がんで死なない食事をまねてはダメ❗食べ物でがんは治りません。

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ツッコミどころ満載なんだけど、この著作を出した時点では闘病中だったのでブログねたにするのもチョットと思っていました。出版されて数ヶ月後に亡くなっているので、真似しちゃダメだよ、と知ってもらうためにブログ書こうかなあ、と思ったのが「がんで余命ゼロと言われた私の死なない食事」(幻冬舎)という著作。

しかし、がんと戦いながら亡くなった方の著作をネタとして取り上げるのも如何なものかと考え、下書きだけで放置していました。

がんを予防する食べ物はあっても、治療する食べ物は無い❗

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先日、こんな話がSNS上を賑わせました。

この方も「ガンを食事で治す」と宣言していたのですが、残念ながら亡くなったとのこと。このようなことが再び起きないことを願いつつ、日本人シェフが前立腺がんを食事で治す試みを検証してみます。

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https://edmm.jp/59243/

私が奇跡のシェフ、神尾哲男さんの著書を手元にしたのが、2017年の4月ごろ。神尾哲男さんは2017年5月に亡くなっています。

末期がんは医学用語にはありません。がんは進行状態によって4段階にステージ分類されていて4期をなぜか一般的には「末期」と呼んでいます。前立腺がんの場合、ステージ4を慣習的にステージDと呼んでいて、定義としては多臓器への遠隔転移がある場合を意味します。

奇跡のシェフの場合、前立腺がんと診断された時点でリンパ節転移と骨転移があったのでステージD、これを末期がん宣告と受け止めたようです。

前立腺がんを食事で治そうとしたシェフの場合

神尾シェフは前立腺がんと診断され、放射線治療とホルモン治療を受けていますが、途中でいくつかの理由で中断した様子が著作から伺われます。

2003年に前立腺がんと診断され、放射線治療をホルモン治療を行った人の10年生存率です

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全がん協加盟施設の生存率共同調査 全がん協生存率を使用)

奇跡のシェフと同じ条件(年齢以外)で見てみると

約30パーセントの前立腺がん病期4の方が10年生存していることがわかります

奇跡のシェフの著書によれば、独自の食事療法を行う前に放射線治療とホルモン治療を受けていたことが書かれていますので、このグラフから読み取れるように

前立腺がんの4期と診断されても10年後に生存している確率は一般の方が思っているより高い

のでは無いでしょうか?さらに見つかってから神尾哲男さんは放射線治療とホルモン治療を受けています。そのために前立腺がんと診断されてからも10年以上生存できていた可能性があります。今更かもしれませんが、標準治療を受けていて、独自の食生活を実践していたら、なんてことも考えてしまいます。

たまたま生存した人のバイアスが掛っている多くの健康本

ある人がある方法でお金儲けをしたとします。自分も同じことをしたとしても、同じようにお金が儲かることは少ないのではないでしょうか?でも、どうしてもお金儲けに成功した人はそのノウハウを人に教えたくなっちゃうようで、お金儲けセミナーは常に活況のようです。

生存バイアスという考え方があります

となりのオバアチャンが毎日トマトを食べていたら、90歳でもピンピンして元気にしている。そのオバアチャンはトマトが長寿の秘訣を思って、あなたに毎日トマトを食べなさいよ、とアドバイスされあなたがトマトを食べまくっても90歳までピンピンだとは限らないというたとえ話は納得してもらえると思います。しかし、なぜか自分の闘病生活を「こんな食事をしたから今は元気です」的な書籍ってなんでこんなに売れるんでしょうか?少なくともがんの場合は、ある特定の食材や食事法が治療につながるとの科学的なエビデンスはありません。

神尾さんが前立腺がんと診断され、食生活を見直して見つけた、がんを食事で治そうと試みた時に気をつけたことは以下のことだそうです。

  1. 調味料(醤油、みりん、塩、味噌など)は本物を使う
  2. 食品添加物を極力避ける
  3. 大量の農薬や化学肥料で育った野菜、遺伝子組み換え食品を避ける
  4. 糖分を取らない
  5. 1日2食、腹六分目までを心がける
  6. 体を冷やす食べ物・飲み物は厳禁
  7. 食材の栄養素を壊さない調理法で(例:味噌汁はぬるめの60度)
  8. 体を弱アルカリ性に保つ
  9. きちんとだしを取る
  10. 雑食であれ。たまには外食もよし

奇跡のシェフはもともと自分の知識と技術でがん治療の手助けになるのではないかと、ご自分で工夫して、覚悟を決めて臨んだこと。偏った食材であっても、それなりの美味しい多種多様の食事を作ることが可能だったと思います。プロのシェフの料理を真似ようたってそうそう簡単に真似られるはずがありません。残念ながら

科学的医学的にはがんを予防する食事はあっても、がんを治療する食事は現時点ではありません

がんだと診断されたら標準医療を受けることががんを治す王道であり、周囲の「あの人はこんな食事でがんを治した」という話に惑わされないでください。書店に行くといかにも食事でがんが治ったかのようの思わせるタイトルの書籍が並んでいますが、ほとんどが科学的根拠がないものであり、お客様の感想レベルを上回ることは無いです。

確定診断さえ疑わしいがんサバイバーの食生活を真似てどうするのよ

神尾シェフの場合、明らかに前立腺がんのステージ4であると確定診断されていることは著作を読むとわかります。しかし、

世の中には本当にあなたはがんなの?そして食事でそのがんを治したの?と疑いの目で見るしかないような書籍も出回っています。

「食べものだけでガンが消えた」のオーガニック薬膳料理研究家高遠智子さんの本がかなりヘン❗

「食べものだけでガンが消えた」のオーガニック薬膳料理研究家高遠智子さんの本がかなりヘン❗

なんとこの方はスキルス性の原発卵巣ガンを患っていたそうですが、これは医学的にはありえないがんです。名前だけみたらもっともらしいですし、普通の方ならこのがんの名前になんの疑問も抱かないはずです。このようないい加減といって差し支えのない一般書籍が書店に溢れかえっています。

今は世の中に出回っている「がんを治す食事方法」の多くは疑問点満載であり、科学的根拠に支持されていると考えられる書籍・話・講演会は皆無と考えて問題ないと考えます。

6月から医療広告がかなり厳しく取り締まり対象となります

たまたまこの神尾シェフの日常をテレビで観たことがあります。非常に質素な生活を送っていたように感じます。神尾シェフはご自分独自の食事療法や著作でお金儲けを試みた様子は伺えませんでした。ご自分の行なっていることが間違いでは無いとの確信を持って独自の治療方法を多くの方に知ってもらおうと本をお書きになったのかも知れません。しかし、神尾シェフが行なったがんを食事で治すことは標準医学では科学的根拠の無いものと広く認識されています。

となると、標準医療に反する目新しい治療方法を拡散することで利益を得ようを考えている輩がどこかにいるのかも知れません。がんと診断されたらとにかく標準医療を受けることが、現時点では科学的に根拠があるとお考えいただければ、と日々願っております。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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