今の若いお母さんはどうだか知らないですが、私のようなオッサン世代は母親に
あなたを産んだからカルシウムを取られちゃって歯が弱いのよ
的な話を聞かされませんでしたか?
お母さんはねえ、あなたを産んだから歯が抜けちゃったのよ
私の母も若い時から一部義歯を使用していて出産により歯が抜けちゃった、と話された記憶があります。医師になってから母親の話を思い返して「そりゃ、妊婦さんの時に甘いものを食べて、ちゃーんと歯磨きしなかったからだろうよ」なんて考える嫌な息子になってしまったのですが⋯ お母さん、ごめんなさい❗出産と歯が抜けちゃうことは関係があるようですというのも最近こんな論文が登場しました。
「Gain a child, lose a tooth? Using natural experiments to distinguish between fact and fiction」(J Epidemiol Community Health. 2018 Mar 13)、子供産むと歯を失う、海外でも多くの子供を産んだお母さんは歯がなくなりやすい、との言い伝えがあるようでそれを調べた研究です。結論として子供を多く産んだ母親の場合、歯がなくなってしまう数が多かったということになっています。だから私は妊娠中、子育て中にしっかり歯を磨かなかったことで入れ歯生活を送らなければならないことになったと思っていたので、母親にブログを介して謝ったわけです。
海外でもこの論文は話題になっています。
でもちょっと待てよ、この論文変じゃないか?
学歴が高いと子供を産んでも歯が抜ける数が減る⁉
最近は予防歯科という分野が普及することにより、虫歯になる人も減ってきているようですし、歯周病予防も多くの人に必要性が知られてきたためにここ20年程で歯が抜けている(欠損歯)本数自体が減少しています。
今回取り上げた出産と欠損歯の論文の概要はこんな感じです。
- イスラエルとヨーロッパの14カ国の50才以上の男女34843人が対象
- 平均年齢は67才、平均して10本の欠損歯があった
- 3人出産した女性の場合、2人出産した女性より平均すると4.27本歯の数が少なかった
以上より出産数が多いほど、欠損歯が増えるとの結論が導き出されました。ちなみに男性の場合は子供の数と欠損歯の数に関連性はありませんでした。さらにちょっときになる結果も出ています。
高学歴の女性ほど欠損歯は少なかったとのことです。
ここでこんなことを考えてしまいました。
高学歴ほど収入が高く、家事に余裕があるから歯磨きタイムもしっかり確保でき、歯周病予防もでき、ちょっとでも歯の調子が悪ければ歯医者さんを受診できる。だから結果として子供を多く産んでいても欠損歯が少なかった。。。
私が生まれた当時は日本はまだまだ貧乏でした。国民皆保険は完備されていましたが、歯周病や予防歯科という考え方を採用するほど余裕はなかったと思われます。
今時、妊娠中あるいは子育てで歯を磨く時間も確保できないほど多忙な人は稀でしょうし、オーラルケア関連のテレビCMもバンバン流されています。ドラッグストアに行けば、歯周病予防・虫歯予防関連グッズが一画を占めています。
今回対象となった人々の平均年齢は67才、彼ら彼女らが妊娠中あるいは子育て中であったと勝手に予想する30年から40年前はオーラルケアの重大性はイスラエルでもヨーロッパでもあまり注目されていなかったんじゃないかなあ?ブログ前半で母親にごめんなさいと謝罪してしまいまいしが、私は二人兄弟なんで今回の研究でわかった3人以上出産すると欠損歯が増える説は私の母には当てはまりません。ってことはやっぱり時代の差のような気がします。
欠損歯と出産の関連性、オッサンはなんで関係ないんだ?
出産数が増えると女性の場合、歯が抜けてしまう、あるいは抜歯した数が増える傾向があるとの研究結果は尊重しましょう。となると、男性の場合はなぜ出産数と欠損歯の数に関連性がないのでしょうか?男性の欠損歯が子供の数と相関関係にないならば⋯イスラエルやヨーロッパでも奥さんが子育てで忙しいのにオッサン達は余裕で歯磨きタイムを確保していた疑惑が生じます。
妊娠・出産は女性にとって大変な時間なんですから、オッサン達は奥さんのお手伝いをしっかり行なって、奥さんが歯磨きタイムや歯周病ケアの時間を確保できるように努めるべし❗ってことなんじゃないの?