ダイヤモンド・オンラインさま、医療記事を書くなら内容を精査してからにしてくださいませ❗

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皮膚科領域で使用されるヒルドイドという処方薬があります。

ヒルドイドの保湿効果が優れているとの話から、病気ではないのにヒルドイドの処方を求める患者さんが多数出現しており、先日、怒号飛び交う「ヒルドイド逆ギレおばさん」、どうして処方してくれないのよ❗という記事を書きました。

崩壊しつつある日本の国民皆保険制度、少しでも無駄な医療費を削減することは医師側も気をつけなければいけませんが、患者さん側も気をつけていただきたいとの気持ちで書きました。このヒルドイド美容目的使用問題は多くの人々の目に触れることが重要であり、多くのメディアがこの件について報道してもらいたい、と考えていますが⋯

ヒルドイドの美容目的使用は違法は間違いではありませんけど、内容に少々問題が

ダイヤモンド・オンラインに掲載された「「ヒルドイド」を美容目的で処方してもらうのは違法だ」におけるヒルドイドに関する記事中でいくつかの間違いと考えていい内容(ちょっと調べりゃすぐわかるはず)がありましたので、指摘させていただきます。昨今、医療記事や健康情報記事は内容の正確さが、以前と比較して厳しく求められています。

ヒルドイドにスプレーなんてありませんよ

問題のヒルドイド違法処方について書かれたダイヤモンド・オンラインはこれです。

画像

この画像はスマートニュースに流れてきたもので、元の記事は http://diamond.jp/articles/-/143046です。

記事で訴えたい内容に間違いはありません。しかし、このライターさん、しっかりと調査するというかヒルドイドに関して調べたのか、かなり疑問があります。まず、

ヒルドイドには、ソフト軟膏、クリーム、ローション、スプレーの4つの剤形があるが、いずれもヘパリン類似物質が0.3%配合されており、国が決めた薬価は1gあたり23.7円だ。たとえば、ヒルドイドソフト軟膏25gの1本あたりの薬剤料は590円になる

前掲サイトより ヒルドイドはヘパリン類似物質が含まれたマルホの商品名であり、一般名であることをこのライターさんはご存知ないのでしょうか?ヒルドイドソフト軟膏、ヒルドイドクリーム、ヒルドイドローション、ヒルドイドゲルの4種類が現在医療の現場で使用されています。

ヒルドイドにスプレー状のものは存在していません❗

確かにヘパリン類似物質配合でスプレー状のものはジェネリックで複数社から販売されていますが、ヒルドイドはあくまで固有名詞ですから「ヒルドイドスプレー」はありません。記事の言わんとするところは正しくでも、内容に間違い、それもちょっと調べりゃすぐにわかるような間違いがあると、記事全体の信頼度が落ちるのではないでしょうか?

追記

この記事の投稿から1年後の2018年9月にマルホから「ヒルドイドフォーム0.3%」という泡のスプレータイプが発売になりました。

ヒルドイドにアトピー性皮膚炎は適応はありません

アトピー性皮膚炎で医療機関を受診すると当たり前のようにヒルドイドクリーム、ヒルドイドソフト軟膏、あるいはヒルドイドローションが処方されますが、実は

どの形状のヒルドイドであってもアトピー性皮膚炎は適応症ではありません❗

こんなことは添付文書をネットで検索すればすぐにわかることなんですけど、この記事を書かれたライターさんは

ヒルドイドは、アトピー性皮膚炎やしもやけ、ケガをしたあとのケロイドの予防、打撲によるあざの治療などに用いられる外用薬だ。おもな成分は「ヘパリン類似物質」というもので、類似という言葉がつく通り、人間の体内にも備わっているヘパリンと似た働きをする物質が配合されている。

と前掲の記事中でお書きになっています。

各種ヒルドイドの効果効能は「血栓性静脈炎 (痔核を含む) 、血行障害に基づく疼痛と炎症性疾患 (注射後の硬結並びに疼痛) 、凍瘡、肥厚性瘢痕・ケロイドの治療と予防、進行性指掌角皮症、皮脂欠乏症、外傷 (打撲、捻挫、挫傷) 後の腫脹・血腫・腱鞘炎・筋肉痛・関節炎、筋性斜頸 (乳児期) 」と添付文書に記されています。

画像

「ヒルドイド 添付文書」で検索すれば、マルホのこんなページがすぐに見つかるはずですし(https://www.maruho.co.jp/medical/products/hirudoid/index.html)、独立行政法人医薬品医療機器総合機構の添付文書情報検索が上位に表示されるはずです。

医薬品の適応外使用(この記事では違法だあ❗ってことになっています)が記事のかなめなんですから、適応症を調べてから記事を書く必要があると私は思うのですけどねえ。

じゃあ、なんでアトピー性皮膚炎だとヒルドイドが処方されるの?

以前、マルホの方にヒルドイドの美容目的使用問題を指摘した時に、実はアトピー性皮膚炎も適応症じゃないんだよね、と話した記憶があります。アトピー性皮膚炎の場合、同時に「皮脂欠乏症」を合併することが多いので、レセプトには病名として「アトピー性皮膚炎」そして「皮脂欠乏症」を併記しているのが一般的です。健保組合の中には太っ腹なところもあるため「アトピー性皮膚炎」だけの記載でも、レセプトの返戻あるいは点数削除は行わないところもあるようですけど。

ところで

ダイヤモンド・オンラインの記事中にある「打撲によるあざの治療」ってなんだあ?

また皮膚をぶつけて生ずる出血斑(打ち身)をアザと称する人もいますが、出血斑であれば、放置していても自然に消失しますので、患者さんにとって、特に深刻な問題となることはありません。そのためアザといえば色の変化がずっと残ってしまうものをいい、通常は生まれつきか生後間もなく生ずる色の変化をアザといっています。

日本皮膚科学会 皮膚科Q&A 「Q1アザとはなんですか?」より 病気に対する記事を書くなら病名の定義くらい確認しましょうね❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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