高血圧の方、週刊朝日の「血圧は下げるな、危険⁉」を信じるのはかなり危険⁉

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週刊誌、特に読者層が中高年と思われるものは健康関連記事が毎週のように掲載されています。

医療業界の闇にメスを入れた硬派記事もたまにはあるのですが、ほとんどは今までの健康や医療の常識を覆すような珍説を記事にすることが多いんじゃないかな?

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週刊朝日の健康関連記事の問題点はこれ❗

週刊誌といえでも商売であるために、それなりの売り上げは必要だろうから標準医療に反するような医療情報を見出しにでかでかと掲げれば目立ちますもんね。

特に今その病気で治療中の人にとっては「俺の病気って治す必要なかったの」「なーんだ、毎月通院する必要ないじゃん」とタイトルだけを信じて実行しちゃうとトンデモない目にあう可能性があります。センセーショナルな見出しに釣られてその週刊誌を読んで、実際に医療現場で活躍する現役医師の突飛なご意見も素直に信じてしまうことも多いでしょう。

今回、この健康関連記事どうよ???を連発している週刊朝日の健康に関する特異的な高血圧対処法を標準医療を行っている医師はどのように解釈するのか、ちょっと検証してみますね。

アエラ高血圧でも血圧は下げるな

https://dot.asahi.com/wa/2018030700008.html?page=3
最近の週刊朝日及びアエラのヘンテコな記事関連ブログ 週刊朝日の医学記事は一線を越えてしまったようで⋯高濃度ビタミンC点滴療法でがん治療??❗ やっちゃった、アエラ。「絶対に電子レンジを使わない」食の専門家はトンデモさんだよ❗!

ほかにもあった記憶があるけど、多すぎて思い出せな。

おまえは高血圧の専門家じゃないだろう⋯それが違うんだなあ

私が健康一般に関するブログを書くと「おまえ、その領域の専門家じゃないじゃん」的なご批判を頂きます。今回取り上げる高血圧症ですが「おまえ、泌尿器が守備範囲だろう、血圧に関して述べるな❗」とのお叱りを受ける前にまず一言。

生活習慣病としての高血圧症のほとんどは原因不明が明確ではないことによって血圧が高くなる本態性高血圧症です。ところがねえ、原因のはっきりしている高血圧症のなかで副腎に腫瘍ができたことが原因で

高血圧になる原発性アルドステロン症という病気があってこれは泌尿器科医が手術をして治療します。

腎動脈の狭窄によって高血圧になってしまう場合もあり腎性高血圧症と呼ばれています。

また血圧上昇のメカニズム一つであるレニン-アンジオテンシン・アルドステロン系は腎臓と副腎における話なんで⋯ようは泌尿器科医はそれなりに高血圧のことは知っている、ってことを前提としていただけると非常にうれしいです。前置きが長くなりましたが週刊朝日の高血圧関連記事についての検証を始めますね。

血圧は下げるな、危険⁉はお客様の個人的感想ですレベル

以前もお話ししたように私の生活圏で週刊朝日をゲットするのはかなり難易度が高いです(まあ、しっかり探していないという面も否定はしないけど)。そこでネットで見ることが出来るAERA dot.を引用させていただきます。

タイトルは「血圧は下げるな、危険⁉ 医師『高血圧は作られた病気』」です。この記事に登場する医師はこんなことを言っています。
自身の場合でも上の血圧で見ると、起床時は110くらい、車に乗って職場に着くと130になっている。さあ、これから仕事をしようという心構えもあって上昇するのだ。仕事を終えた直後は、緊張感が持続して160に。駅の階段を上っているときなどは、200近くになるという。
このように

自分は血圧が高くても大丈夫だから、あなたも血圧が高くても大丈夫

との発言はサプリなどの広告で使用される「※お客様個人の感想です」レベルを超えるものではなく、人様とくに患者さんにこのような特異な考え方を伝授するべきではないと思います。

階段をかけのぼっただけで心拍ではなく血圧が200を超えるなんて、なにがしかの疾患を抱えている可能性さえ出てきてしまいます。ある人がヘンテコな健康法を試したらたまたま病気が治った、このようなことは

生存者バイアスと呼ばれ標準医療とはかけ離れたものになってしまいます

医師が臨床データによらず患者さんを治療するのってかなりリスキーです。

階段を駆け上った時の血圧はあくまで参考値であり、正しくご自分の血圧を知るためには家庭内で起床時と寝る前の血圧測定を継続して記録することが血圧管理の基本中の基本。

安易に血圧が高いといって降圧剤を服用することは確かに脳梗塞を引き起こす原因にはなります。

記事中に降圧剤を服用すると

めまいやふらつきを起こすなど副作用も少なくない。転倒による事故や風呂場での水死につながる事例もあるが、最も懸念されるのは脳梗塞になるリスクが高まることだ。

とあります。これは間違いではありません、でも間違い。

脳梗塞のリスクとして睡眠中に血圧が下がり過ぎる事が原因と考えられる場合があるからこそ、早朝の血圧と寝る前の血圧の変動を把握することが重要なんです。

さらに

福島県郡山市で降圧剤治療を受けている約4万1千人を対象に6年間、追跡調査した。その結果、180/110以上の人で脳梗塞による死亡率が、降圧剤を使わない人より約5倍も高くなったという。

と書かれていますが、このような重要な事実を述べる場合は参考とした文献を明示しなければ信頼度が低くなってしまいます。

この話が医学論文になっているのかは、今回はちょっと面倒なんで端折ります。

血圧が高くなるほど脳卒中を起こす確率が上昇します

大阪がん循環器病予防センター(http://www.osaka-ganjun.jp/effort/cvd/commissioned/files/25_13.pdf)

標準治療で知られている事実は血圧が高いほど脳梗塞のリスクが高くなること

その大きな原因は血管が硬くなる動脈硬化であり、その動脈硬化は高血圧によって病状が進むのです。

ちなみに高血圧と診断されても降圧剤は必要ないと述べている医師として180/100まで治療はいらないと主張される浜六郎医師、160/100までは治療が必要ないと主張される石原結實医師、両者ともにある界隈では非常に有名な医師であることを記しておきます(参考文献:血圧と降圧剤を考える(上)血圧は薬で無理に下げない方がよい! これを掲げているサイトはサプリの会社です。ああ、やっぱりね)。

さらに階段を駆け上った時に血圧が200になると語っている医師も著作物を出していますが、ああやっぱりね的なものです。

標準治療に反する奇異な医学的新説を述べると話題になります。ジャーナリストの取材の基本は「裏を取る」ことだと思います。この記事を書いた記者さんは果たして裏を取ったんでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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