PSAが基準値を超えている
前立腺の腫瘍マーカー、がんの疑いを測定するPSAはマスメディアの影響もあって多くの方がご存じになっていると思われます。血液でがんが見つかる、と単純にお考えの方も多いと思われますが、肺がんや胃がん等においては腫瘍マーカーは診断の補助的な役割しか果たしていません。
しかしPSAは非常に鋭敏に前立腺がんを見つけることができます。極端な言い方をすれば医師の触診やCT、エコー、MRIより感度が高く、私たち泌尿器科医が前立腺がんの早期発見をするきっかけになる重要な指標となっています。
あまりにも感度が高すぎるために治療の必要がない前立腺がんさえも見つかってしまうのです。健診・検診でPSAが高値であることは即前立腺がんの存在を示すものではないところに、この腫瘍マーカーの扱いにくい面を生じさせています。
- PSAは高齢者になればなるほど高値を示す傾向がある
- 前立腺肥大とうで前立腺の体積が増えるとPSAは高値を示す傾向がある
- 前立腺の炎症によってPSAは高値を示すことがある
PSAが高い結果が出たことだけで「俺は前立腺がんになっていまった」と判断するのは明らかに間違っています。
がんかがんでは無いかの、簡単な診断
泌尿器の専門家である私たちはPSAが高値を示した患者さんを多く診察させていただいていますが、まずは触診をさせていただきます。肛門から指を挿入させていただき、直腸越しに前立腺の触診をします。前立腺がんの場合、前立腺全体を触診していくと「硬い結節状」の部分が存在した場合は、前立腺がんが存在することを強く疑います。
また、前立腺に圧迫を加えた場合に強烈な痛みを感じた場合は「前立腺炎」になっていることが予想されます。前立腺炎の場合、一時的にPSAを上昇させますので、炎症によってPSAが高値を示した可能性を考えます。さらに前立腺への強い刺激によってもPSAは上昇する傾向がありますので、射精後は高値を示すこともあります。
次に超音波検査器を使用して前立腺の大きさを測定します。画像は縦方向と横方向から撮影して、前立腺の容積を計算によって測定することが出来ます。年齢によって修正しなければいけない点もありますが、ざっくりいって例えば正常の前立腺の容積は20ml以下です。万が一あなたのPSAが4.5だとしても、前立腺の容積が50mlあった場合、前立腺が肥大していることによって、PSAが高値を示している可能性が出てきます。つまり、がんでは無い、という事になります。
また、どんなデータであっても一時的に異常値を示すことがありますので、一定の期間をおいて再度、PSAの採血をする場合もあります。
一般の検査においてはPSAだけしか、腫瘍マーカーは測定しませんが私たちは総PSAと遊離PSAというものを血液検査によって測定して、PSAが果たして前立腺全体から出ているものか、がん細胞から出ているものかを判断します。
PSAが高値であると言われた場合
泌尿器科専門医はPSAを前立腺がんの指標としては、考慮にいれます。しかし、一回きりの検査で「あなたは前立腺がんですよ」なんてことを言うことはありません。
もし、なにかの検査のついでにPSAを測定して、高値であった場合は不安を解消するためにもできるだけ早く泌尿器の専門家を尋ねることをお勧めします。