「発達障害を食の改善で治す」と称するニセ医学ビジネスについて

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「なになにを食べて病気を治す」こんな感じのセミナー、講演会、一般書籍、webサイトが溢れかえっています。もちろん病気を防ぐ食生活もあるにはありますけど、このような話の多くはニセ医学が中心となっているので注意が必要です。

特に現在の標準治療で治すことが難しい病気に関しては、どう見ても非科学的であり医学的な根拠に乏しい治療方法が拡散しています。

親の不安を煽る「食で病気を治す」こんなのに惑わされてはダメ

一般的に新聞といえば週刊誌はもちろんのことテレビの情報番組なんかよりも信頼度が高いと受けてめられています。でも、新聞といえども信頼度が怪しい場合も多数あるので注意が必要です。例えば先日中日新聞で「発達障害 食で改善を 北陸の有志団体 提案へ金沢で来月講演会」なんて記事をネット上で見つけてしまいました(現在は削除された模様)。

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発達障害のお子さんを持った親御さん、特に母親向けの講演会は多数開催されています。中日新聞がどのような経緯かは不明ですが、かなりヘンテコな講演会を誌上で取り上げています。この講演会を行なっているセラピスト大谷直美さんは「私は酵素でデトックス」とか不思議なことをおっしゃっているので以前からウォッチング対象としていました。

一般の方が酵素とかデトックスとかアロマとかに興味を持っていること自体は、まっいっか的に判断していますけど、明らかにビジネスとしてニセ医学を流布しているこのような方々は批判するべきであると考えます。

セラピストの大谷直美さんってこんな人

この大谷さんは「檜の酵素浴 ナチュラルリーフ」を主催して、ニセ医学である酵素栄養学も信じちゃっていますし、主婦の間で流行しているアロマによってこれまたニセ医学であるデトックスを商売として行なっています。この大谷直美さんは真弓定夫医師の信奉者なので、私の定点観測になっていたしだいです。真弓定夫医師はニセ医学と考えられる著作によって熱狂的な信奉者をゲットしているために、トンデモ物件ウォッチャー界隈ではかなり有名なトンデモ医師です。

「食育」は怪しげな雰囲気が充満しているのか?トンデモ案件多発中❗

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牛乳はモー毒?蘇る「牛乳有害説」⋯でもこれって医学的には否定されているんですけど⋯?

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都市伝説「経皮毒が原因で羊水からシャンプーの臭いがした」⋯ニセ医学です。

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これらぜーんぶ真弓定夫医師が監修しているヘンテコな本をブログネタとしています。

この大谷直美さんが主催していると思われる「アロマと檜の酵素浴 ナチュラルリーフ」のFacebookにはこんなことが書かれています。

発達障害、学習障害、うつ、自閉症などのお子さん達が数多く薬漬けになっています?しかし、ミネラル豊富な食事、ミネラル水でケアすると、改善してきている実例が沢山出てきているお話もさせて頂き、✨奇跡の食育✨の本もご説明して、皆さんに一冊プレゼントさせて頂きました

https://www.facebook.com/hinoki93/

出ました❗「奇跡の食育」もちろん監修は真弓定夫医師

ところでセラピストってなんだ?どう見ても大谷直美さんは医師ではないようですし、医学教育を受けた気配が感じられません。まあ、いわゆる自然派を拗らせてトンデモに走ったよくよく見受けられる、セミナー等で仕入れた知識をさらに自分でそそっかしく表面上をマネて講演会やらセミナーをビジネスにしている方と思われます。

そもそも発達障害ってこのように医学的には解釈しているんだけどねえ

発達障害って言葉を最近耳にする機会が増えましたが、どのような状態であるか把握している人は稀だと思います。厚生労働省

発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害 (ADHD) 、学習障害、チック障害などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通しています。

と述べていますし発達障害は生まれつきの特性で、「病気」とは異なりますと強調しています。文部科学省も「主な発達障害の定義について」において自閉症の定義・高機能自閉症の定義・学習障害(LD)の定義・注意欠陥/多動性障害(ADHD)の定義が書かれていて、各々原因として中枢神経系に何らかの機能障害と述べています。

つまり公式的および医学的にはミネラル不足が原因で発達障害が起きたわけではないし食事を改善することによって発達障害が治ることはない❗って、ことになるわけです。

発達障害の治療方法としてミネラルが豊富な食って有効なのか?

子供の食事には気を使うのは当然です。離乳食(補完食)に拘っているママさんも多いでしょうし、オーガニックベビーフードなんてものも多数販売されています。オーガニックであるかないかよりも大切なのは栄養バランスです。さて、発達障害の治療方法としてミネラルの摂取が有効なのか、そのようなエビデンスがあるのか少し調べてみました。

確かに発達障害関連の医学論文でミネラルや食事について述べられたものがいくつかあります。例えば「Dietary Patterns of Children with Autism Spectrum Disorder: A Study Based in Egypt」(Open Access Maced J Med Sci. 2015 Jun 15; 3 (2) : 262–26)、この論文では確かに「自閉症児は、ビタミンDやC、カルシウム、葉酸、マグネシウム、リン、亜鉛、鉄などの微量栄養素の摂取が不十分」との結論が出ています。でもねえ、かなりマイナーな医学雑誌ですし、これってエジプトの話。エジプトって貧困による栄養失調が問題になっていて、自閉症の子供の場合、摂食障害や偏った食生活を送ることが多いことが知られていますしねえ、相関関係にあるかもしれませんけど因果関係とは言えないと判断します。

ましてやミネラルを摂取すれば自閉症が改善することも証明していません

中国でも自閉症児と食事の関連性が研究されています。「A preliminary study on nutritional status and intake in Chinese children with autism」(Eur J Pediatr. 2010 Oct;169 (10) :1201-6.)によれば、結果的に自閉症児は慢性的に栄養失調状態であることが判明しています。でも、これは自閉症であるために偏食したためと考えるべきであり、栄養状態を改善すれば自閉症が治ることを意味したものではありません。

現在の医学では自閉症を改善する方法はコミニケーション能力や適応性を伸ばすことであり、自閉症自体を治す薬は存在しません。注意欠如・多動性障害 (ADHD) に関しては薬物療法がある程度効果ありと判定されています。少なくともミネラルの摂取やいわゆる食育で残念ながら治療可能ではないのです。発達障害と診断された子供を持つ親御さんの苦労や将来に対する不安は私たちの想像を超えたものだと思います。そんな人々を惑わせるニセ医学を宣伝するような内容の記事を新聞が取り上げたらダメだよう〜❗

発達障害をビタミンやミネラルで治す、と称しているのがオーソモレキュラー療法を行なっている医師だったりします。

トンデモ医学オーソモレキュラーの元祖分子栄養学が残した大罪。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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