昔から栄養満点のイメージのある卵ですが、コレステロールに影響があり心血管系の病気のリスク因子ではないかとの考え方もあります。
卵って健康にいいのでしょうか?それとも悪いのでしょうか?
卵が健康に及ぼす影響に関して以前から医学関係者の間で論争が継続していました。
本記事の内容
卵大好きなだけど健康に気を使って控えていた人に朗報ともいえる論文が発表
そんなこんなの卵は健康に良いのか悪いのか論争に関してこんな医学論文が先日発表されました。「Associations of egg consumption with cardiovascular disease in a cohort study of 0.5 million Chinese adults.」(Heart. 2018 May 21)で今年の5月21日掲載ですからかなりホットな論文です。これを受けてヨーロッパではこんな感じで報道されています。
本当は卵料理大好きだったけど、心臓や脳の血管に悪いとお母さんに卵料理を控えるようにキツく言われていた世界中のオッサンは狂喜乱舞❗ってことなんでしょうね。
実は卵を食することが健康に悪い、特に心血管系の及ぼすリスクは多くの医学論文が今まで様々な研究で発表してきました。以前は厚生労働省のサイトで1日に摂取が推奨されるコレステロール値が表記されていたのですが、2015年からは「日本人の食事摂取基準」からコレステロールの摂取量制限に関する記述が無くなっています(これについては色々な背景がありますが今回は省略)。
今回の卵好きのオッサンが喜んだ医学論文、よくよく読んでみると⋯やっぱり落とし穴がありました(涙目)。
華々しくデビューした一日一個の卵は健康に良い論文、この結果を真に受けて良いか?
今回の論文は中国人の研究者が中心となって英国の研究者と共同で「Heart」という権威ある医学専門誌に投稿したものです。その研究内容は39才から79才の健康な成人50万人を対象とした結果 卵を食べている人は食べていない人と比較して心血管系の病気になりにくかった つまり卵を食すことは今まで言われていたような心血管系疾患のリスクになるとの医学常識とは真逆の結果になっていたのです。
でもさー、これっておかしくないですか?世界で消費される卵はこんな感じになっています。
意外や意外、日本人て卵消費量世界で3位なんですね。確かに心血管系の病気は日本より卵消費量が少ない欧米諸国と比較して少ないことが知られていますので、一日一個卵を食べるのは今回の論文が導いた結果は正しいのかもしれません。確かに 心血管系にならない適切な卵の消費量は一日一個という大変親切なアドバイス?も論文の結論には書かれていますしねでもねー、やっぱりこの医学論文落とし穴があるんですよ。
そもそも中国で調査対象となった人々の属性を調べると⋯
50万人の方を対象にした研究、それはそれは信頼度が高いことだと普通は思います。でも、この論文にこんな記載があるんです。「During 2004-2008, over 0.5 million adults aged 30-79 years were recruited from 10 diverse survey sites in China. 」⋯10の多様な地域から50万人を選んでいることが書かれてますね。急激な経済発展を遂げる中国の大きな問題の一つとして地域による経済格差があります。
都市部と農村部でこんなに所得格差があるのなら、所得格差による衛生環境や健康意識の方が卵一個の影響より心血管系疾患になるリスクに多大な影響を及ぼしているとも考えられます。
毎日一個卵を食べられるのは高所得者に限られるなんてこともあるかもしれません。卵が健康にどのような影響があるのか、たった一つの論文だけを頼りにすることは科学的根拠(いわゆるエビデンスレベル)としては、弱いものであるとお考えください。だからこの論文を片手におかあさんに「卵って心臓病の予防になるんだよ❗」って言ってはいけません。ちょっと気の利いたお母さんなら「卵一個だけね」って制限されて、ろくなオムレツさえ食べられなくなってしまいますから。