ハーブティーで不妊症が改善⁉なんだかヘンテコリンな助産師さんがいますね。

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先日、かなーり妙なトンデモ系民間医療のチラシをゲットいたしました。

そのチラシには「膣美管理」「子宮・卵巣・卵管ドレナージュ」「膣しめ矯正」などの言葉が並んでしました。

今、妊活中のグッズが熱い❗でも科学的・医学的根拠あるの?

多分、妊娠を望んでいる方、あるいは出産後の下半身方面のメインテナンスを行うという意味と思われるトンデモ系民間医療のチラシですが、不妊に悩む方を対象とした別の民間医療の折り込み広告には「先生のおかげで子宝に恵まれました」的なお客様の声がチラシの裏面を占めていました。

ここ数ヶ月で健康食品から医療機関に到るまで行政の動きが激しくなっています

例えば消費者庁は2017年7月17日に「打消し表示に関する実態調査報告書」で、健康食品の広告に対して「強調表示」「打ち消し表示」の実態調査の結果を公表しています。また医療機関向けとして、厚労省に委託された日本消費者協会が「医療機関ネットパトロール」を開始して、非科学的な医学表現の実態の収集をはじめました。となると、この広告ってどうなんでしょうか?

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https://www.amoma.jp/product/ninkatsu/201603/lpodsp01_01.html utm_source=lpgicad&utm_medium=cpc&utm_campaign=logicad_ninkatsu_pc_dsp 

このハーブティー、明らかに不妊症に効果があるように見えるんですけど❗

今回の規制以前から消費者庁は「優良誤認はいかんよ」と指導しています。さらに、さらに

このハーブティー、オーガニックを強く謳っていますが⋯商品自体にどう見ても「有機JASマーク」が見当たりません

老眼なんで私の目に見えない場合もあります⋯これが「打ち消し表示」ね(笑)。

ハーブティーで妊娠しやすくなる、とのエビデンス問題

実は私、産婦人科方面、特に産科方面を非常に苦手としています。しかし、本職の泌尿器科として考えてみれば妊娠という現象の一方で大きな役目を果たしているのも泌尿器科の守備範囲。男性側の不妊症の原因として大きく二つに分けることができます。一つは泌尿器系の疾患によって精子が作られない、あるいは精子の発育不全、もう一つが性交ができない場合です。

「マカ」と呼ばれるサプリの原料がありますが、これが男性不妊症に効果があるかのように広告しているものがありますが、多分その効果は精力増強という漠然としたものに対する期待であり、不妊症に対してのエビデンスを明らかにした信頼度の高い医学論文はありません。

このハーブティーを推奨している助産師の浅井貴子さんによれば「授かるためにはカラダを整えることが大切」であり「お腹やお尻は十分に気を使いましょう」でもあり「心とカラダのバランスを整えることが大切」だそうです⁉この文章だけを抜き出して読んだら、何を言っているのか意味不明。でも、前後のハーブティーを見れば

このハーブティーを飲めば妊娠できる❗

と多くの不妊に悩む女性は考えるはずです。この「妊活ブレンド」のハーブティーの成分はこれらと表示されています。「シャタバリ」「ラズベリーリーフ」「ジンジャー」「ネトル」「ローズヒップ」の世界の妊活ハーブのトップ5プラス、日本人の体質に合わせたのか「オレンジピール」の6種類のハーブで構成された「妊活ブレンド」だそーです。そして、お約束のお客様の声。

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前掲サイトより はい、赤線で囲ったところが「打ち消し表示」です。あくまでお客様の感想であって、あなたが妊活ハーブを購入しても、必ず妊娠するワケじゃないよ、とのエクスキューズを表記しておけば「効果がなかった」との苦情に対応できると今までは考えられていたんですね。これに問題がある、今後厳しく指導するよ、と宣告しているのが消費者庁なのです。

添加物無使用、オーガニックハーブのみ使用と強調していますが⋯

添加物の基準もオーガニックの基準も国によって違いがあります。

オーガニック流行りですが、そもそもオーガニックの意味や定義を知っていますか?

例えば米国は大量に牛肉を消費しますので、今問題となっている腸管出血性大腸菌感染症の原因である、O157に感染するリスクが日本より数倍高くなってしまいます。そのために殺菌剤等が使用されているのですが、日本の基準に合わせるとアウト。無農薬に関しても「農薬」と指定されていない殺虫効果のあるものを使用する、なんて裏技もあります。

国の気候風土に合わせた無添加・オーガニックがあるということは豆知識として記憶しておいてくださいませ。日本の場合は「有機JASマーク」があり、このマークのない農産物や農産加工物を「有機」「オーガニック」と表示されることを禁じています。

この妊活ハーブですが、有機JASやオーガニックや英国のオーガニック認証マークに関する記述ありますが、なぜか商品自体に「有機JASマーク」が見当たりません。まあ、自社製品にJASマークを表示するか否かは製造業者の判断に任されているので、あえて表示しなかったんでしょうねえ。

妊活ブレンドに不妊症を解消する成分があるのなら、なぜ国家を挙げて研究しないの?

ここで冷静に考えてみましょう。日本は開闢以来の少子化という大問題を抱えています。社会環境・経済環境も大きく影響しているでしょうけど、この妊活ブレンドハーブティーをお飲みになって、妊娠して授かった❗と感激している方は「挙児希望」の方々です。そんな不妊に悩まされた彼女たちが

妊活ブレンドハーブティー飲んで、効果があったのなら製薬会社は間違いなく有効成分を研究して、処方薬として売り出すはずです

しかし、妊娠しやすくなる薬の開発をどっかの製薬会社が行なっているとの情報はありません。創薬から薬として承認されるまでは莫大な費用が必要です、でも承認されたら巨大な利益が得られるはずの妊活方面の薬なんですけど⋯これらのハーブが有意に妊娠に貢献するエビデンスがないから手を出さないのが大きな理由、可能性の少ない研究を行なったら経費の無駄使いとして株主から猛抗議を受けます。

まとめます⋯妊活ブレンドと称するハーブティーによって妊娠しやすくなることはあり得ません、ただ体を温めているだけじゃん❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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