ホメオパシーは子宮頸がんワクチン被害者に影響を与えているの?

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予想外の副反応が出てしまった子宮頸がんワクチン接種。医師の間でも異論反論が今でもあります。この子宮頚がんワクチン(正式にはHPVワクチン)を接種した14歳から21歳の女性7万1177人に対して、24項目の症状に対する調査の結果が出ました。

子宮頚がんワクチン接種の副反応問題はこれで納得なんだけど

「名古屋スタディ」と呼ばれることもあるHPVワクチン接種の副作用の結論は24項目の症状に関して差がなかったとなっています(「No Association between HPV Vaccine and Reported Post-Vaccination Symptoms in Japanese Young Women: Results of the Nagoya Study」Papillomavirus Research)。

これでひと段落と多くの医療関係者は考えていたのですが、この研究に対して疑義を唱える医師も少数ながらいるようです。

ある医療ジャーナリストと自称している方のツイート等が気になってサクサク検索していたら、こんなサイトを見つけました。

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http://kanasibu4976.heteml.jp/?p=852

HPVワクチンの副反応被害者の会でホメオパシーの大家が講演していたのです。ホメオパシーという民間療法は標準医学では治療効果が科学的に明確に否定されています。ひょっとしてニセ医学判定確実な民間療法の影響をHPVワクチンによる副反応被害者の団体に所属する方々が受けていたら⋯これじゃあ、反ワクチン派と標準医療を行う医師との問答がトンチンカンになっているのもしかたありません。

子宮頚がんワクチン接種(正しくはHPVワクチン接種)副反応(ワクチンの場合は副作用を副反応と呼びます)被害者の会とホメオパシーの関係を整理してみます。

時系列を整理すると最初にホメオパシー団体がワクチン接種被害者に声がけしたのか?

自分の頭を整理するつもりで、HPVワクチンに関する事実を時系列で年表のようにしてみると

2013年4月
子宮頚がんワクチンは子宮頚がんの原因となるヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus 略してHPV)対する感染予防のためにワクチン定期接種となりました。それをHPVワクチン接種と呼びます(子宮頸がんワクチンという呼称は俗称)。

2013年6月頃
数ヶ月後に予期しなかった副反応を訴える人が多数出現、そのために国としては定期接種としてHPVワクチン接種を勧めることを現時点では控えています。

2013年3月25日
子宮頚がんワクチン被害者連絡会が発足。

2015年08月30日
ホメオパシーを推進する団体である日本ホメオパシー医学協会が全国子宮頸がんワクチン被害者連会 神奈川県支部でホメオパシーの講演会

2015年11月25日
全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会がHPVワクチンを製造販売元グラクソ・スミスクランとMSDに抗議活動を行なった。(このあたりからSNSで活発な討論が起きていました)。

2016年7月27日
子宮頚がんワクチン被害者連絡会が東京地裁に提訴。

2017年2月13日
東京地裁で第一回口頭弁論が始まり2018年2月14日に第五回口頭弁論。

 

2017年11月30日
医師でジャーナリストの村中璃子さん、HPVワクチンの安全性を検証する発信に対しての功績が評価されジョン・マドック賞を受賞(この時期からSNSが再度盛り上がってきた印象です)。

2018年2月末
名古屋市立大学大学院医学研究科鈴木貞夫教授の名古屋スタディの結果が一般に知られた(テレビのニュース等では報道されていない様子)。

上記の要点をざっくりまとめると
被害者団体設立→ホメオパシーの講演会→抗議活動→提訴
ということですね。

ネット上特にSNSで以前からワクチン反対派と医療関係者のやりとりは、途中から覗き出した人には非常にわかりにくいもののになっています。特にHPVワクチン接種反対派と標準医療を行なっている医師とのやりとりの中には罵詈雑言の嵐、個人情報の暴露、医学論文の提示合戦などがあり私は積極的に参加していませんでした。

実際にHPVワクチン接種による副反応と主張している方(当事者は未成年者を含む)がもし藁をも掴む気持ちでホメオパシーの講演を聴講していて、標準医療とはかけ離れた知識を植え込まれていたとしたら(あくまで仮定です)

被害者側と医師や統計学あるいは科学知識の豊富な人との問答がトンチンカンになるのも腑に落ちます。科学的手法によってHPV副反応被害問題を考える場合、ホメオパシーなんてものの影響を受けていないことを心から願っています。

HPVワクチン副反応被害者を治した、と主張するホメオパシー団体。これって本当?

