基本的に雑談であっても血液型に関する話は避けるようにしています。その理由としては
ということですから
血液型が性格に影響することは無い、と断言いたします
本記事の内容
血液型がO型だと怪我をした場合、死亡率が2倍以上❗との医学論文が登場
でも今回厄介な医学論文が登場してしまいました。「The impact of blood type O on mortality of severe trauma patients: a retrospective observational study」(Critical Care 201822:100) とのタイトルで
大怪我したO型の人は他の血液型の人と比較して死亡率が高い❗
との内容の結論を東京医科歯科大の研究チームが発表したのです。
ある件で東京医科歯科大学に入院経験のある私としては「快適な入院ライフを送らせてくれた東京医科歯科大学がトンデモの研究結果を発表した❗」って一瞬思ったしだいです。この医学論文がウソや適当なことを伝えているはずはないと思います。
しかし、世の中にはもっともらしく血液型が性格に及ぼす影響や血液型占いを拡めている人々がいますので、彼ら彼女らがこの論文を悪用しないことを祈りつつ、この件について若干の検証をしてみますね。
どうも思い込みからスタートした印象のある「O型だと死亡率が高い」説
この論文は出血リスクとして血液型が影響しているのでは?とのアイディアからスタートしていることが、論文の冒頭のバックグラウンドから知ることができます。
それをまず頭において今回の研究論文を読んでみることが重要なのではないでしょうか?この論文によると
- 2つの第三次救急救命施設に搬送された901人を研究対象とした
- 901人の血液型はA型285人、B型209人、AB型123人、O型284人であった
- O型の血液型の人の死亡率は28パーセント、他の血液型の人の死亡率は11パーセントであった
つまりO型の人が大怪我をすると死亡率が2倍以上になる❗と解釈できる結果になっていました。
この研究に対する素朴な疑問として、対象となったサンプルサイズは十分であったとしても、たった2ヶ所の医療機関のデータであること。さらに先ずは血液型ありき、からスタートしていてそもそも血液型とはなんぞや、型があるんだからそれぞれに何らかの違いはあって当然じゃん。
この論文に関していくつかのメディアが取り上げています。これは共同通信社のもの。
しかし、多くは「血液型がO型だと死亡リスクが高い」的な解釈で終わっています。
そもそもO型の血液型の人はフォン・ヴィレブランド因子という血液を止める働きをする成分が少ないことが知られています
もう少し噛み砕いて説明すると、血液型によってフォン・ヴィレブランド因子を含む量に違いがあります。でも、このフォン・ヴィレブランド因子が若干少ないくらいで、血が止まりにくいとの早急な結論は導かれてはいないんです。
研究した本人が結果に驚いている様子が伺えます
今回、血液型がO型である大怪我をされた患者さんに対しての輸血の量は他の血液型の患者さんと比較して差はありませんでした。
止血を妨げるフォン・ヴィレブランド因子の量が血液型によって違っていたとしても、これが今回の結論の説明にはならないはずです。というのも、輸血をしても助からないことがわかっている人に対して輸血を行わなかった可能性もあります。さらに採用された重症度の判定基準に何か問題がある可能性もありますね。
そこで血液型によって死亡率に違いがあるんじゃないかな、と始めた研究のあまりにも大きな差がでた結果に対して、研究者たちもかなり慎重になっていることがわかります。
論文の後半にDiscussionがありますが、その中でサンプルサイズがちょっと少なかった可能性、後ろ向きの研究(カルテなど既存のものを利用した研究で、エビデンスレベルでいうと真ん中くらい)であったこと、ある種のエラーが存在していた可能性があることを述べています。
そこで研究者たちはこれは決定打ではなく、さらなる研究が必要であると真摯な態度で今回の研究結果を評価しています。
ということは⋯血液型がO型の人は大怪我をすると死亡率が高くなるのでO型の人は大きな事故に巻き込まれないように性格が慎重になる、とかO型の人は将来怪我をすると死亡しやすくなるので職業は慎重に選択しましょう、とかのアホな話が出て来ても科学的な検証はまだなされていないよ、って笑って済ませましょうね。
そもそも血液型って何だ?
血液型によって性格を分類するとか、血液型で将来を占う、なんてことを一般の方が興味を持っているのはたぶん日本だけじゃないかなあ。もしも、海外でもそのような話が出回っていたら、きっと日本人が広めた可能性があると思います(自然派さんが大好きなマクロビって実は日本発だよ)。
例えばこんなデータがあります。
厳しい自然環境で生き抜いて来た人たちはO型が過半数を占めていますよね。もしもO型の血液型の人が他の血液型の人と比較して怪我をした場合に死亡率が高かったらその集団は自然淘汰されて今に至る可能性が低くなってしまうのではないでしょうか?
そもそも血液型ってA・B・O・ABだけじゃなくて、RhやMNSsやPやLutheranやKellやLewisやDuffyやKiddやDiegoなどその他多数あるんです(詳細はWiki等をご覧くださいね)。様々な分類を組み合わせたらその数は天文学的になるんじゃないでしょうか(実際には計算していないけど)。
輸血という医療行為をする場合に拒絶反応のリスクを考慮して、ABO型とRh型を分類しているだけなんです
それが何でABO型といった一種類の血液型で性格等が分けなきゃいけないんですかねえ。そのような思考回路を持つ人って、クレッチマーが体系と性格を分類したような危なっかしい思想に染まっているような気がして、私はお付き合いしたくないです。
もう一度今回のヘンテコな輩が悪用しそうな血液型と死亡率の関係を整理します。論文を発表した研究者自身が今回の研究は十分ではなく、さらなる研究が必要であると述べています。それはこの論文のタイトルを見ればすぐ理解できるはずで。
タイトルを訳すと「重症患者のO型の血液型の影響:後ろ向きの研究」ってだけであり前向き研究(prospective study)と比較してエビデンスレベルで劣る後ろ向き研究(retrospective study)であることが述べられています❗