「ノセボ効果」って知っている?プラセボの反対の効果でこれまた医療現場で混乱が❗

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プラセボ効果(プラシーボ効果)、つまり効果のない薬であっても一定数の人にとっては、なぜか効果を発揮してしまう不思議な現象は耳にしたことがあると思います。

薬の開発ではこのプラセボ効果を排除するためにダブルブラインド(二重盲検法)といって開発中の薬と全く効果の無い薬を二つのグループに分けた患者さんに服用してもらって、効果をみます。処方する側の医師もそれが本当の薬なのか、偽薬なのか判らない環境で処方するので二重盲検法と呼ばれるのです。

処方する側も薬を服用する側もバイアスがかからないようにしたにもかかわらず、ある一定数の方には全く効果が期待できない偽薬であっても、なんらかの効果がでてしまうことがあり、これをプラセボ効果と呼びます。プラシーボ効果と呼ぶ方も多いのですが、placebo を日本語風にしているだけでプラセボもプラシーボも同じ意味です(医療関係者はなぜか言葉を短縮したがる傾向があり、医師の多くはプラセボってよんでいるんじゃないかな?)。

ノセボ効果(ノーシーボ効果)でありもしない副作用がでちゃう

今回、話題として取り上げたいのは「ノセボ効果」⋯正式名称はnocebo effectですが、これもプラセボ同様にノセーボ効果と呼ぶ人もいます(プラセボ同様医師はどうしても短縮したい傾向があり、多くはノセボと呼んでいると思います)。

理論的には薬の効果として、あり得ないマイナス面がでるノセボ効果

このノセボ効果が医療現場に混乱を招いていることを、最近報道された給食関連事件から子宮頸がんワクチン問題までを「ノセボ効果」で解説してみます。

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http://wedge.ismedia.jp/articles/-/5510

ノセボ効果の問題点はこれかな?

プラセボ効果を「信じる者は救われる」と考えるとノセボ効果は「疑う者は救われない」って風になってしまい、これでは科学的な検証では無くなってしまいます。最近はかなり減少傾向にある超能力を取り上げたテレビ番組(昔はそれはそれは盛り上がって視聴率が稼げたらしいですね)の中で、科学的な検証を使用とすると「この超能力を信じていない人がいたので効果がでなかった」なんて言い訳をよく聞きました。カリスマ性のある超能力者の雰囲気に圧倒されて、ありえない超能力の効果を体現する被験者が出てしまうのは、プラセボで説明できます。

まあ、二重盲検法的な手法をつかった場合、超能力が発揮されないばかりではなく、トリックがばれちゃったことも多かったです、当時の超能力者番組では。

ノセボの問題点は出るはずのない副作用が出てしまうことです

人間の体は非常に多様性があるために、予期せぬ副作用が出てしまうことがあります。しかし、ノセボの場合は予期せぬ副作用だけでなく、理論的に説明のつかないマイナス効果がでることをノセボ効果と呼んでいるのです。

分かりやすい例としてこんなことがあります⋯「この薬の副作用として眠気がでる場合があります」と説明してカフェインを処方します。するとあら不思議、一定数の患者さんは次の診療日に「先生、あの薬を飲んだら眠くなっちゃいました」、こんなことが実際に起こり得るのです。

さあ、これからがノセボ効果の本題にはいります❗

最近、給食がらみの事件が多数報道されています。たとえば某県の某市で起きた「冷めた不味い給食」、異物が混入していた件についてはいくつかの憶測が報じられていますが、美味しい・美味しく無い、ってこれは個人個人の味覚にかなり左右される問題なんではないでしょうか?

給食関連ブログ 「食育」は怪しげな雰囲気が充満しているのか?トンデモ案件多発中❗

これとは別に考えてもらいたいのですが、実体験としてあるメニューを食べていた時に「これって不味くねえ?」と数人が言い出したら、たぶんその他の人も「そういえばこれ味がぼやけているね」とか「塩っ辛いよね」的な意見が出だすことって多いのではないでしょうか?味覚こそ多種多様であって、本当は自分は美味しいと感じても「これ美味しいよね」と社会的経験が少ない世代であったら言い出せないと思います。

こんな事件もありました。某学校でなにを勘違いしたのか、給食は完食するものであるとの信念を持ってしまった教師が無理やり生徒に食べさせたところ、嘔吐する生徒続出って話。果たして給食になにか嘔吐を招く微生物でも混入していたのなら、完食を自主的に行った生徒の中でも嘔吐という症状を訴える人がでたはずです。

強制的に食べされられたことが、ある生徒に対してかなりの精神的な苦痛となり、それが原因で嘔吐してしまったのかもしれません。1人が嘔吐すると、その嘔吐物を見たり、においを嗅いでしまって嘔吐の連鎖が起きることは、小学校時代の遠足で多くの人は経験しているんじゃないかなあ?

これらはノセボ効果とは少し違っているかもしれませんが、本来は起こりえない現象がなぜか見受けられることって意外と身の回りで多いのかもしれませんん。

子宮頸がんワクチンの副反応・・ノセボ効果なのか?

子宮頸がんワクチンという予防接種があります。一時は国の指導もあり、各行政機関が積極的にワクチン接種を推進してきました。しかし、一部の方に予想外の副反応(ワクチンの場合は副作用とは呼びません)が報告されたために、行政は接種を促す動きを抑えています。「Nocebo effects can make you feel pain」という論文がサイエンスに掲載されました。この中で

インフォームドコンセントの中のマイナスな情報がノセボ効果と強い結びつきがある

と指摘しています。予防接種の受診票には細々とした注意とともに、ありえる、あるいは今まで報告された予防接種のマイナス面も記されているとこが多いですし、予防接種を受ける際にネットで副作用・副反応を調べると、確率的にはかなり低いものでも目を引く症状が見つかるはずです。

私は患者さんは医師の言う通りに何事も信じて治療を受ければ良い、なんて考え方は一切しませんし、そのように接してます。

ありえないような確率の副作用であっても、絶対に起こりえないとは言い切れません。確率的に10万人に1人しか起こらない副作用であっても、10万人が治療を受ければ1人は必ず副作用がでてしまうことになります。薬が効果を発揮するということは、別の捉え方をすればその効果がマイナスになることもあることになります。

統計学的に処理されて副反応が出る確率より、自分にとって利益のある確率が高いことが判っている治療や予防接種は受けるべきなのではないでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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