尿が漏れる(尿失禁・尿漏れ)

尿が漏れてしまう尿失禁とは

尿失禁とは自分の意思に反して尿が漏れることです。思いがけないタイミングで尿が出てしまうため、自分の意思では制御できませんので日々このような症状が繰り返されると、外出することが不安になってしまったり、いつもトイレのことを気にするようになってしまったりと、生活に支障を来してしまいます。

尿漏れは、男女ともに加齢に伴って悩まされることが多くなります。女性では成人女性の4人に1人が尿失禁の症状を経験し、20代からこの症状に悩むことも少なくありません。また、男性の場合は加齢や病気の発症をきっかけに尿失禁の症状が現れることがよくあります。

症状

尿失禁(尿漏れ)と一口に言っても、その症状はタイプによって少しずつ異なります。失禁には、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁、溢流性尿失禁、機能性尿失禁といった種類があります。ご自身の失禁がどのタイプなのかを知ることが大切です。種類に応じた適切な治療を受けるためにも泌尿器科を受診しましょう。

原因

尿失禁を引き起こす病気や原因はさまざまです。大きく分けると主な原因として、筋肉の緩み、内臓の不具合、精神的な理由、生活習慣の4つが挙げられます。

筋肉の緩み

尿道や膀胱は「骨盤底筋群」に支えられています。この筋肉群の働きが弱くなると、尿を止めておく力が弱くなって頻尿や尿失禁につながります。腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁がこれに該当します。男女ともに骨盤底筋を鍛える体操が有効だと考えられています。

内臓の不具合

膀胱炎による頻尿を繰り返すことや、糖尿病の合併症による神経障害で尿を出しづらい状態になることから、尿失禁につながることがあります。男性の尿失禁は前立腺肥大症を、女性の場合は骨盤内の臓器(膀胱や子宮、直腸)が骨盤の外に脱出する「骨盤臓器脱」を併発することが多いという特徴があります。内臓の不具合が尿失禁の大きな原因になっている場合には、その根本を治療する対処が必要になります。薬による治療や手術による治療があります。

精神的な理由

精神状態と排尿には関連があります。緊張すると尿が近くなる経験をした人も少なくないでしょう。このように、尿失禁につながるような身体の不調が見当たらないにもかかわらず、精神的な理由で頻尿や尿失禁が起こることもあります。不安や緊張など、過度な精神的ストレスから尿が出せなくなることもあります。

生活習慣

尿失禁と関連がある生活習慣には、喫煙が多いことや、カフェイン・お酒・水分の摂取過剰などが挙げられます。しつこい便秘を繰り返している人は、いきんで排便することが習慣になり、骨盤底筋を緩ませる原因になっている可能性もあります。肥満も尿失禁につながることがあり、減量が尿失禁対策に功を奏することがあります。生活習慣病などの持病がある方は、かかりつけ医とも相談の上で減量に取り組むのもよいでしょう。

このようにさまざまな原因で尿失禁が起こることから、病気が隠れていないかをきちんと検査して対処法を検討することがとても重要です。

診断と検査

問診

問診では、どんな時に尿失禁が起こるのか、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁の原因になるような病気や手術、出産の経験があるかなどを確認します。

検査

検査では、まず尿路感染症がないかどうか尿検査を行います。尿路感染症がある場合にはその治療をします。

男性の尿失禁の特徴

男性の場合、生活に支障を来すような深刻な状態になってから受診されることも多くあります。

男性器の特徴として、まず前立腺があること、そして尿道が長く屈曲しています。ですので加齢とともに増える前立腺肥大症に伴う排尿トラブルや、排尿後しばらくしてから尿道に残っていた尿が出てきてしまう排尿後尿滴下といったトラブルが起きやすくなります。

女性の尿失禁の特徴

女性は膀胱や尿道などを支える骨盤底筋の力が男性よりも弱く、尿道も短いことが特徴です。このため加齢だけでなく、お腹に力がかかるような動作、出産や便秘など骨盤底筋への負担が筋肉の緩みの原因になります。特に腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁が多くなります。

当クリニックの考え方・治療方法

最近では尿失禁の原因が医学的に解明され、治療方法はもちろん、たくさんの薬剤ができており、選択する幅が広がりました。治療に当たっては確実な診断が必要とされます。確実な診断には特別な検査機器を使用しなくても、ほとんどの場合は症状を詳しくお尋ねすることで確定診断を行えます。

尿路感染症がなく腹圧性尿失禁の場合には、投薬による治療を行います。主に、スピロペント錠、トリプタノール錠といった薬を処方しています。切迫性尿失禁の場合には「過活動膀胱(OAB)」についての適切な治療を行います。腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁はどちらか単独で起こる場合もありますが、両方が合併している場合もあります。

また、腹圧性尿失禁で重症の場合には手術という選択肢もあります。その場合には尿失禁の専門的な治療で実績が高い連携病院に紹介いたします。

処方される主な薬

スピロペント錠
スピロペント錠
スピロペント錠

製薬会社名

帝人ファーマ株式会社

主成分

クレンブトール

作用・効果

腹圧性尿失禁の改善

用法・用量

成人は1回1錠(主成分として20μg)を1日2回、朝および就寝前に服用

副作用

頻脈、高血圧

その他

喘息にも使用される薬ですが尿道括約筋を引き締める効果によって失禁を防ぎます

トリプタノール錠
トリプタノール錠
トリプタノール錠

製薬会社名

日医工株式会社(旧万有製薬株式会社)

主成分

アミトリプチニン

作用・効果

遺尿症、夜尿症の改善

用法・用量

成人は1回1〜3錠(主成分として10〜30mg)を1日1回就寝前に服用

副作用

眠気

その他

子供のおねしょに効果がありますが、成人でも夜間頻尿に効果を効果を示します

 

切迫性失禁は過活動膀胱 (OAB) に同じ

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著者

桑満おさむ医師

このページの文責:桑満おさむ(医師)
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区で五本木クリニックを開院。

患者さん1人ひとりのホームドクターになるという理念のもと、常に敷居が低くどなたでもお気軽に来院できるクリニックを目指し、とくに日帰り検査・手術に力を入れています。技術の向上はもちろんですがより新しい医療機器や治療方法・医学情報の提供につとめています。患者さんとの会話を大切にしています。

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