【熱中症対策?】冷えピタ・熱さまシートに冷却効果は本当にあるの?

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発熱時、おでこを冷やすとき何を使いますか?

昭和のころは氷枕が一般的だったような気がします。叩いて冷やすヒヤロンもありますね。普通に濡れたタオルもよく使われることでしょう。今は⋯おそらくですけど、おでこに貼る「冷えピタ」が一番使われているのではないでしょうか?

毎年、熱中症が社会問題になっています。ワクチン接種による副反応の発熱対策にも関心が高まっています。

自分でできる解熱対策として冷えピタは有効なのか?本当に冷えるのか?ヒヤっとしているだけなんじゃないの??

みなさんの発熱対策の効果に関する疑問について、医師として解説しますね。

熱が出るときに冷えピタを使用すると本当に熱は下がるか?

10数年ぶりに年末年始にかけて長引く風邪を引いてしまいました。熱こそ派手には出なかったのですけど、鼻水と痰がらみの咳、さらに涙目でPCに向かう気も起きずにダラダラ日々が経過してしまいました。お正月明けの日常の診察を初めて見ると、昨年末に予想した通りにインフルエンザが大流行しておりまして、さらにA型インフルエンザではなく、B型インフルエンザがこの時期には珍しく多く見受けられました⋯これも昨年予想したけどね。

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インフルエンザはもちろんのこと、風邪などで熱が出た時に冷却用のシート(冷えピタとか熱さまシート)をおでこに貼り付けている方って多いと思うんですけどおでこを冷やすのって発熱時に本当に効果があるんでしょうか?

家庭内における伝承民間医療的には発熱、即おでこを冷やす、って図式が出来上がっていると思われますが、病院に入院している患者さんでおでこを冷却している人って滅多に見かけないんだけどねえ⋯。熱が出た → おでこを冷やせ❗は発熱時の対策として本当に正解なのか、その辺りについて少々述べてまいります。

画像

https://www.kobayashi.co.jp/seihin/brand/netsusama/index.html

冷えピタの正しい使用方法

風邪を引いて熱が出た時の対応として、昔は氷のうや氷枕を使用していましたが今は何と言ってもピタッと貼って熱を冷却するシート状のものがメインです。商品名としは「冷えピタ」や「熱さまシート」が有名どころではないかな。私の周囲にいる数人尋ねたところ「冷えピタ」と呼んでいる人が大多数でした。「冷えピタ」はライオンの商品、一方でネーミングセンス抜群の小林製薬さんの「熱さまシート」は発熱時の冷却対策商品としては残念ながら一般的じゃなかったよーです。

ライオンの冷えピタの商品説明サイトによればその使用方法として以下のような記載があります。

高含水性基剤PAC-55を使用した含水率85%のシートです。シートにたっぷりと含まれる水分が熱を取り込みながら蒸発するので、高い冷却効果が約8時間持続します。

https://www.lion.co.jp/ja/products/186

に続いて

大きさもロングタイプとなっているため、額にしっかりと貼れます。

https://www.lion.co.jp/ja/products/186

このように書かれています。

この文章からして冷えピタの使用場所はおでこ(額)に貼ることを推奨しているように受け止められますよね。

小林製薬の「熱さまシート」の方はどうなっているでしょうか。

赤ちゃん用 ・赤ちゃんのおでこに最適な大きさのシート ・無香料・無着色なのでカブレにくい!

このように書かれていますので、これまた使用箇所はおでこ(額)。でもね、おでこに冷却用のシートを貼り付けても発熱に対する効果ってあまり無いんじゃないの⁉って医療関係者は考えてしまうのですよ。なぜでしょう?それはおでこには全身を駆け巡る血管、特に大きな太い動脈が無いからです。

人間の体温を大きく左右するのは血管を流れる血液の温度なので本当に発熱対策として熱を下げる目的で冷却するには首筋や脇や太ももの付け根に冷却剤を当てる、これが医療のプロのやり方です。

解熱剤を使用しないで正しく発熱を抑える方法はこれ❗

大した高熱じゃ無いのに安易に解熱剤を飲んでしまうと、風邪の治療期間が長引くんじゃ無いか、との経験則が医療関係者にはあります。詳細はこちらを⋯やっべー、今まで風邪の処方を間違って出してたかもしれない(汗)

真っ赤な顔をして、フウフウと苦しそうにしている人を目の当たりにして「解熱剤って風邪を長引かせるからね〜」なんて薄情なことは言いにくいのですけど。じゃあ、解熱剤を使用しないで体温を下げようと思った場合、当然のように冷却用シートを使おうとなるはずです。この冷えピタ・熱さまシートに代表される冷却用シートの使用方法として発売元のサイトを見てみると、使用場所として想定されているのは「おでこ」。ここを冷却しても体温を下げる効果はイマイチじゃないの、と考えるが医療関係者。

体表表面近くを通っている首回りの血管、脇の血管、太もも(鼠径部)の血管を冷やすのが正解

これらの体の表面に近く太い血管が通っている場所を冷却することによって、全身を駆け巡る血液の温度を効率よく下げることができるんです。おでこは太い血管が通っていませんから、ここを冷えピタ等で冷却しても体温を下げる効果はあまり期待できませんものね。

なんで熱が出たらおでこを冷やすんだ?

家族が熱っぽいってなったら、おでこに手をあてます。昔からドラマなどで熱で寝込んでいる人の額には濡れたタオルが置かれていたりします。熱といえば私たち日本人はおでこなのでしょう。

風邪などで熱が出ると家庭内では当たり前のようにおでこに冷えピタなどを張り付けますが(当家でも伝統的におでこを冷やしちゃいますけど)、医学的に全身を冷却する効果には疑問符がつきます。熱が出ると酸素消費量も増えますし、全身倦怠感も出ますし、頭痛もおきてきます。さらに発熱によって体が興奮してしまい、風邪の一番の治療方法のひとつと考えられる、グッスリ眠る、という行為を妨げます。

多分、民間医療としての発熱対策としておでこを冷却する伝統的な方法は、頭部を冷やすことによって不快感を取り除き、スッキリ爽快にして、休息を取るための良好な睡眠への補助手段であったと考えます。

発熱時におでこに冷えピタを貼ることを否定はしませんけど、気分的に楽になることが目的であり、発熱自体を抑えている訳ではない、とお考えいただいて間違いありません。

気分的に楽になる、なった気がする、という精神的に楽に感じることはとっても大切なことです。

ちなみにドラッグストアに並んでいる一般的な湿布、これも冷やすことはできません。冷たく感じるだけです。温感湿布は温かく感じるだけです。要するに「気持ちよさ」「心地よさ」を目的としたものなのです。それはそれで助かるものですから、使い分けましょうね。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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