被害者団体の集まりで講演をしたホメオパシー推進団体のサイトには実際に以前から副反応症状を治してきたことが書かれています。

先生の相談会にやってきた子宮頚癌ワクチン被害の方々が元気になって行き、学校に行けるようになったケースでも体に溜まった重金属を痰や熱の症状で排泄して行くことで改善して行った様子がよく分かる内容でした。

https://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/830.php

相談会にやってきて話を聞いただけで、症状が改善したのか、あるいはホメオパシーによる治療を受けて症状が改善したのかはこの文章では明確ではありません。ちなみにホメオパシーの副反応に対する考え方は

子宮頚癌ワクチンの問題としてアルミナの問題と過去に打った予防接種の水銀が人体に悪影響を与えるとのことです

https://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/830.php

であり

子宮頚癌ワクチンの問題としてアルミナの問題と過去に打った予防接種の水銀が人体に悪影響を与えるとのことです

https://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/830.php

とのことらしいです(私には全く理解できません)

この講演会聴いた人の感想として

子宮頸がんワクチンの副作用に対して明確な原因を的確にわかるのは驚きでした。

https://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/830.php

とか

子宮頸がんワクチンを接種して、その副作用で苦しんでおられるご本人が、ホメオパシーのレメディーをとって、とてもよくなっている様子を実際に見ることができて、大変驚きました。

https://www.homoeopathy.ac/10seminars_about/others/830.php

などの記載があることから、ホメオパシーで使用されるレメディーとういう科学的知見からは全く意味のなさない物体でHPVワクチンの副反応症状を治療しているようですね。

となると、ネット上の論争でHPVワクチン接種の被害者団体に所属する中にはホメオパシーの影響を受けた方の主張も混じり込んでいる可能性も否定はできないんじゃないかなあ、なんて思ってしまいます。

ホメオパシーのレメディーでどうやってHPVワクチンの副反応症状を治療したんだ?

ここで素朴な疑問が出てきちゃいます。ホメオパシーの原理というか、理論は症状の原因物資と考えられる物をめっちゃくちゃ薄く薄く希釈して、それを服用するんです。レメディーと呼ばれる一般的には砂糖玉のようなものに混ぜ込んで服用するらしいですけど⋯10倍希釈を9回繰り返したり中には100倍希釈を200回繰り返す方法もあります。

これじゃあ、元の物質は1分子も含まれていませんので、ただの水がレメディーの原料ってことになりますね。

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偽医療・ニセ医学の典型「ホメオパシー」とはどのような治療方法か?その1 なんでこんな非科学的な療法を信じるの?

日本医学会は2010年8月25日に

ホメオパシーの治療効果は科学的に明確に否定されています。それを「効果がある」と称して治療に使用することは厳に慎むべき行為です。

「ホメオパシー」への対応について

と表明しています。

標準医療を心がけている医師あるい医療関係者はこれに従っています。世界中の論文のエビデンスを検証しているコクラン共同計画のコクランレビューでもホメオパシーは対象となっています。残念ながらというか当然、治療効果ありとの明確なエビデンスは現時点ではありません。

コクラン・エビデンス・ホメオパシー

ホメオパシーさんはHPVワクチン副反応の原因はアルミナと水銀と主張しています。となるとホメオパシーの原理からすると、レメディーはアルミナや水銀をめっちゃ希釈した物を使用したはず。水銀を飲ませちゃうの⁉酸化アルミニウムをレメディーの原料にしちゃったの⁉とただただ驚くしかありません(まあ、分子あるいは原子一個も入っていないのが救いですけど)。

ホメオパシー信者の方にお尋ねしたいです、原因物質を希釈したものがレメディーとして有効であるとお考えならば子宮頚がんの原因となるHPVを薄めて服用した方がより効果が高まるのではないでしょうか?

ぜひぜひご教示くださいませ。

注意

私がSNSでその発言内容が気になっていたのは前掲の団体だけです。子宮頸がんワクチン副反応被害者の団体はこの他にも存在しているのかもしれませんが、寡聞にして存じません。HPVワクチンの接種後に様々な症状が生じた方は各自治体が相談窓口を開設していますので、まずはそちらに相談することをお勧めいたします。なお当院ではHPVワクチンの接種は婦人科にお任せしているので行なっていません。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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