トンデモさんからのDM、オーソモレキュラー療法セミナーのお誘い。

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私が嫌いなものが2つありまして、ひとつは一見科学的に見えて実はトンデモであるニセ医学、もう1つがセミナービジネス(特になんとか資格養成講座)。その嫌いなものが見事に融合したトンデモ医学セミナーへのお誘いのDMが届きました。オーソモレキュラーというトンデモ系栄養療法セミナーのお誘いでございます。

オーソモレキュラー養成講座、これこそ飛んで火に入る夏の虫❗

もう季節は秋ですが(笑)パンフレットを隅から隅までじっくり拝見させていただきました。オーソモレキュラーというのは代替医療の一つで食事制限をしたり、ある一定の食物や600成分を非科学的に崇めて「だけ食い」を推奨したりする民間療法です。

オーソモレキュラー養成講座

名付け親はノーベル賞ダブル受賞のライナス・ポーリング博士らしいです。そうですビタミンCを大量に摂取すると病気にならないだけじゃなく、がんまで治ってしまうという高濃度ビタミンC大量点滴というトンデモ医療の普及に人生の後半を費やしたポーリングさんです。

オーソモレキュラーは英語で「Orthomolecular」ですが、Ortho+molecularで「正しい分子」を表す造語です。要するに体に自然な物質を最適量だけ摂取することによって、病気を予防したり、病気を治療したりする

いかにも自然派のみなさんが喜びそうな栄養学風のトンデモ系ニセ医学の一つです

このオーソモレキュラーを学んで、医師と患者さんの架け橋になりませんか?という養成講座のパンフレットが私の手元に舞い込んだ、というしだいです。

分子栄養学とはなんぞや?

パンフレットを読むと「Orthomolecular medicine」は分子栄養学あるいは分子整合栄養医学と訳すそうです。このあたりからかなり雲行きが怪しくなってきます。

少なくとも分子栄養学なる学問は正式な医学分野には存在しませんし、分子整合栄養医学となるとかなりトンデモ臭が漂ってくることに多くの方がお気づきだと思います。

「この食べ物って体にいいのよね〜」は日常の会話で普通に行われていることですが、「この食べ物を食べると病気が治るのよね〜」になるとかなり怪しげになってきます。

さらに「これさえ食べておけばこんな病気は治っちゃうのよ〜」になってしまうと「ばっか食い」になってしまい、栄養が偏ってしまい病気の原因になってしまいます。季節季節のものを満遍なく偏らない食生活が健康を維持するとの考え方(私など)とある一定の食物を体に良いのとの理由からばっか食いを拗らせたのが信奉者と意見が合うはずがありません。

オーソモレキュラー療法を推奨している医療機関って結局サプリメントを処方として販売しているんだもん。サプリメントって自然界にある物質を抽出しているのに、なぜ自然療法派信奉者がありがたがってバカバカ摂取しているのもかなり謎です。

オーソモレキュラー養成講座の内容⋯やっぱりね

手元にあるオーソモレキュラー養成講座のカリキュラムを見てみると、やっぱりね的にサプリメントの特長、ケトン体が人類を救う、ケントン体ダイエットでエイジングケア、などが並んでします。

糖質制限ダイエットの亜流と思われるケトジェニックダイエットを行いつつ、不足するであろう栄養素をサプリで摂取して、って寸法のようです。

病気にならないような食生活はありだと考えますが、ある特定の病気、特にがん治療の代替療法あるいは補完療法となりうる食生活は現時点では特定されていません。しかし、やっちまっていますね、オーソモレキュラーを取り入れた自由診療クリニックは、がん治療に高濃度ビタミンC点滴療法を❗

ちなみに国立がんセンターのがん情報センターの「科学的根拠に基づくがん予防とは」では次のように述べられています。

食品や栄養素はバランスよくとり続けることが前提であり、これがいい、あれがいいという情報にいちいち振り回される必要はありません。生活習慣としての食習慣を改善することと、1つの食品をそのときだけたくさん食べることは、全く違います。また、通常手に入らないような特別な食品を、高いお金を出して買う必要もありません。がんをはじめとする生活習慣病の予防は、それほど簡単に劇的な効果が期待できるというものではありません。

さらに「がん体験者の食事についての研究状況」では以下のようにきっぱり言い切っています。

ガイドラインが勧める食事についての内容は、いたってシンプルです。特<定の食事療法、サプリメント、健康食品などは勧められていません。

万が一、藁にもすがる時はこれを読みましょう❗

オーソモレキュラー療法が科学的検証がなされているか甚だ疑問があります。オーソモレキュラーに関する医学論文は確かにいくつか存在しますが、医学的に効果がある治療法であるためにはこれらの手続きを経ないとなりません。

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がんの代替医療の科学的検証に関する研究「がんの補完代替医療ガイドブック(第3版)」より もしも、病気になって代替療法を試そうと思った場合はこのPDFをよくお読みになることを強くお勧めいたします。

万が一、病気になった場合生活習慣の見直しをすることは必要です。しかし、ある特定の食べ物や栄養ががんを治すことは科学的な手法によって証明されていません。科学的に証明されていない治療方法を一般の方や有資格者を対象に行われる「オーソモレキュラー養成講座」、そしてこの講座が進めるクリニック(パンフレットでは特薦クリニック一覧と書かれています)医療機関を選択するときのリトマス試験紙としての利用法もあるかもです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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