前立腺がんとは
前立腺がんは、前立腺 (外腺) に発生する男性だけのがんで、加齢とともにその発症率が上昇します。男性が罹患するがんとしては、胃がん・肺がん・大腸がんを抑えてがんのなかで一番多いものです。40代で発症することはまれですが、80代の方は半数に前立腺がんがあるという考え方が一般的です。早期発見ができれば多くの方は前立腺がんが原因となって命を落とすことが少なくなっているがんです。注意としては父親や兄弟に前立腺がんに罹った方がいる場合は前立腺がんになりやすいことです。
前立腺がんは比較的進行がゆるやかで、男性ホルモンががんの増殖を促していると考えられています。男性ホルモンの作用を薬で抑えるだけでも、ほとんどの前立腺がんは良好にがんを抑えることが可能になっています。
症状
一般的には無症状で、検診や人間ドックなどでPSA検査をきっかけとして見つかる場合が多く見られます。また、前立腺肥大症の治療に際して行われるPSA検査やエコー検査で見つかる場合もあります。
症状が出るとしたら、前立腺肥大症と大変似ています。尿の勢いが悪い、切れが悪い、残尿感などの排尿障害等があり、この症状だけでは良性、悪性の区別はできません。しかし、がんが進むと血尿が合わられたり骨転移に伴う腰痛などで見つかる場合もあります。逆にいえば症状だけでは見つかりにくいのが前立腺がんの特徴とも言えます。
原因
欧米型の食生活の普及により増加してる傾向があり、食事が原因の一つと考えられています。乳製品などの高脂肪の食事が前立腺がんのリスクを高めるとの説もありますが明確にはなっていません。加齢とともに発生率が上昇することは明らかになっているので、現在で男性が発症するがんでトップになっているとも考えられます。繰り返しになりますが、父親あるいは兄弟が前立腺がんであると前立腺がんのリスクは高まることが知られています。
診断と検査
前立腺がんの診断で有用なのは「PSA (前立腺特異抗原) 」と呼ばれる腫瘍マーカーで、これが高い値を示す場合、高頻度に前立腺がんが発見されます。
しかし、PSAが高値を示すのは前立腺がんだけでなく、細菌性による炎症や高度の前立腺肥大でも見受けられることがあるため、慎重に対応する必要があります。他のがんと違って前立腺以外の臓器に影響されないために「特異抗原」と呼ばれています。一回でも検査でPSAが高い値を示した場合は泌尿器科を受診することが強く推奨されます。
PSA検査で前立腺がんが疑われる場合、実際に前立腺の組織を採取し、がんの有無を調べることにより確定診断を行います。
当クリニックの考え方・治療方法
当クリニックでも超音波所見、PSA値およびMRIなどを総合的に見て確定診断に必要な前立腺針生検の要否を検討します。
PSA検査で前立腺がんが疑われる場合は、直腸より針を前立腺へ前立腺針生検が必要となります。当院ではMRIを参考にすることにより、的確にがんが疑われる部分を12ヵ所を狙い撃ちする前立腺針生検を日帰りで行っています(要予約)。当院のデータではがんの検出率も大病院に入院して行う前立腺針生検と大きな差はありませんので、入院が必要と考えている大病院より当院へ紹介される患者さんもいます。
手術
前立腺がんと診断された場合は、いくつかの条件のもとに手術が選択されます。手術は開腹するもの、小さな穴を開けて前立腺がんを摘出するもの、さらにロボット手術「ダヴィンチ」が近年脚光を浴びています。
それぞれの手術は病院によって得意・不得意があるため、当クリニックの連携病院がどんな手術方法を得意とするか常に情報交換をすることで、患者さんの生活背景をお聞きしながら最適な治療施設をご紹介しています。
以上のような手術が必要な時は主に東京医療センター・東京共済病院・順天堂大学・東京大学・がん研有明病院などをご紹介しています。
ホルモン治療
当クリニックでもホルモン治療は可能であり、多くの方が注射薬の使用で良好ながんのコントロールを得られています。
ただし、がんの根治を目的にした治療ではないので、効果が2〜15年くらいでなくなることがあります。このため比較的若い方には手術や放射線治療といった根治的治療が必要になります。手術加療の利点は比較的短期間で治療が完結することと、完全にがんを摘出できる可能性があることです。短所としては術後しばらく尿漏れがあることがあり、男性機能障害が必発となります。
他の病院で手術を受けた後、放射線治療を受けた後にホルモン治療を追加する場合がありますが、当クリニックでも対応可能です。
放射線療法
「国立国際医療研究センター」より
※当クリニックの連携病院です
放射線療法も根治的治療であり、長所は人体への極度の負担がないため重篤な持病を持った方、高齢の方でも治療が行えることです。
方法は、体外から前立腺を目がけて照射する外照射と、放射線を出す針を前立腺に数十本埋める小線源療法があります。外照射であれば治療期間は1〜2カ月かかり、小線源であれば数日の入院が必要です。
また、近年ではIMRTと言われるがん細胞に集中して放射線を当てる治療もあり、通院での治療が可能です。経験豊かな施設と密接な連携を取っていますので、ご相談ください。
手術加療と放射線治療のいずれの方法にしても、当クリニック連携の専門病院へご紹介し加療することで、これまで多くの患者さんががんを根治されています。
「国立病院機構東京医療センター」泌尿器科 斉藤史郎 ※当クリニックの連携病院です
飲み薬
再燃性の前立腺がんに対し、抗がん剤とホルモン剤を組み合わせた飲み薬のエストラサイトを当クリニックで処方し、がんの進行を遅らせる治療を行っています。ここ数年でさらに従来のビカルタミド、フルタミド、クロルマジノンに加えて、エンザルタミド、アビラテロン、アパルタミド、ダロルタミド、BRCA変異ある前立腺がんにはオラパリブなどが続々と承認され保険適用となっています。
前立腺がんに処方される主な薬
ビカルタミド錠
製薬会社名
沢井製薬株式会社
主成分
ビカルタミド
作用・効果
前立腺がんのホルモン治療
用法・用量
成人は1回1錠(主成分として80mg)を1日1回服用
副作用
乳房痛、女性化乳房
その他
前立腺がんの飲み薬です カソデックスのジェネリックです
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