正式な名称は美容皮膚科・美容外科であるのに、ひとくくりにして美容整形と呼ばれることがあります。美容系の医療は以前は芸能人などの限られた職種の方が受ける治療であると考えられてきました。ここ10数年で誰もが気軽に美容医療を受けられるくらいポピュラーになったのは喜ばしいことです。一方でトラブルが多い医療の分野でもあります。悪質なボッタクリ料金は非難を受けて当然です。しかし、なかには美容外科医の技術が高いゆえに起きてしまうトラブルもあり、実際に当院で経験したエピソードをご紹介します。
本記事の内容
効果のない美容整形で数百万騙し取られた❗
当院は保険診療は泌尿器を専門としており、それに付随する生活習慣病や皮膚科をカバーしている、どちらかと言うと地域に密着した診療を行なっています。一方で皮膚科から発展して、自由診療では美容外科・美容皮膚科を行なっています。この美容医療分野は最初はご近所の方が患者さんの中心でしたが、最近はかなり遠方からも多くの患者さんにいらしていただいています。当院の地域密着型の美容整形・美容皮膚科という立ち位置は美容医療業界的には珍しいものなのです。風邪で来院した方が「先生、私のこの顔のたるみって治療できますか?」とか膀胱炎で通いつつ「ここのシミをレーザーで取って❗」って感じの患者さん多数です。
そんなノホホンとした美容医療を行なっている当院として、この事件の闇を驚愕してスタッフ一同情報共有いたしました。
新聞折込広告で美容医療被害⋯「効果のない施術で数百万円騙し取られた」と女性が提訴(弁護士ドットコムNEWS より)
折り込みで情弱の患者さん(多くは高齢)を集めて、いい加減な整形手術を行い、ある程度の患者さんの治療を行なったらトンズラ⋯以前からこんなことを行なっている美容医療系クリニックがあるとの噂は聞いていましたが、今現在でもこのインチキシステムを大掛かりに行なっているとは。当院でこんなことやっちまったら、スタッフはご近所にお弁当も買いに行けませんし、通勤時に石を投げつけられてしまいます。保険診療部門もかなり悪評がたち、経営に行き詰まるのは必至です。
今回、提訴されたかたの詳細は不明ですが、当院としても20年近い歴史のある美容外科・美容皮膚科部門において
こんな患者さんはちょっとやだなぁ〜、美容医療はご遠慮くださいませと思った事例がありましたので、ご紹介いたします。
来週結婚式があるので、胸と背中のシミを取ってください❗これ困ります
切羽詰まったタイトなスケジュールで綺麗になりたい、とのリクエストの患者さん、これかなり困ります。中でも多く見受けられるのが「今月末、結婚式があってドレスを着るので胸と背中のシミをレーザーで取ってください」です。レーザーによってシミが取れる、との認識が世の中に広まったのは喜ばしいことです。しかし、レーザーは魔法の医療機器ではありませんので、治療後1週間程度でシミ自体は無くなりますが、正常な皮膚本来の状態に戻るまではある程度のメインテナンスが必要です。
その方は胸の大きく広がったドレス(デコルテって言うのかな)かつ背中がほとんど丸出しのドレスを結婚披露宴で着る予定とのこと。レーザーは色素だけに反応することによってシミを取り除きますが、基本的な理論は熱を利用しています。胸と背中一面にできた数百個のシミを一気に取り除くことは、大きな部分に熱のダメージを加えることになり、オススメできる治療ではありませんし、切羽詰まったスケジュールで行う医療こそ、思わぬトラブルを引き起こしがちです。当院としては、当然お断りしたところ
何よ❗レーザーでシミが簡単に取れるって院長のブログに書いてあったのに、キーッ❗
とブチギレて同伴したお母様とお帰りになりました(当然のごとく、書き込みサイトに悪口かかれましたけど 涙)。
目の下のたるみの除去手術をしたのに傷跡がない⋯手術してないじゃん、キーッ❗
当院には傷跡を目立たなくする技術を持った形成外科の専門医が複数人在籍しています。
