江戸時代に白米中心の食事が原因で脚気がひろまりました。脚気は江戸を中心に蔓延しましたが江戸以外ではあまりみられなかったので「江戸わずらい」と呼ばれました。脚気の原因はビタミンB1の欠乏ですが、判明したのはなんと大正時代です。当時、結核と並ぶ2大疾患だった脚気の原因がビタミン欠乏だとわかったのは1910年代のことで、死亡者が少なくなったのは1950年代と割と最近のことなのです。
近年、糖質制限ブームもあり白米は悪者にされがちですが「白米は体に悪い」説の正しい読み方を解説したいと思います。
本記事の内容
東洋経済「最先端の医学では『白米は体に悪い』が常識だ」を解説します
2018年04月13日東洋経済オンラインに掲載されたUCLA助教授津川友介先生の日本人の食生活に警鐘を鳴らした興味深い記事が著者の期待したような受け止められ方がされていなくて、残念な気持ちがしています。
先日こんなブログを書きました⋯
このブログで私が言いたかったことはどんなに権威のある医学誌であっても、どんなに信頼度が高いメディアであっても疑う余地はありでさらに
メディアは記事にするならば一次ソースを明記することが重要であるです。
津川先生が投稿した医療健康記事は根拠となった医学論文へのリンクが貼られている点で、誰でも簡単に一次ソースを確認できます。しかし、ネット上のこの記事に対するご意見は⋯
- 掲載された文章をちゃんと読まずに、タイトルだけに反応している
- せっかく一次ソースが簡単に確認できるのに、根拠となった論文を読んでいない
- 東洋経済の記事はあくまで著作のダイジェスト版的なものであることを理解していない
などが非常に気になってしまいました。著者である津川友介先生には大変失礼なことかもしれませんが、私なりにこの今までの常識を打ち破る健康関連記事を解説させていただきます。
「茶色い炭水化物」は健康に良い
4ページにある記事中の2ページ目にこのような記述があります。
茶色い炭水化物」は健康に良い影響を与えると報告されている。
これに対して「茶色い炭水化物ってなんだよ、白米も炊き込みご飯にすりゃいいのか」的なご意見がありました。数行前にしっかりと白い炭水化物と茶色い炭水化物のこの記事における定義がしっかり書かれているのに、見落としたのでしょうか?
精製された炭水化物のことを「白い炭水化物」、精製されてない炭水化物のことを「茶色い炭水化物」と呼ぶ。
続いて炭水化物の摂取量と死亡率について述べられています。
その根拠となった医学論文は「Whole Grain Intake and Mortality From All Causes, Cardiovascular Disease, and Cancer: A Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies」(Circulation. 2016 Jun 14;133 (24) :2370-80.)です(記事では「メタアナリシス」と書かれているところをクリックすると表示されます)。
津川先生の主張の根拠となる一次ソースに簡単にアクセスできるのに「これはアブストラクトしか確認できないじゃないか」との批判を見かけました。
実は
この論文全文はちょっと調べれば誰でもアクセスできます
方法としてはタイトルをコピペして検索するなどの手法があります。
この論文から著者が伝えている医学情報は茶色い炭水化物を食べているグループはほとんど食べていないグループより死亡率が22パーセント低かったということです。
Circulation(http://circ.ahajournals.org/content/133/24/2370)でフルテキストが読めます。
この論文は米国人を対象した研究で心血管系の病気とがんに関しては、全粒粉を食べていた人の方が死亡率が低かったことを伝えています。
茶色い炭水化物の摂取により糖尿病のリスクが下がる
次は玄米が体にどのような影響を及ぼすかについて書かれています。
茶色い炭水化物の摂取により糖尿病のリスクが下がることも複数の研究結果によって明らかとなっている
これを多くの人が誤解しています。ここでは玄米=茶色い炭水化物、として取り扱っているのに「どっちも米じゃん」的なご意見が見受けられます。
この件に関して二つの論文にリンクが貼られています。
「Whole grain, bran, and germ intake and risk of type 2 diabetes: a prospective cohort study and systematic review」(PLoS Med.2007 Aug;4 (8) :e261)と「White rice, brown rice, and risk of type 2 diabetes in US men and women」(Arch Intern Med. 2010 Jun 14;170 (11) :961-9)です。
ちなみに前者も校舎もフルテキストを読むことができます(PLOSとJAMA)。
これらからわかることは茶色い炭水化物は糖尿病のリスクを下げるだけでなく白米をやめて玄米に変えると糖尿病のリスクが下がるです。この件に関しても著者である津川先生は玄米と白米の違いを知っているのか的な批判もありました。両者はカロリーとしてあまり差がないことをご存知の方の疑問というか批判だと思います。この記事の元となった「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」にはイラスト付きで両者の違いがしっかりと説明されています。
日本人も白米は食べれば食べるほど糖尿病になりやすい
私が見る限り一番批判されているのは
日本人においても白米の摂取量が多ければ多いほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかになった。論文では、男性では、白米を食べる量が(ごはん1杯160g換算で)1日2杯以下のグループと比べて、1日2〜3杯食べるグループでは5年以内に糖尿病になるリスクが24%高いことが明らかになった。
との記述です。「日本人は昔から白米を食べているのになんで長寿なんだ」「自分の親は毎日、白米を何杯も食べているけど90才でも元気」って感じの批判です。この論文を根拠として津川さんが述べているのは白米と糖尿病の関連性であり、寿命に関して触れていません❗
この記述に関して大前提をすっ飛ばして批判している人が多いです。ここには
1日1時間以上の筋肉労働や激しいスポーツをする人に関しては、統計的に有意な関係が見られなかった。
とも書かれていますし
白米を食べる量が多い人ほど、糖尿病になってしまう確率が高くなっている傾向が確認できた、というくらいのざっくりとした理解にとどめるのが無難だろう。
とも書かれています。
私もブログ書く上で、自分の考えを第三者に伝えることの難しさをこの件で再確認しました。
何事も疑って見ることは重要だけど⋯
今回の東洋経済の医療健康関連記事を真に受けないで、各自が疑って検証することは重要だと考えます。この記事は反証あるいは事実であるかを確認しやすいように引用文献が掲載されていますし、さらにクリックすれば元となる論文にアクセスすることが容易になっています。
英文の論文が一次ソースでもGoogle翻訳などを使用すれば、ざっくりであっても内容は掴めるのではないでしょうか?
余計なお世話かもしれませんが、「白米は体に悪い」説の正しい読み方をまだまだ解説したいです。でも長文になると最後まで読んでくれる人は少なくなり、ざっくり目を通しただけ、あるいはタイトルだけを読んでの批判を浴びやすい傾向がありますので、この辺でヤメておきます。
ちなみに自分の経験則から「最先端の医学では『白米は体に悪い』が常識だ」というタイトルは多分東洋経済の編集者が考えたものだと予想します。
東洋経済、めちゃくちゃPVあるようだから投稿者はご自分の健康を考えた場合、コメント欄に読むことは控えた方が良いです(※個人の感想ですw)。
私は津川友介さんとSNSでやり取りはしています。リアルでお会いしたことはありません。津川友介さんの著作物「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」がいくら売れようが私への金銭的な利益はゼロです。