「誕生学」の大葉ナナコさん、男性不妊症の原因が電磁波って本当ですか⁉

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不妊症とはWHOの定義としては、結婚して2年経つが妊娠しないことです(もちろんその期間にご夫婦で仲良くすることが前提)。少子化の影響によって不妊問題がかなりクローズアップしていることは多くの方がご存知だと思います。私、産婦人科方面の知識が特に産科方面の知識が学生時代で止まっているために(理由は後述)、産科ものにはブログで手をほとんど出していませんでした。

しかし、ここ最近助産師さんがヘンテコな事故を起こしたり、トンデモ系の妊活グッズがメルカリで販売されたりと産科方面が賑わっています。

男性不妊症の原因は電磁波??

女性向け思われる情報サイトの「All About」をのぞいたら、トンデモない方を見つけちゃいました(自分のトンデモ遭遇度、非常に高率なんです)。

誕生学という不思議な考え方に重きを置いた大葉ナナコさんの男性不妊症の説明がヘンです❗

だって男性不妊症の原因が電磁波だって、大葉ナナコさんは言っているのですから

世の中に科学的な知識不足のために電磁波恐怖症の方がいることは以前から存じ上げています。での電磁波恐怖症の人って電磁波とはどんなものか、正しい知識を持っているとは思えない方がほとんどです。じゃあ、どうして電磁波恐怖症という考え方が流布しているかといえば、いらん不安を煽って自分の商売に繋げる輩がいるからなのです。

100万歩譲っても、電磁波と男性不妊症の関係って、因果関係じゃないよ❗

IH調理器の電磁波が発がん、流産、自殺、催奇形性の原因となる、なんてヘンテコな説を唱えているロバート・ベッカーという人がいるらしいですが、信者さんは電磁波の世界的権威なんて崇めていますが実態はかなり怪しげ。

電磁波による健康障害、でもIH調理器で健康は害しないだろうけどね❗

電磁波が男性不妊症の原因となっている、と記載されている大葉ナナコさんはどっからそのトンデモ話を仕入れてきたのかわかりませんが、少なくとも彼女の経歴から見て医学専門誌でないことが予想されます。確かに以前 スマホをポケットに入れると精子の数が減るなんて話が出たことありますけど、それをどっかのサイトで見て

近年はパソコンを使った仕事をする人が増えたことから電磁波による影響も多いと言われています。

https://allabout.co.jp/gm/gc/188932/

なんて感じの応用系を思いついたんでしょうね。万が一、スマホにしろパソコンにしろ男性不妊症と関係性があったとしても、それは原因と結果の因果関係じゃなくて、単なる相関関係だと思いますよ。近年、男性不妊症が増えた、あるいは精子の数が減った、とのデータがあったとします。それと同じように最近はスマホも増えていますし、パソコンも増えていますもんね〜。

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http://www.tylervigen.com/spurious-correlations

これニコラス・ケイジが映画に出演した回数とプールで溺れた人の数なんですけど、全く同じような曲線を描き、ニコラス・ケイジの映画が増えれば増えるほど、プールで溺れる人が多いことがわかります⋯これは全く関係あるわけないじゃん、スマホやパソコンの普及より男性不妊症に影響を与えると思われる因子は他に多数ありまぜ、大葉ナナコさん。

標準医療の男性不妊症の考え方

男性不妊症を専門とする医学分野は泌尿器科です。大葉ナナコさんは「男性の不妊治療専門は男性科へ」と述べていますが、男性科を標榜している大学病院は東京大学くらいなもので、しかもそれは「泌尿器科・男性科」となっています。確かに学会内でも「婦人科」が存在するのだから「男性科」があってもいいんじゃないとの意見は出ていますが、医療業界においては残念ながら一般的とはなっていません。

日本泌尿器科学会で男性側に原因があると考えられている不妊の原因は精索静脈瘤・閉塞性無精子症・非閉塞性無精子症です。無精子症の原因として「電磁波」なんて記載は一切ありません(日本泌尿器科学会)。

じゃあ、電磁波が男性不妊症の原因って誰が言い出したんだ❗

と一次ソースを探してみると、私のEvernoteにあるのは「Why Catuses a Low Sperm Count?」とのタイトルで書かれたLIVE SCIENCEという科学分野のトピックスを集めたサイトです。フランスの研究で
精子の数が減っていることが確認された、ってのが記事の内容。そこに書かれている原因としてはビスフェノールA・STD・ストレス・肥満・殺虫剤・テレビ視聴が精子の減少と関連性がある因子とされています。

精子の数が減っても妊娠は可能です❗

まあ、精子自体が減っているのか?という素朴な疑問に対しても「そんなことないよ❗」と意見も出ています。現に南米やアフリカの男性の場合、精子の減少は起きていません(Newsweekなど)。WHOによれば精子の数は1ml中1500万あれば受精には十分(それ以下だと乏精子症)とされています。

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http://www.jsrm.or.jp/document/funinshou_qa.pdf

まあ、年齢が高くなればなるほど、精子の数が減ることは確実ですが、少なくとの日本人の精子の数が減っているとの信頼度の高い医学論文は少なく(大学の先輩の岩本晃明先生のものくらい、でもこれはパソコンもスマホも今ほど普及していない1999年から2002年の研究)、ましてやその原因がスマホやパソコンの電磁波である、なんてものも見つかりませんでした。

ヘンテコなご意見をお持ちの大葉ナナコさんが主催されている「誕生学」、これもこれからちょいとばかり調べてみる予定です❗

おまけ:私が産科ものに弱いのは、学生時代に出産時の回旋がどうしても憶えられなかったからです。

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https://www.britannica.com/

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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