過活動膀胱(おしっこが我慢できない、トイレの回数が多い)

過活動膀胱とはどんな病気?

過活動膀胱の読み方:かかつどうぼうこう、です。過活動膀胱は比較的新しい概念で、英語表記だとOver Active Bladderで略してOAB、と呼ばれることもあります。

尿が溜まるのは膀胱ですが、尿自体が作られる場所は腎臓です。腎臓でできた尿は、腎盂を経過して尿管という管を通って膀胱に貯まっていきます。尿がある一定以上たまった時に感じるのが尿意です。この尿意を実際に感じるのは脳(視床下部から大脳皮質の知覚領と呼ばれる場所)です。脳からの指令で膀胱の筋肉を収縮させて排尿する、これが私たちが日々行なっている排尿の仕組みです。

この排尿システムの中で膀胱が敏感になり、おしっこがためにくい、我慢がきかない、急に膀胱が収縮して失禁をしてしまうのが過活動膀胱です。

正常な膀胱と過活動膀胱との比較イラスト

このように膀胱が過敏に反応してしまう・脳で膀胱の制御ができなくなる症候群です。

過活動膀胱でお悩みの患者さんは年齢とともに増えていきます。60歳代で10人に1人、70歳代では5人に1人の割合で症状が出ていると考えられています。

近年、日本における過活動膀胱の患者さんは800万人とのデータもありあり急増しております。年齢に関係なく若い方でも過活動膀胱になる方は少なくありません。

症状

切迫感を伴う頻尿が中心で、時にはトイレに間に合わなくなって漏れてしまう切迫性尿失禁といった症状があります。膀胱の排尿する活動が過剰になっており、時には排尿の自制がきかず勝手に膀胱が排尿してしまうような病態です。

水を触ると尿意が起きる、水がしたたり落ちる音を聞くだけで尿意が起きる人もいます。夜間頻尿を主訴とする方もいます。頻尿には個人差がありますが、目安として日中のおしっこが2時間持たない方は、過活動膀胱の可能性があります。

また、頻尿や失禁をともなわなくても、普通ではない急激に襲ってくる強い尿意、我慢のできない尿意だけでも過活動膀胱と診断ができます。

過活動膀胱症状質問票(OABSS)

質問3の点数が2点以上、かつ全体の合計点が3点以上であれば、過活動膀胱と強く疑われます。
下記の質問票で高い点数が出た方は、一度ご来院の上ご相談ください。

過活動膀胱症状質問票

原因

神経因性過活動膀胱(神経のトラブルが原因)

脳卒中や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの脳の障害、脊髄損傷や多発性硬化症などの脊髄の障害の後遺症により、脳と膀胱(尿道)の筋肉を結ぶ神経の回路に障害が起きると、「膀胱に尿がたまったよ」「まだ出してはいけないよ」「もう出していいよ」「膀胱を緩めるよ(締めるよ)」「尿道を締めるよ(緩めるよ)」といった信号のやりとりが正常に働かなくなります。

その結果、膀胱にたまっている尿が少量でも尿を出そうとしたり、「締める」「緩める」の連携がうまく働かなかったりして、過活動膀胱の症状が出るのです。

非神経因性過活動膀胱(神経トラブルとは関係ない原因)

  • 骨盤底筋のトラブル

    女性の場合、加齢や出産によって膀胱・子宮・尿道などを支えている骨盤底筋が弱くなったり傷んだりすることがあります。そのために排尿のメカニズムがうまく働かなくなり、過活動膀胱が起こります。

  • それ以外の原因

    上記以外の何らかの原因で、膀胱の神経が過敏に働いてしまう場合や、原因が特定できない場合もあります。いくつかの原因が複雑に絡み合っていると考えられています。この原因の特定できないものや加齢によるものが、実際には最も多く存在しています。

診断と検査

過活動膀胱の診断でもっとも大切なのは患者さんから症状を伺うことです。血液検査で診断はできません。CTやMRIでも診断はできません。過活動膀胱の治療に有効で簡単な非侵襲性の検査は、膀胱の神経がダメージを受け、排尿ができない状態の「神経因性膀胱」かを鑑別診断するために、超音波を使った残尿測定です。

排尿記録を付けていただき、実際に1日にいつ何回トイレに行ったか、1回当たりの尿量はどのくらいかを測定することが診断にとても役立ちます。

治療方法

過活動膀胱の治療の基本は薬の服用と生活指導・おしっこを膀胱にためることができるようにする運動の指導といった行動療法です。

ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法

これは新しい治療方法で2020年4月より保険適応となりました。手術療法ですが短時間でできる日帰り手術です。詳しくは下記の記事をご覧ください。

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

ボトックス注射を使った過活動膀胱治療が、やっと日本でも保険適用されました❗

過活動膀胱へのボツリヌス毒素を膀胱内に注入する治療は保険適用(2020年4月より)です。過活動膀胱は突然トイレに行きたくなり、我慢が難しい尿意切迫感や我慢できずにお漏らししてしまう切迫性尿失禁や頻尿です。ボトックス注射を使った過活動膀胱治療は、どこの泌尿器科でも受けられる治療ではありません。詳しく解説します。

