花粉を水に変えるマスク、その効果は医学論文で明らかに⋯なってないよ❗

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花粉症にお悩みの方が注目しているマスクがあります。派手に宣伝をしているので花粉症じゃない人も目にしたのでは?

宣伝しまくりの花粉を水に変えるマスクは疑問符多数

このマスクの効果を実証したエビデンスとしていつか持ち出される可能性がある医学系論文が存在します

この論文ですが、実はツッコミどころ満載であり、この論文を基にして

「医学的研究で効果が実証された花粉を水に変えるマスク❗」風のアフィリエイト広告が氾濫する前に先制攻撃をしておきますね。

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これは某私鉄社内の広告、全車両このマスクのポスターで埋め尽くされていたとの話も耳にしました。

花粉を水に変えるマスク⋯その仕組みを化学式で考えてみると無理

花粉症の原因は皆さんご存知のように植物の花粉ですよね。特に問題となっているのはスギの花粉です。花粉とういうのは、植物が次世代を生み出すためのタネであるわけで、植物の遺伝子が含まれています。遺伝子があるということは核酸が当然含まれています。その核酸には窒素が必ず含まれています。

この花粉を水に変えるマスクの説明として 花粉+マスク→水 という化学反応となっているはずなんですけど⋯

花粉に含まれている窒素はどこに行っちゃったのでしょうか的な素朴な疑問が当然湧き出てきます。花粉にはそのほか多数の分子も当然含まれていますので、まあキャッチコピーに文句をつけるのも大人がないとは思いますけどね。

そこでこの花粉を水に変えるマスクの理論背景となっていると考えられる医学系論文を参考にして、本当にこの花粉症を水に変えるマスクは花粉症を水に変えて、花粉症対策として優れた効果があるのかを検証してみますね。

花粉症を水に変える理論⋯これかなり変です❗

花粉症対策の医学論文は多数あります。その中で今回題材とした花粉症を水に変えるマスクに関する医学系論文を見つけました。それは「アレルギー性鼻炎及び花粉症に対するハイドロ銀チタンシート(HATS)の臨床的有用性の検討」という論文で社会医学研究というあまり見慣れない学術誌に掲載されています。

ハイドロ銀チタンは商品名なのか、新発見の物質なのか明確ではありませんが丸に囲まれたRマークが記載されています。酸化チタン(二酸化チタンとも呼ぶ)は光触媒効果があることは多数の研究で明らかになっていて、医療的な用途としては殺菌などが考案されていることは事実です。

酸化チタンが色々な効果を発揮するためには、ある波長の光が必要なんですが、このハイドロ銀チタンシート(Rを丸で囲ったマーク付き)は通常の二酸化チタンに銀をくっ付けることで一般の光でも効果が出るらしいのです(このあたりの検証は化学の専門家さん、お願いします)。まあ、二酸化チタンでも酸化チタンでもハイドロチタン+銀でもいいのですけど

花粉症の原因となっている花粉を水に変えることは、かなりきついんじゃないでしょうか?

繰り返しますが、キャッチコピーを云々言うのも大人気ない行為であることは自覚しております。

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前掲論文より

このマスクの効果は論文によると

  • 目的は新開発した酸化チタンに銀を加えた光触媒物質シートが花粉症に有効であるかを検証
  • 花粉症患者さん12名が参加
  • 通常のマスク使用→HATSを含まないコヨリを鼻に詰める→HATSを含むコヨリを鼻に詰める(HATSは酸化チタン+銀+ハイドロキシアパタイトで構成された複合光触媒物質シートの事)。
  • 上記の3つの条件で花粉症の症状である、くしゃみ・鼻水・鼻づまりに関する効果を評価
  • HATSを含むコヨリを使用すると12人中11人で花粉症の症状軽減効果があった

ってことになります。この研究がダブルブラインドで行われていることは明記されていませんので、臨床研究として高評価を受ける可能性はかなり低くなりますね。

もっと簡単に考えるとコヨリを鼻に詰めることで効果があったとしても、それをマスクにしたから花粉症に効果がある証明にはなり得ません。さらに、HATSを含むコヨリを被験者に鼻に詰めてもらってからHATSを含むコヨリを鼻に詰めてもらっていますので、当然バイアスがかかります。

正確な結果を求めるのなら、HATSを含むコヨリを詰めてもらってから、次にHATSを含まないコヨリを詰めてもらうグループも設定しないといけません、被験者12人では無理でしょうけど。

さらにさらに

HATSを含んでいないコヨリを使用した時は花粉が大量に飛散していて、HATSを含むコヨリを使用した時は花粉の飛散量が少なかった可能性もあります

さらにさらにさらに⋯

この論文を書いた人って花粉を水に変えるマスクを開発販売している会社の経営者じゃん❗

これじゃあ花粉症に対するHATSを含むマスクの効果には多大なバイアスが掛かってしまいます(さすがにマスク販売サイトではこの論文に関する記述はありません)。この花粉を水に変えるマスクの臨床効果のエビデンスはかなり弱いと言うか、多分普通のマスクと違いは出ないと予想しておきますね。

文部科学省公認の新単位「ナノミクロン」??

医学系ではない理系のオッサンがいち早くこの論文が怪しいと感じたのは論文中にヘンテコな単位が出てくるからです。その謎の単位はナノミクロン❗

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論文を掲載した専門誌の投稿規定には査読があると記載されています。複数人の目を逃れてナノミクロンという独自の単位が文字となって専門誌に論文として掲載されちゃってしまいました。まあ,ナノメートルをナノミクロンと言い間違えることを指摘するのは大人気ない重箱の隅をつつく的行為。でも、論文が査読されているのなら、誰か気がつかなかったのかねえ⋯。

この謎の単位「ナノミクロン」ですが、なんと文部科学省の用語解説というページにしっかり記載されています(笑)。ちなみにこれを発見したのは私ではありません。

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文部科学省さま、大丈夫でしょうか?

メディアや国会でお役所のキングとも呼ばれる財務省絡みの文章の改ざん疑惑が騒がれています。私は今まで健康情報で一番正しいのは厚生労働省のサイトであると断言してきました。もっともパワーのある財務省の公文書改ざん疑惑、そして日本の教育行政を司る文部科学省の謎の単位ナノミクロンなんてものがあると、厚生労働省の健康情報サイト自体もなんか間違いがあるんじゃないかという目でこれから読む羽目に陥ってしまいます。ああ〜、何を信じれば良いんだろう???

おまけ

この花粉を水に変えるマスクを販売しているサイトでこんな図を見つけました。

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https://drciyaku.jp/

ここでタンパク質がハイドロチタン+銀の作用によって水に変化する様子が説明されています。人間の皮膚はもちろんタンパク質で作られていますので、このマスクを使用するとマスクが密着した部分の皮膚も水になっちゃうのでしょうか?こんなことが起きてしまったら健康被害という事態が発生してしまいます。今のところ健康被害情報は見当たらないので、皮膚に悪い影響は無いのでしょうね⋯ってことは、ハイドロなんとかの効果自体も疑問が、ってこと?2018年3月15日17:09追記

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【マスクのまとめ】今でも勘違いされている目的と効果

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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