブドウ球菌は食中毒の原因菌として知られています。現在の日本では衛生的な取り扱いが普及したため黄色ブドウ球菌による食中毒は減少しているのに(食品安全委委員会 ブドウ球菌食中毒より)、不注意な女性向け雑誌によって家庭内での食中毒発生例が増加してしまう危険性があると考えます。

画像

食中毒の原因として「細菌」が占める割合が多いことがわかります(青の部分)。そのうちブドウ球菌が原因と判明している例はこんな感じです。

画像

毎年安定的にブドウ球菌による食中毒が報告されています(赤い四角をたどった折れ線)。

年々減っている食中毒ですが、クロワッサンの記事が原因で右肩上がりになったらかなり怖いのではないでしょうか?

なんでトンデモさんは発酵食が好きなんでしょう?

オーガニック食やマクロビが健康に良いと考えている方も多いのでは?残念ながらそれらが健康に良いと確実に判断できる科学的根拠は乏しいとまともな医療関係者は考えています。自然派をこじらせて怪しげなニセ医学に毒されている方も多いようです。

ニセ医学を振りまく「脳みそ発酵オバサン」、各地に出没中❗

ニセ医学を振りまく「脳みそ発酵オバサン」、各地に出没中❗

なぜか

セミナー受講レベルの発酵食方面はトンデモさんの宝庫とも言えるのではないでしょうか?

丁寧な生活を心がける自然派系意識高い系の方々はコンビニや大手メーカーの作る食べ物を嫌う傾向があります。コンビニのおにぎりで食中毒が起きてしまったら企業の存続が危ぶまれます。まあ、こっち方面の方はヤマザキパンはなぜカビが生えないかとかコンビニおでんは危険、なんてヘンテコな情報に惑わされている方とオーバーラップしている可能性も高いと判断いたします。

料理研究家さんもかなキテいます

今回のクロワッサンおにぎりは素手で握りましょうキャンペーン(?)に料理研究家の方が登場しています。その方は

人の手まで不潔だと悪モノにしたら、日本の伝統的発酵文化そのものが成り立ちません

と述べています。

でもねえ、古くからの伝統、伝統と言っても日本人が今のような快適な生活が送れて、寿命が長くなっている大きな原因の一つとして、感染症の減少があるんだよ。

料理研究家方面でこんな方もいます。

「食べものだけでガンが消えた」のオーガニック薬膳料理研究家高遠智子さんの本がかなりヘン❗

「食べものだけでガンが消えた」のオーガニック薬膳料理研究家高遠智子さんの本がかなりヘン❗

がんを予防するであろう食材はあっても、がんを治す効果のある食品や食事は現時点では残念ながら科学的手法による検証では見つかっていません。

通常の生活において必要以上に医学用語の清潔にこだわる必要はないと考えます。綺麗にしすぎて皮膚や腸を守っている常在菌まで滅菌(これも医学用語)する必要はありませんし、やりすぎは健康面でマイナスになりかねません。しかし、自然派をこじらせたのか発酵の知識に乏しい方が増えていることを懸念しています。もう一度言います

発酵と腐敗は同じ現象です❗

クロワッサンさま、今回の記事に対するコメントぜひぜひお願いしたいと存じます。

おまけ

お母さんやお父さんが作ったおにぎりで食中毒にならない理由として、家族間では共通の常在菌を持ち合わせているために、健康被害に合わないとの考え方もできます。でも、いくらお母さん、お父さんが作ったおにぎりでも時間の経過とともに腐敗します。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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