薬物療法

最近では過活動膀胱に効果的な薬剤が数多く登場し、治療の選択する幅が広がりました。具体的にはベシケア・デトルシトール・ウリトス、さらには全く違った作用で効果を現すベタニスなどがあります。

当クリニックの考え方

患者さんの中には、排尿記録を付けていただくだけで症状が治まってしまう「精神的・神経的」な場合もあります。緊張状態が続くことによっても頻尿が起こってしまうのです。ですので排尿記つけるという行為だけで治療が済んでしまうことさえあります。また、ご自分で頻尿であると思っていても排尿記録をつけてみると頻尿では無いと診断されることもあります。患者さんにとっては少しばかり面倒な作業になる排尿日誌を当院では重要視しています。

夜間頻尿に関しましては、睡眠障害が原因の場合もあります。患者さんのライフスタイル等をじっくり聞かせていただくことが治療に役立ちまので仕事内容や家庭内の悩み事など詳細にお尋ねすることがありますので、なぜそこまでプライベートなことを尋ねられるのかと不快にならないでください。

「年だから仕方ない」と頻尿を治療しない方もいらっしゃいますが、夜間頻尿は健康寿命を縮めてしまうとの報告もあります。過活動膀胱は明らかに生活の質を下げてしまう病気ですが、適切な治療で軽快できます。難治性の過活動膀胱の場合は日帰りの治療であるボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法(健康保険の対象です)を当院では積極的に行なっています。

過活動膀胱への主な処方薬

当クリニックでは多数の薬剤をそろえています。おひとりおひとりの症状の程度に合わせて使用していますので、症状が気になったら恥ずかしいと思わず気軽に相談にお越くださいませ。以下に示した過活動膀胱治療薬の一部は既にジェネリックが出ています。作用機序の違う薬を組み合わせて処方することもあります。

ベシケアOD錠
ベシケアOD錠
ベシケアOD錠一錠
製薬会社名アステラス製薬株式会社
主成分ソリフェナシン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として5mg)を1日1回、1日最高服用量は2錠(10mg)服用
副作用口渇、便秘
ベンズフォー錠
ベンズフォー錠
ベンズフォー錠一錠
製薬会社名沢井製薬株式会社
主成分プロピベリン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として20mg)を1日1回服用、効果不十分の場合は1回1錠(20mg)を1日2回まで増量
副作用口渇、便秘
その他頻尿薬バップフォーのジェネリックです
ブラダロン錠
ブラダロン錠
ブラダロン錠1錠
製薬会社名日本新薬株式会社
主成分フラボキサート
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として200mg)を1日3回服用
副作用口渇、便秘
その他古典的な頻尿改善薬です 蓄尿量を増やす働きがあります
ウリトスOD錠
ウリトスOD錠
ウリトスOD錠一錠

作用・効果

製薬会社名杏林製薬株式会社
主成分イミダフェナシン
頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として0.1mg)を1日2回服用
副作用口渇、便秘
その他朝と夜の二回飲む薬で口渇・便秘が比較的少ないと言われています
デトルシトールカプセル
デトルシトールカプセル
デトルシトールカプセル一錠
製薬会社名ファイザー株式会社
主成分トルテロジン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1カプセル(主成分として4mg)を1日1回服用
副作用口渇、便秘
トビエース錠
トビエース錠
トビエース錠一錠
製薬会社名ファイザー株式会社
主成分フェソテロジン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として4mg)を1日1回服用、症状に応じて1回1錠(主成分として8mg)まで増量
副作用口渇、便秘
その他速攻性があるとされている薬です
ネオキシテープ
ネオキシテープ
ネオキシテープ一錠
製薬会社名旭化成ファーマ株式会社
久光製薬株式会社
主成分オキシブチニン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1日1回、1回1枚(主成分として73.5mg)を下腹部、腰部または大腿部のいずれかに貼付
副作用貼り付け部位皮膚炎
ベタニス錠
ベタニス錠
ベタニス錠一錠
製薬会社名アステラス製薬株式会社
主成分ミラベグロン
作用・効果頻尿、切迫性尿失禁の改善
用法・用量成人は1回1錠(主成分として50mg)を1日1回服用
副作用高血圧
その他膀胱の容量を増やす働きがあります
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桑満おさむ医師

このページの文責:桑満おさむ(医師)
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区で五本木クリニックを開院。

患者さん1人ひとりのホームドクターになるという理念のもと、常に敷居が低くどなたでもお気軽に来院できるクリニックを目指し、とくに日帰り検査・手術に力を入れています。技術の向上はもちろんですがより新しい医療機器や治療方法・医学情報の提供につとめています。患者さんとの会話を大切にしています。

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