男性ホルモンの代表である「テストステロン」は女性も分泌しています。
テストステロン(testosterone)は男性の精巣で作られるホルモンであり、男性が男性であるべく性を決めるホルモンであると考えている方も多いようです。
意外に思われるかも知れませんが、テストステロンは女性でも副腎と呼ばれる腎臓の上に位置する臓器でも作られていますし、女性が女性である所以とも考えている方も少なくない卵巣でもわずかながら分泌されています。
テストステロンの「testo」は男性特有の臓器である精巣のラテン語である「testis 」が語源であっても、女性でも分泌しているのです。
テストステロンの構造と機能
テストステロンは化学式だとC19H28O2であらわされる分子量が288.4244のアンドロゲンに分類されるたんぱく同化ステロイドホルモンです。
胎児期にはテストステロンの分泌によって男性の生殖器を発達させ、第二次性徴期には性器を成長させ陰毛や体毛を濃くさせる働きをします。テストステロンの主たる働きは精子を作ることです。
テストステロンは過剰になったり減少したりしすぎないように視床下部と下垂体の働きによってコントロールされています。もしもテストステロンが体内で過剰になってしまった場合は不思議なことなのですが女性ホルモンの一つと思われているエストラジオール(estradiol)などの別のホルモンに変換されます。
テストステロンが多くなり過ぎると
テストステロンは「戦いのホルモン」「闘争のホルモン」とのイメージを持っている方も多いようですが、過剰に分泌されることによって男性が攻撃的になることの根拠は弱いと考えて良いでしょう。
もしもテストステロンが体内で過剰になった場合、ホルモンのネガティブフィードバックというコントロール機能によってそれ以上テストステロンが作れないよう抑制されます。
テストステロンが減少すると男性更年期の原因に
テストステロンがストレスなどによって減少すると男性更年期障害(LOH症候群:加齢男性性腺機能低下症候群)とという病気の原因になります。
イライラしたり、なんとなく体調が悪い、ひょっとして鬱病なのではと感じた場合は男性更年期障害の疑いが強いと判断されます。午前中に血液検査をして遊離テストステロンが基準値以下であることによって確定診断が行えます。
男性更年期と診断された場合はホルモン補充療法が効果的と考えられています。テストステロンは前立腺がんがある場合はがんの餌になると考えられている一方で、進行した前立腺がんの患者さんにテストステロンを補充することで生存期間が長くなったとの報告もあります。
テストステロンを暴力的な闘争のホルモンであると勘違いしている人も少なくはありません。テストステロンが十分であれば余裕が出て第三者にも優しくできるようになるのではないでしょうか?
テストステロンは男性のための「優しさホルモン」とこれからは呼んでみるのも良いかも知れませんね。