ヤブ医者の見分け方⋯ゴム手袋に注目してみよう❗

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おまじないを使った怪しげな治療は、日本でも古くから行われていましたが、効果がなければ人は信頼しなくなります。そのような怪しげな医者は「野巫(やぶ)」と呼ばれ、田舎者の意味を強めるために藪という漢字が使われるようになったと言われています。そんなヤブ医者には誰もが当たりたくないもの。最初は分からなくても、見分け方があるんです。ポイントは手袋です。

いまだに使用禁止の手袋を使っている医師がいるんだよね

医療用の手袋の中には手袋の装着がしやすいようにパウダー(粉)がもともと付いているものがあります。これをパウダー付き手袋と呼んでいますがこの医療用手袋が原因となって病気になる場合があります

手袋の原料に使われていたラテックスがアレルギーの原因になることが知られて、医療現場で使用される手袋の多くはラテックスフリーとなっています。テレビ等でご覧になったことも多いかと思われますが、手術用の手袋ってピッチピチなんで、手袋を装着するのが難儀で⋯じゃあ、滑りをよくしましょうとパウダーがもともと付いているパウダー付きの手袋が一般的に使用されていました。しかし、このパウダー付き手袋は米食品医薬品局(FDA)が2016年に使用禁止としています

旧態依然としたパウダー付き手袋を主治医が使用していたら「この先生って勉強不足」「新しい医療情報を知らないんだあ」的なリトマス試験紙の役目を果たすかもしれません。このパウダー付き手袋およびパウダーフリー手袋に関して解説してみますね。

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https://www.hartmann.info/en-DX/our-products/Operating-Theater/Surgical-Gloves/Latexfree-and-powderfree-surgical-gloves

今後はこのようなラテックスフリー+パウダーフリーの手袋を使わないといけません。

パウダー付き手袋が原因となって腹膜炎になった⁉

医療用手袋の装着時の滑りをよくするために使用されているパウダーはコーンスターチが原料です。このコーンスターチが曲者で日本の症例報告として日本消化器外科学会雑誌に「長期経過を観察しえた虫垂炎術後スターチ腹膜炎の1例」という論文が投稿されています。FDAが禁止する以前の2011年に発表された論文です。内容としては

  • 虫垂炎の手術後に腹膜炎を発症した16歳の女性がいた
  • 腹膜炎の原因は感染症ではなかった
  • 手術時に使用された手袋のパウダーに対して皮内反応がプラス
  • スターチ腹膜炎と診断してステロイドの投与によって無事回復
  • しかし、患者さんは長期に渡って腹痛や腸の通過障害に悩まされた

つまり

手術時にパウダーの付いた手袋が原因で腹膜炎が発症していたのです

ラテックスが原料の手袋は医師自身がかぶれちゃう、などの例が多かったので現在では多くの医療機関ではラテックスフリーの手袋を採用しています。

たまたま当院では複数人の医師が手袋に付いているパウダーに対してアレルギー反応を起こしてしまうので、この症例報告以前より手術時はラテックスフリーでありパウダーフリーの手袋を使うようにしていました。ですから、FDAがパウダー付き手袋の使用禁止を表明するときは「いまさら」なんて感じで受け止めていたのです(まあ、このような態度は褒められませんね、偉そうで)。

米国ではしっかり禁止、日本では配給の切り替え希望?

病気の治療で手術を受けて、その手術が原因というより手術時に使用された手袋に付いていたパウダーが原因でさらなる病気になってしまう、そんな理不尽なことが起こらないようにFDAは2016年12月19日に「 Powdered Surgeon’s Gloves, Powdered Patient Examination Gloves, and Absorbable Powder for Lubricating a Surgeon’s Glove」とういう声明を出したのです。

一方日本ではFDAの声明を受けて厚生労働省が「パウダーが付いていない医療用手袋への供給切替えを促します」との声明を出しています。これを読んでいない、あるいは知らない医師って日本では結構多数存在しているんじゃないかなあ(あくまで個人の感想だけど)。禁止じゃなくて切り替えを促します⋯業者さんに忖度しているのかねえ。

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このようなメールも毎日のように届きます。

医療機関には毎日のように薬の副作用情報や厚生労働省の通達とか通知とかが舞い込んできます。それをぜーんぶ読んでいない医師も多数と予想します(あくまで個人の感想です)。重要なことに関しては医師会が再度会員に紙ベースで広報しますが、最近は医師会に入会していない開業医も目立ちますので、常日頃から医療系の情報に対してアンテナを張り巡らしていないと、ヤブ医者への道をまっしぐらってことになりかねませんと思いつつ自分の周囲を見回してみると⋯。

げっ、当院にもパウダー付きでラテックス原料の手袋発見❗

正直に告白します。スターチ腹膜炎に付いては既知でした。FDAおよび厚生労働省がパウダー付き手袋は使わないようにしましょう、と言っていることも知っていました。しかーし、当院で掃除とか感染の危険がある廃棄物等を扱うときに使用している手袋、これパウダー付きでありラテックスめちゃ使用しているものだったです。

ラテックスはアレルギーの原因になりますし、パウダー付き手袋は手術時に合併症の危険がありますので、当院スタッフには以前から購入を控えるように指導していました。

なんでここにラテックスが原料でパウダー付きの手袋があるのかを尋ねたところ

「あっ、それ院長だけです、使ってんの」

と軽ーくあしらわれてしまいました(涙)

もちろん手術時に使用はしていませんし、その手袋で患者さんに触れることもしていなかったのは不幸中の幸いです。

実は私は原因不明の手のアレルギーに開業以来悩まされていましたが、早速明日にでもラテックスおよびスターチのアレルギー検査をすることにします。まさに灯台下暗し。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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