手術する場所によっては手術の跡、多くは縫い跡が肉眼では見えなくらいになることも多いです。ある時、目の下のたるみに対しての治療として、余った皮膚を切除(切った上で余った部分を取り除く)する美容外科手術を希望されて来院した患者さんがいました。小一時間の手術によって綺麗に目の下のたるみ除去手術はトラブルもなく終了。1週間程度おいてから抜糸に来ていただきました、もちろん患者さんはニコニコでお帰りになったのですが、それから半年後
目の下のたるみの手術、全く傷跡が無いから、実は手術なんてしていないんじゃないの、騙された〜、キーッ❗
とのお怒りの電話が来ました。詳細を尋ねると地元の美容クリニック(大手チェーン店)でボトックスやらヒアルロン酸の注入治療(多分、おでこのシワ取り目的)を受けた際に「五本木クリニックんで目の下のたるみの手術を受けたんです」と美容クリニックの医師に伝えたところ「傷跡が全然ないじゃん、それって本当に手術したの?」と言われたそうです。
その患者さんは「傷跡が無い、手術をすると称して何にもしていなかった、騙された」とのロジック
いかに傷跡を目立たせないか、それに命をかけている形成外科出身の美容整形担当医師はその抗議に「自分が今までやって来た修行と工夫の価値を全く理解していない患者さん、こりゃ虚しいです院長」と涙目で私に訴えて来ました。
あのねー、手術の前後写真および手術中の写真、さらに切り取った皮膚の一部の写真も当院はカルテに貼り付けてあるので、手術しまーす、何にもしませーん、なんてことはありえません。修行の足りない大手チェーンのなんちゃって美容外科としては、手術跡が全くわからない美容外科技術が存在することが信じられなかったのでしょうね。術前・術中・術後直後の画像があるのに「手術してないじゃん、キーッ」となるような患者さん、実際に目の下のたるみは解消しているのに、傷跡が見えないこと理由にそんなこと言われても⋯こんな患者さんは二度と診察・治療したくないです。
10才若返ると言われて治療したけど、効果がなかった、だから提訴
冒頭でご紹介した新しい美容医療でマイナス10才の効果がある、との広告をみて治療を受けた方、それも注射2本で260万円も請求されています(詳細はyahoo!ニュースにあります https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20171130-00010003-houdoukvq-hlth)。
私が知る限りどこに注射をするのか不明ですけど、注射を打つことによって10才若返ることができる美容系の医療は知りません。今年の事件化した臍帯血を使用したエイジングケア治療ならそんな謳い文句を使った宣伝をしているのかも知れませんけどね。この提訴された方に対して、批判的なコメントがyahoo!ニュースの下の方に投稿されています。しかし、たった2本で260万とは、訴えられたクリニックも大きく出たものです。
当院でも以前「5歳若返りコース」なんてものをリピーターの方にご紹介したことがあります
その効果の根拠は運転免許証。当院スタッフの運転免許証、多くはゴールド免許のために今まで使用していた免許証の写真と更新後の免許証の写真を比較して「わああっ、5年前より若返っている❗」と数人が言い出したのです。
当院のレーザーを中心とした医療機器は実験的な意味合い、本当に効果があるのかの確認、スタッフの技術向上のためにスタッフ間での施術を推奨しています。何回も地味に治療を継続することによって、肌はツヤツヤ、ハリもプルプル、シミなんて消え去った現在の免許証の写真と更新前の免許証の写真を比べると、明らかに若返っているのです。これをきっかけとして「5才若返りコース」なんてものを設けたのですが、今回提訴に至ったインチキと思われる美容クリニックが出現してくると今後はこのコースはお蔵入りにせざる得ないですね。効果があっても「4才と10ヶ月しか効果ないじゃない、キッー❗」って方が出てこないとも限りませんから。
美容系の治療を受ける場合、くれぐれも慎重に医療機関を選択していただきたいと存じます。なお、前述症例は個人が特定できないように、じゃかん話を盛ったり減らしたりしていることをご了承ください。
こんな患者さんは診たくない❗って症例はまだまだあるのですが、限りなく守秘義務や個人情報に抵触する可能性がありますので、今回はこのくらいにしておきます。