サラリーマン家庭で子供を医学部に行かせたい親御さん、もとを取るのは難しいよ❗

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医師って資格商売であり安定した職業であり、それなりのステイタスがあるから、自分の子供をぜひ医学部に入れたいと思っている親御さんも多いかと思います。

勉強ができれば(頭がいい必要はない)授業料が比較的安いとされている国公立の医学部へ、との考え方も成り立ちますがこれが当てはまる人ってかなり少ないのではないでしょうか?

子供を医師にしたい、医学部に入れたいとお考えの親御さんへ

ちょっと前「年収600万、子どもの偏差値40以上なら、医学部に入れなさい」(松原好之 講談社)なんて一般書籍が話題になったことがありましたが、可能性としてはゼロではないけど現実的ではない話だと思います。

昨今、私立の医学部も優秀な学生を確保するために大幅に学費を下げていて、この戦略が大成功例を生み出ししたために、現在各校が学費大幅減額作戦を取っています。

それでも医学部以外の学部と比較したらかなり高額ですし、国公立比べると雲底の差です。

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https://www.med-pass.net/rank/gakuhi/

この表は学費の安い私立医学部のランキングです。私の母校である横浜市立大学の医学部の初年度納付金は県内なら94万1000円、県外でも113万2000円、授業料自体は57万3000円です(私の時代は年間13万円❗くらいだった記憶あり)。

私立の上位校だと卒業までの6年間で3000万円程度、一番学費がかかる私立医学部だと4700万円は必要になります⋯この金額は儲かっていると言われている開業医であっても、かなり厳しいと感じるレベルです。

子供の教育資金を投資として考えることはあまり適切ではないと思いますが、投資としての効率や元手の回収は可能かを考えてみます。

さあ、私立の医学部に入学できました。親御さんとして投資は回収できるんでしょうか?

教育って一番コスパが良い投資である、と国家的に考えることはできます。

一方で子供の教育資金をマネー系の雑誌では投資と考える内容の記事が時々目につきます。

これを医学部に当てはめた場合、親御さんが投資した金額を回収することは可能かを考えてみますね。

医師になっても最初の3年間は研修医として働くことが一般的です(以前は2年間、別に研修医を経なくても開業さえ可能な時代もありました)。この研修医がこれまた大変で、朝から晩まで病院にカンヅメ状態であり、寝る暇もないのにかなりの薄給。

昔は無給の医師もいましたし、私学の場合は月給5万円なんて大学もありました。

過労死さえある過酷な研修医の実態に関して激しい議論が繰り返されていますので、私の時代よりは改善はされているはずですが薄給は薄給のはず(一般サラリーマンの初任給と大差ない)。

いくつかの調査がありますが平均年収.jpというサイトに寄れば265万から450万となっています(http://heikinnenshu.jp/iryou/kenshui.html)。

この稼いだ給与を全額親御さんに渡す医師はいないでしょうから、研修医時代に投資を回収することは無理ですね。じゃあ、研修医という修行時代を無事に通過して、病院勤務(勤務医)となったら投資したお金を回収できるでしょうか?

勤務医では投資したお金を回収するのは多分無理

研修医を経て勤務医になった場合の懐具合は一般病院に就職するか、大学病院に残るか、あるいは関連病院に勤務するかで少々違ってきます。

大学病院に残った場合はかなり悲惨なんです、だって教授クラスでも1000万円行くか行かないかレベルですから、普通は500万円以下と考えて間違いありません。

これでは親御さんが投資したお金を回収するのはまず無理です。

関連病院の場合はもう少し給与は良くて600万円以上は頂けることが多いのですが、40歳を超えないとある程度懐具合が良くなる1000万円にはなりません。

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http://www.doctor-concierge.jp/nensyu

女性医師の年収が男性より低いのは産休があったり、フルタイムで働く人が少ないためと説明されるようなことが多いようですが、今回はこの話題には触れません。

でも、でもよーく考えてみれば40歳を超えると結婚して家庭を営んでいる医師も多くなるはずなんで、親御さんに出してもらった学費を返すなんて余裕は無くなるんじゃないでしょうか?

となると40歳前後で開業という選択肢もありますが、実情は先日ブログにしましたけど、メッチャ余裕ってことは少なそうです⋯やっぱり開業医は儲かる?まあ、普通は儲かっていると思われていますけどねえ。

開業するに場合、親の医院を継ぐという選択肢もありますが、新規開業となると初期投資もかなりのものになりますし、開業したから流行る保証もありません。下手すらお子さんの開業資金の援助なんてこともありますので、投資として考えた場合の医学部の学費の回収は夢のまた夢。

入学金や授業料を確保したとしても、こんな落とし穴があるかも

無事に6年間の学費が3000万円程度の私立医学部にお子さんが入学したとします。しかし、無事に6年間で卒業できるとは限りません、私のような呑気な時代はすでに過去のものであって今の医学生はバイトの時間が確保できないくらガッチガチのカリキュラムをこなさないとなりません。

さらに国家試験の合格率を上げるために、厳しい授業についてこれない医学生はバンバン落第させられている模様です。

となると、6年間の授業料で計算していた資金計画に誤差、誤差といっても500〜600万円と大きな出費を負担しなければなりません。

前掲の年収600万なら子供を医学部に、との本はサラリーマン家庭でも子供を医学部に入れることができますよ、ってことを言いたいわけですが、年収600万でも手取りはそれより低くなるでしょうし、親御さんの生活費もあるのでかなり負担がかかるというか、まず無理なんじゃないでしょうか?

子供を医学部に入れたい⋯投資と考えたら成り立たないってことです❗

どうしても子供を医学部に入れたい、とお考えの方もいるでしょう。でも、今はよほどの進学校じゃないと現役合格は難しく、浪人することになります。医学部専門の予備校って私学の授業料高いところより実際は学塾代がかかります。

となると、子供さんに医学部に入るための学費を投資として考えると回収はまず不可能。もし立派な医師となって人様以上の収入を得たとしても、それが親御さんに返ってくる可能性も低そうです。

子供って常に親の脛をかじるもんだと諦めて、投資効果とか投資したお金を回収しようなんて思ってはならないようですよ。お父さん、お母さん❗

が開業医だと子供がそれを継ぐという前提の場合は初期投資の費用も補えるので、それなりに経済的な合理性はあると思います。

それ以外の場合医学部に進学させることは、収入ではなく安定したライセンス稼業にお子さんがつくことができた、と考えるしかなさそうです。

多くのサラリーマンの夢ってマイホームなんじゃないでしょうか?私立医学部の授業料で場所にもよりますが、マンション、上手くいけば一戸建てが買えます。お子さんの教育にそこまで資金を投下しなくても、子供の代、孫の代では住宅資金に苦労することは回避できるようにも思えます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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